火垂るの墓(1988)のレビュー・感想・評価
全24件中、21~24件目を表示
普通の人として描かれる 西宮の おばさん
戦災被害の後、清太と節子が厄介になる西宮の おばさんの家で、実は空襲で母親が亡くなっていたと知った おばさんの態度が一変、早速 追い出しモードに入り、容赦なく責める言葉が投げかけられます。
彼女の言葉を額面通りに受け取っては いけません。清太が隣組の役務を負ったからといって、それで満足して納得する話しではないのです。同じ屋根の下に余計なものを背負い込んだ事が疎ましくて我慢ならず、それで文句が浴びせられるのです。 おばさんは東京にいるらしい親戚に、二人を押し付けようとも考えます。
清太は母親の残してくれた千円という大金と、生きていると信じる父親を励みに、妹と二人で生き長らえる決断をします。─ これが糸井重里の、「─ 4歳と14歳で生きようと思った。…」という名コピーに繋がって行きます。
“4歳と14歳”が出て行く段になっても、おばさんは止めもしません。漸く出て行ってくれて清々する気持ちが窺えます。
おばさんが母親の死を節子に告げ口していた事が明らかになっても、清太は自分達の置かれている悲しさに涙するばかりで、恨みがましさを口に出したりはしません。
おばさんは特に極悪人ではなく、余裕のない普通の人として描かれている点が秀逸だと思いました。
戦争への視点が違う作品
この作品は、戦時中を舞台に、兄と妹が戦争を生き抜く姿を描いた作品です
が、私個人の意見としてはこの作品は私が今まで見てきた作品とは何かが違うのです
確かに、戦争の悲惨さ、惨さ、惨めさは十分に伝わってきました
それに監督もこんなことを伝えたかったかわからない…いやむしろ、伝えるつもりはなかったと思いますが…
私が今まで見てきた戦争のドラマや映画には大抵、徴兵令などで家族と涙の別れのシーンや人々の逃げ惑うシーン、お国のためにとほざきながら自爆して行くシーンなどがあり、「戦争は人がいっぱい死ぬんだよ、戦争はこんなにも悲惨だったんだよ!!!」と迫真の描写を入れながら「戦争は絶対ダメだよ!!!」と精一杯語りかけています
然し、この作品にはそんな描写があまり入っていないのです
確かに空襲やお母さんの怪我のシーンなどは入っておりましたが、後半部分は殆ど清太(漢字間違ってたらごめんなさい)と節子2人の自給自足の物語です
節子が死に、清太が節子の死体を焼くシーンもあっさりと終わり、清太のその後は孤独に死んで行くのですが、なぜか感情移入してしまうのです
この物語は戦争の悲惨さを伝えたいのではなく、あえて言うならば「守るものがあると、人は強くなれる」とでも言っているような気がします
決してハッピーエンドではないこの哀れな兄妹に、御冥福をお祈りいたします
勘違い
自分の中では夏が来るとこの作品がテレビで再放送されたり、リメイクされたりして、その都度押し付けがましく、戦争はダメだよ!しちゃいけないんだ!日本はかつて愚かな戦争をしてたんだよー!とテレビ局が圧力をかけてくるのがいやで、子供の時に何となく観た初見から全く観なくなってしまっていたので、もはや完全なネタ映画になってました。節子かわいそう!っとか言って。
でも最近映画を多く観るようになったんで違う視点で見れるかなと思い、見直したんですが、驚愕しました!
世間での評価と映画の内容が全く違う!
なんだ、この清太というどうしようもないアニキは!
何もかも戦争のせいにして、働きもせず、おばさんが助けてくれようとしている時も拒み、挙げ句の果てには部屋で本を読んで笑っているのを怒られて逆恨みしてる!
なんだ、このアニキは!
節子を不幸にしたのは戦争ではない、このアニキだ!
このアニキがしっかりと働き、周りの人と協力して生きて行けば妹も苦労をすることなく生きていけたのに、時代に順応しようともせず、幼い妹を巻き込んだ。
盗みを働くために、敵の爆撃機に、もっとやれー!もっとやれー!と声高に叫ぶところなんざ、鬼畜としか思えん!
これでは名場面と言われたラストの意味合いも変わってしまう。
見直したせいでますます夏が来る度にテレビでの扱いに腹が立つようになってしまった。
意味ないやんけ!
いやいやいや、高畑勲監督作品ということでその表現力には感服しきりだったんでそういう満足度はありました。とくに、節子!あの動きは凄い!実在の子どもよりも子どもっぽい、は言い過ぎ? 宮崎駿御大とのアニメーター争奪バトルもあったと聞きますし、相当なスタッフがいたんだろうと思いますが、監督の手腕なければそれも生きないでしょうし、もうブラボー!!
公開当時に同時上映のとなりのトトロを期待して行った人たちが軒並み火垂るの墓に涙した、という伝説があるように、傑作ではあるのですが、単なる反戦映画のように扱われることには残念です。
今年の夏もまた、腹が立つんだろうなぁ。
戦争の理不尽さを描いた秀作。
スタジオジブリのアニメ作品です。
太平洋戦争の末期。米軍の空襲にあった清太と節子の幼い兄妹は、戦地で父を、空襲で母を失い、親戚の家に身を寄せるのですが、次第に居辛くなって、2人だけで生きていくことにします。
ところが、2人にはあまりにも過酷な運命が待ち受けていました。
この作品は戦争の悲惨さを残酷なまでに淡々と描いています。
清太と節子には他に選択肢が無かったのか?もっと上手く世渡り出来たんじゃないか?と観ている方は思うかも知れません。でも、幼い兄妹は生きることでせいいっぱいだったんだと思います。大人でさえ冷静な判断が出来ない戦争という極限状況の中で幼い子供にそれを強いるのは酷なことです。
彼ら幼い兄妹の気持ちを理解することは、平和の中育った僕らには不可能なのかも知れません。
ただ、僕らは彼らと同じことを画面を通して追体験することで、戦争の理不尽さ・悲惨さを学ぶことはできます。
清太の必死さ。
節子の天真爛漫さや健気さ。
涙なくして観ることは出来ません。名作です。
全24件中、21~24件目を表示