「反戦というより、「孤立は良くない」の印象が強かった」火垂るの墓(1988) くろこさんの映画レビュー(感想・評価)
反戦というより、「孤立は良くない」の印象が強かった
子どもの頃に観て、
母親が空襲で火傷を負い、
包帯をぐるぐる巻きにされた挙句亡くなったり、
死体が山のように積まれてたり、
節子もどんどん弱って死んでしまったり、
最後は清太が妹の死体を焼くシーンで終わったり…
と幼かった自分はしっかり物語を追えてない状態で
次々とショッキングな映像が展開された感じがあり、
怖い映画、
二度と観たくない映画、
という印象がついてしまっていました。
今回のテレビ放送は息子が観たいと言い出したので
30年以上ぶりに一緒に鑑賞。
辛い話が展開されるんだろうな~と
ちょっと身構えながら観ましたが、
今回、しっかり最初から最後まで観てみて
けっこう拍子抜けしたところもあり、
子どもの頃って
ロクに映画観てないもんなんだな~と思いました。
(神戸~西宮あたりが舞台ということすら
認識としてなかった)
清太と節子に悲惨なことが
どんどん降りかかって
追い詰められる印象だったのですが、
プライドが邪魔をしたのか、
清太が頑なに頭を下げたり
ヘルプを出せなかったから、
悲惨な結末になってしまったんじゃないか…?
と思ってしまいました。
(父親が軍人でそこそこ高い階級っぽかったし、
家もちょっと裕福そうな感じだったので、
そのあたりも影響してるのかな~と思ったり…)
西宮のおばさんは「あんな言い方しなくても!」
とよく槍玉にあげられがちですが、
食うや食わずの時代に
身寄りのない子ども2人を家にあげて
世話してあげてる時点で
「なんとかしてあげたい」という
気持ちはある人なんだろうな~と感じました。
節子に勝手に母の死を伝えやがって!
みたいにも言われたりしますが、
遅かれ早かれ知ることです。
むしろ清太が節子に
母のことについてごまかすシーンを観て
ウソつくのもどうなん?
黙っててもいつかバレるで。
と思ってました…
戦争で家がなくなる、
母が空襲で亡くなる、
父は軍人としてどこで何してるか分からない、
ロクに食べるものがない、
という状態で
ヤケになる気持ちも分からなくはないですが、
火事場泥棒のようなことをしてまで
節子を守ろうという気持ちがあるなら
もうちょっと他の守り方があったんじゃないか…?
とちょっとモヤモヤ…
不安・恐怖や貧しさは心の余裕をなくさせ、
視野を狭め、浅はかな行動をとらせるのかもしれない。
いつの時代でも孤立するって良くないな。
たいへんな時ほど「いかに人と協力できるか」なのかも。
衣食住が満たされてて、
人間らしい生活ができてることって幸せなことだな、
というのが
今回、改めて観て抱いた感想でした。