「高畑勲がんばりすぎだよォ。」平成狸合戦ぽんぽこ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
高畑勲がんばりすぎだよォ。
多摩ニュータウンの開発により住処を追われたタヌキたちが、山野を取り戻すべく人間へ戦いを挑むファンタジー・アニメ。
監督/原作/脚本は『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』の、アニメ界の巨匠・高畑勲。
企画は『となりのトトロ』『魔女の宅急便』の、アニメ界の生きる伝説・宮崎駿。
主人公である正吉の妻、おキヨの声を演じるのは『3-4x10月』の石田ゆり子。
「俺が豚をやったんだから、高畑さんにはタヌキでやってもらおう!」という宮崎駿のノリで始まった企画。
嫌々ながらも承諾した高畑勲は、山野を切り拓いて作り上げた新興住宅地「多摩ニュータウン」に目をつけ、人間と自然の対立と共存をテーマに作品を作った。
子供の頃に観てガッカリしたジブリ作品のNo.1が本作だった😅
間抜けそうな見た目のタヌキ達が出てくるから、てっきり楽しいアニメかと思って見てみると、なんか重いし暗いし難しいしで、「うーむ…。」と子供ながらに唸ったものである。
改めて見直しても、正直感想は変わらず。
自然と人間の関わりは、高畑勲が一貫して描いているテーマではあるが、本作はイデオロギーが前に出過ぎていて説教くさい。
プロデューサーの鈴木敏夫曰く、公開日に間に合いそうになかったため、終盤の絵コンテを10分程カットしたのだそう。その結果、「自然は大事だ」というありきたりなテーマだと受け取られてしまう作品になってしまった、と語っていた。
鈴木さん的にも、ちょっと失敗したな、と思っているようです。
タヌキと人間の対立は、そのままの意味で捉えることも出来るし、若き日の高畑・宮崎が奮闘した労働争議のメタファーと捉えることも出来る。
タヌキ=共産主義、人間=資本主義という見方も出来るだろうし、タヌキが置かれている状況を、虐げられているアニメ業界人に置き換えることも出来るだろう。
色々な見方が出来る二重・三重の構造になっているが、だからといって説教くささがなくなる訳ではない。
敬愛する妖怪漫画家・水木しげる先生らしき人がコメンテーターとして出演していると思ったら、ちゃっかりクレジットに名前があった。流石妖怪研究の第一人者👏
クライマックスの展開だけは結構好き。
タヌキ達が昔と変わらずどんちゃん騒ぎをしているが、カメラが引いていくとそこがゴルフ場のど真ん中だとわかる。
このなんともやるせないエンディング…。とはいえ、そのやるせなさの中に、人間界でも逞しく生きる野生動物たちのしぶとさが描かれているようで、なんとも不思議な感覚に襲われる。
アニメーションのクオリティは決して低くないが、『紅の豚』や『もののけ姫』などの公開時期が近いジブリ作品と比べるとかなり劣っている気がする。
宮崎駿監督作品ではない『耳をすませば』と比べてもなーんか微妙…😣
観ていて息が詰まるような堅苦しい真面目なアニメ。
もっと肩の力を抜いた、気楽で楽しいアニメでも良かったのに、と思うがそれでは高畑勲が作る意味がないか…。
多分日本アニメ史上最もキンタマが描写された作品。
タヌキのキンタマが見たい人にはオススメ🟡
※
製作費:12億〜13億円くらい?
興行収入:45億円。
=ヒット。