「ドジャースのラソーダ監督(当時)なんか、真っ先に狙われますね。」ブルークリスマス TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
ドジャースのラソーダ監督(当時)なんか、真っ先に狙われますね。
SF映画ブームのさなかに特撮の本家・東宝が特撮抜きで製作した異色のSF映画。
監督は岡本喜八。喜八一家だけでなく豪華な出演陣が召集されていることからも、本作に賭けた東宝の意気込みが感じ取れる。
ストーリーは倉本聰大先生による単独オリジナルシナリオ。
プロットを単純化して説明すれば、何度もリメイクされた『ボディスナッチャー/恐怖の街』(1956)を逆の視点から捉えた内容。
反人種差別のテーマ性には共感出来るので途中までは好意的に観ていたが、最後までありきたりな展開に幻滅を禁じ得ない。
講演で突飛な主張をして狂人扱いされる科学者、ロボトミー手術や異分子の排除、権力の陰謀…と既知感のある話が散りばめられてはいるが、まとまりに乏しい。
世界各地に突如飛来したUFOからの光線を浴びた人間の血液が青くなるという設定が物語の大前提だが、UFOの目的について議論、推測される場面は一切ない。
そのため、本来は被害者ないしは被災者であるはずの青い血の人たちを危険視して一斉排除しようとする展開が強引というより無理矢理過ぎる印象。
公開当時、血の青い人間を即物的に排除する政府の動機が説明不足という批判が多かったそうだが、理解出来る評価。
物語は兵藤博士の失踪の理由を追うTV局の南と、国防庁参謀本部の沖の二人を軸に展開する。
渡米して秘密機関や兵藤の足取りを調べる南の描写が丹念なのと対称的に、沖が謀略に関わる場面が断片的なため、終盤、彼を中心にストーリーが進展することが唐突な感じ。
名優仲代達矢が南に扮したのに対し、沖役を当時若手の勝野洋が演じているのでギャップが余計に際立つ。
重要な要素であるはずの人気バンド「ヒューマノイド」の描き込みも不足気味。
映画化に当たっての倉本の条件がシナリオの改変不可。
自信過剰というより、メッセージ性さえあればいいという思い上がりがあったのでは?!
スタンダードサイズの画面も相まって、TVドラマでもよかったのではというのが率直な感想。
BS松竹東急にて視聴。