「名作!その後のコロナ禍を暗示させる本作の評価はもっともっと高まっても良いですね。」ブルークリスマス 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
名作!その後のコロナ禍を暗示させる本作の評価はもっともっと高まっても良いですね。
新文芸坐さんにて『映画監督・岡本喜八 生誕100周年記念プロジェクト in 新文芸坐 vol.4/後期岡本喜八+α』(2024年12月2日~22日)と題した特集上映にて映画監督・評論家の樋口尚文氏のトーク付き特別上映で『ブルークリスマス』(1978)を鑑賞。
『ブルークリスマス』(1978)
倉本聰氏のオリジナルシナリオを岡本喜八監督の演出で映画化した実に豪華な作品。
発光したUFOを目撃した世界の人々が、ヘモグロビンに異常をきたし血中の鉄が銅に変化することで血液が赤からイカのように青に変化する怪事件が発生。
各国政府は青い血の人々を秘密裏に患者として隔離、隠滅。
メディアコントロールをしながら青い血に対する恐怖を煽り、クリスマスイヴの日、敢えて血液検査で見逃した青い血の人々を粛清することで民衆を制御するというストーリー。
公開当時(1978)は『未知との遭遇』(1977)『スター・ウォーズ』(1977)のSF超大作が日本で公開され、大掛かりな特殊撮影を期待した観客が多かったそうですが、まだSFの定義もあいまいな時代で、今観るとSFというよりも悲劇的な運命をたどる男女のメロドラマを軸にした良質なポリティカルサスペンス・スリラーのカテゴリーがマッチしますね。
(実際の企画は上記SF大作が公開されるずっと前の1976年らしいですね)
作品のベースには得体の知れないものに対する人間の無意識の偏見からの区別からの差別、そして迫害、最終的な抹殺が描かれており、その後のコロナ禍を暗示させる本作の評価は年々高まっていますね。UFOに搭乗する異星人も血液の色を変えるだけで人間同士が争うことを想定していたのでしょうか。
二人の青い鮮血と赤い鮮血が真っ白い雪のなかで交わるラストはビジュアル面でも映えて美しくもあり、哀しい名シーンですね。
作品としても岡本監督の職人技が光るとにかくテンポの良いカット割り、切り返しは全く緩慢さなくお見事。
キャストも勝野洋氏、竹下景子氏のフレッシュな演技も見どころですが、喜八組の常連、仲代達矢氏、高橋悦史氏、天本英世氏、岸田森氏、草野大悟氏の味のある演技、ベテラン勢の小沢栄太郎氏、大滝秀治氏、永井智雄氏、島田正吾氏は巨大な陰謀がうごめく設定に説得力を持たせてくれますね。
音楽面も秀逸。
劇中では人気ロックバンド「ヒューマノイド」が歌う「ブルークリスマス」(作詞 - 阿久悠氏、作曲 - 佐藤勝氏)ですが、実際はChar氏が歌唱する名曲。作品自体の評価も高まるなか、ぜひクリスマスのスタンダードナンバーになって欲しいものですね。
上映後の映画監督・評論家の樋口尚文氏のトークも貴重な話と資料が満載で大満足な1日でした。