ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR

劇場公開日:

解説

「十九歳の地図」「さらば愛しき大地」などで知られる柳町光男監督が1976年に手がけた長編デビュー作で、当時勢力を拡大しつつあった暴走族「ブラックエンペラー」の新宿支部に所属する若者たちの日常を記録したドキュメンタリー。暴走行為や交通機動隊との舌戦、集会、たまり場、家族や仲間たちと過ごす様子など、バイクと暴走に明け暮れる彼らの青春を優しいまなざしで描き出す。

1976年製作/91分/日本
配給:東映
劇場公開日:1976年7月1日

スタッフ・キャスト

監督
脚本
柳町光男
撮影
榊原勝己
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映画レビュー

3.0ヒューマンで鈍足な俺たち

2023年1月8日
iPhoneアプリから投稿

新宿に高層ビル群が建設され始めたのは70年代前半のことで、それまでは足立や練馬同様の取るに足らない郊外だったという。本作が撮られたのはたぶんちょうどその過渡期で、遠巻きに映し出される新宿の街にはポツポツと高層ビルが建ち始めている。しかし基本的には平家が街を席巻していて、暴走族たちが駆け抜ける道路も『AKIRA』よろしく摩天楼のあわいというよりは地方都市の国道といった趣がある。モノクロゆえ具体的な場所は不明瞭だが、おそらく現在の西新宿から甲州街道あたりだろうか?いや、あるいは市ヶ谷あたりかも。新宿区って意外と広いな…

「ブラック・エンペラー」などという大層な看板を掲げる若者たちだが、やっていることはかなりせせっこましい。警察と口頭で小競りあったり道端で集会を開いたり後輩を虐めたり、なんだか落ち目の学生左翼団体でも眺めているようで歯痒かった。特に終盤のゴム青年がネチネチと先輩にケチをつけられ萎縮しているシーンは見ていられない。自由を求めて社会から逸脱したはずの彼らが辿り着いたのはまた別の社会だったという寓話のような悲劇。

ある暴走族隊員の家族が息子の逮捕についてインタビューを受けるシーンがあるが、意外と息子に同情的だったのには驚いた。あまつさえ「ただの点数稼ぎなんじゃないか」と警察への憤りをみせるほどだ。自分のやることなすこと全てにケチをつける毒親のもとでならまだしも、こうして常に自分の側に立ってくれるような親のもとでさえグレてしまうあたり、青年たちは何か理由があるからグレるんではなくて、グレることそれ自体に価値を見出していたんだろうと思う。

ただまあそんなイデオロギーも方向性もないような集団が集団たり得るはずもなく、集会のシーンや喫茶店でクダを巻くシーンなんかは彼らの精神的不統一ぶりが見事に露呈していた。誰も話を聞かない、楽しいことだけやってあとは参加しない、やることがないから後輩をいびる、いびられるほうも終始ヘラヘラしている。「ちゃんとやる」「先輩を立てる」といった美辞麗句ばかりが無意味に消費されていく。これが神の速度とはお笑いだ。柳町光男がどういう距離感で彼らと接していたのか気になる。

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因果

4.5まだ発展途上な不良達

2021年12月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

興奮

まだ特攻服もない、改造されたいわゆる族車使用のバイクや車すら見当たらない、ツーリングクラブなんて可愛く例えてみたり。

本作の中に暴力を醸す危険な雰囲気よりも飾らない当時の若者たちの日常を淡々と描きながら無邪気で純粋な想いや姿が印象的でもあり、単に一般社会から外れ自分たちのルールで社会性を身につけながらそこにあるのは暴力や違法行為を真っ当に繰り広げる日々。

カメラを意識しながらも素の彼等やチームの内部を垣間見れるリアルな若者増を描けていると思うし、それぞれのキャラが逸品でもあり特に"ゴム"のお調子者で愛嬌のある顔が笑いを誘いながら、流れの中で唐突に起きる暴力と上下関係からなる支配欲に怖さを感じる。

何者でもない無力でもありまだ青臭い若者たちが日本のカルチャーでもある暴走族を作り上げ、いまだにその界隈では語り継がれながらも何者かにはなっている様が力強く、やはり70年代の素晴らしさ、音楽も単車や車と旧車が最高に格好良い、一般車両やパトカーにタクシーですらも。

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万年 東一

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