劇場公開日 1980年6月28日

「予言などと軽々しく口にすべきではないと思う」復活の日 TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 予言などと軽々しく口にすべきではないと思う

2025年11月24日
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単純

 SF小説の巨匠・小松左京の原作を映画化した作品。

公開時、国内の配給収入が24億円の大ヒットながら、一説には宣伝費も含めると30億を越える経費を回収できず赤字に終わったとか。大作を連発して飛ぶ鳥の勢いだった角川映画はこれ以降、アイドル路線に舵を切ることに。

 日本・海外(主にアメリカ)ともに出演陣の多くがTV俳優なうえ、映像の大半が密室劇なのに、どこにそんな大金使ったんだと言いたくなるが、当時話題になった南極を含む海外ロケが経費を増大させたそう。
 一部の資料によればロケハンだけで九千万円以上かけたらしいが、現地のガイドやコーディネーターにぼられたんではという気も。

 角川がそれだけ大盤振る舞いした背景には、海外での興収(特に北米)を当て込んでいたからなのだろうが、肝心のアメリカでは興収どころか上映館の確保すら覚束なかったとか。

 アメリカでの成功を成し遂げるには、多少原作と乖離してでも監督と主役はアメリカ人に任せるべきだったし、少なくともハーフで欧米受けしそうな顔立ちの草刈正雄のヒゲは剃らせるべきだったと思う。

 オリビア・ハッセーの起用は謎だが、ベテラン西部劇俳優のグレン・フォード(大統領)とオスカー俳優のジョージ・ケネディ(提督)が、少ない出番ながらも落ち着いた演技で作品を引き締めてくれている。

 深作欣二が監督だけに、則子(多岐川裕美)が陣痛に苦しみのたうち回る場面がまるでチャカでやられたヤクザ。
 ほかに監督いなかったんだろうか。

 新型コロナウイルスの流行期に本作や原作小説が注目されたことは記憶に新しいが、原作者の小松左京は阪神・淡路大震災の際も地元に大きな被害が出て心を痛めていたなか、『日本沈没』に高速道路が倒壊する場面があったせいで予言者のように扱う取材に忙殺され、精神を病んでしまう。

 彼がコロナ禍まで健在でなかったことはむしろ幸いだったかも知れない。

TRINITY:The Righthanded Devil
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