「1980年の作品で40年後の私から見たら驚愕の内容になっております...」復活の日 和音さんの映画レビュー(感想・評価)
1980年の作品で40年後の私から見たら驚愕の内容になっております...
1980年の作品で40年後の私から見たら驚愕の内容になっております。
というのも、現実でも新型コロナウィルスの脅威に世界中がさらされており、先見性が凄いよねって話。
原作は同名の小説『復活の日』で著者は小松左京。
この作品の前には日本沈没において、日本が世界からどういう目で見られるのかを描いているのですが、こっちでは細菌兵器にもたらされた危機に対して世界はどういった動きをするのかを描いたものになっています。
何がスゴイって、どちらも今の邦画にはないスケール感なんですよね。
設定された時代は当時の少し先の未来。1982年米ソ冷戦の真っただ中であります。この時代は言わずもがな核兵器により、何とか均衡が保たれ一触即発で第3次世界大戦に突入するか、それでなくても代理戦争でアフガニスタンなどが戦場になっていた時代。
南極という中立地帯において世界の危機というか人類の危機から免れていた人類がそれぞれの国の歴史や文化、宗教による対立を乗り越え(見てみぬふり)ようとする。
そんな中起こる核ミサイルの発射問題。冷戦時代でこれを書かないはむしろ不自然ですね。
逆説的にこれが細菌兵器を破壊する手段になったというのも皮肉が利いていて面白い。
スケール感と書きましたが、それぞれの国や立場によって登場人物の思考が描かれている点がさすが小松左京さんなのだろうと思います。
女性の立場がどうなるかもしっかりと描かれている点は今でこそジェンダーギャップがどうのという時代ですが、この時代であってもそこに目を向けているのはさすがですね。
また、某国の映画の様に自国の素晴らしさだけを語るような映画にならなかったのは、日本独特の良く言えば謙虚さによって俯瞰した形で描く事ができたからのように思えます。
SFを書く人はこれが優れていますね。ポリティカルフィクションとして描かれているので、ここはとても重要な点だと思います。
スゴイ点を挙げてみましたが、もう少しな点も少々。。。
まず、上映時間が長い。これは脚本をもう少し改良すればよいのかも知れませんし、邦画っぽい間の作りがどうしてもこの問題を助長している。また、お金かけて臨んだ超大作だ!という自負心から多少長くても観ろ!っていう制作者側の傲慢も感じなくはありません。
とはいえ、制作している側の気持ちとしては、これだけ長大なフィルム使わないのはもったいないと思ってしまうものなのかもしれませんね。でもマチュピチュは…今だと世界遺産として有名なので、旅行先として違和感満載ですが、当時はまだ世界遺産になっていないので、あまり認知されていなかった? であれば、主人公が放浪しているっていう描写としてはありですが、すでに多くの人が知っていて、え?あそこに行ったの?ってなってしまうのは良くないですよね。当時がどうだったのか分からないので何とも言えませんが…。
最後のエンディングだけはご都合主義すぎるけれど、商業映画だもの、最後はあれでも良いんじゃないでしょうかね。
大事なのはそこではないので、ここに文句を言うのは見せたいものを観れていないように感じてしまいますね。分かりやすく都合が良いですからね(笑)
個人的には全然長く感じることなく、最後まで集中して観れたので、問題はなかったのですが、長時間が苦手な方は辛いかもしれません。途中休憩してみられるのも劇場で観ない場合のメリットなので苦手でも観てみて欲しいとは思います。
話のスケール感、それに説得力を持たせるポジショントークのリアリティ。ハリウッドばりの出演者達(邦画とは思えんかった)南極でのリアリティ。それをしっかり映像にした撮影。
SEは日本ぽかったけれど(笑)
所謂今だからこそ見直したい映画であると同時に、それを抜きにしても優れた作品であることに間違いはないでしょう。
SFが好きでまだ見ていない方にはとってもおススメの映画でした。
では、よしなに~。