「タイトルが秀逸、キャスティングが神、以上で勝ち確。」復讐するは我にあり Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルが秀逸、キャスティングが神、以上で勝ち確。
1979年公開、配給・松竹。
【監督】:今村昌平
【脚本】:馬場当、池端俊策
【原作】:佐木隆三〜『復讐するは我にあり』
主な配役
【榎津巌(えのきづ いわお)】:緒形拳
【榎津鎮雄】:三國連太郎
【榎津かよ】:ミヤコ蝶々
【榎津加津子】:倍賞美津子
【浅野ハル】:小川真由美
【浅野ひさ乃】:清川虹子
ほかに、殿山泰司、菅井きん、火野正平、根岸季衣、河原崎長一郎、フランキー堺など。
※佐木隆三本人、石堂淑郎も出演している!
1.実話を下敷きに佐木隆三が執筆
「西口彰事件」をベースにして、佐木隆三が長編小説として仕上げ、直木賞を受賞した。
映画化に際しては、複数の映画人が手をあげていたが、業界に不慣れな佐木隆三の曖昧な対応もあり、かなりのトラブルになっている。
結果として、一番最後に佐木隆三にアプローチした今村昌平が権利を獲得した。
2.大ヒットしたが寅さんには敵わない
興行収入6億円の大ヒットだが、松竹においては、盆と正月の『男はつらいよ』2作に続く3位だ。
寅さんの人気ぶりが改めて分かろうというものだ。
3.タイトルが素晴らしい
佐木隆三の原作タイトルが秀逸。
新約聖書(ローマの信徒への手紙・第12章第19節)から取ったという。
「我にあり」の我は、神を示すものらしいが、本作のタイトルとしては、多様な解釈が可能。
4.キャスティングが素晴らしい上に熱い演出。
実力派をズラリと揃え、しかも、
その俳優陣がまさに「体当たり」の演技を見せた。
これは、監督としての力量や信用が大きいのだろう。
ちなみに公開当時の年齢。
◆緒形拳 41歳
◆三國連太郎 56歳
◆ミヤコ蝶々 58歳
◆倍賞美津子 32歳
◆小川真由美 39歳
◆清川虹子 66歳
◆根岸季衣 25歳
◆北村和夫 52歳
◆火野正平 29歳
◆佐木隆三 42歳
◆今村昌平 52歳
5.まとめ
何度も観たが、最初は実話ベースと知らずに見ていた。
知らず知らずのうちに、緒形拳演じる榎津巌に肩入れしている自分に驚いたものだ。
困った立場にある者や、自分より弱い者を狙い、
ときに騙し、ときに暴力で金銭を奪う。
本質は「卑怯な極悪人」にすぎないが、
・父親や妻などとの人間関係、
・神の存在(たびたび歌われる「島歌」含めて)、
それらが「見えざる手」のように、
榎津巌を犯罪に走らせるのか?などと深読みを試みたりする。
しかし、何度観ても何も分からない。
榎津巌の遺骨を投げるシーン、
何度も空中で静止させる。
なにを暗示しているか、私には分からない。
結論、
昭和が生んだ極上のクライムムービー。
☆4.5