「人間は高尚な生き物ではない」復讐するは我にあり ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
人間は高尚な生き物ではない
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昭和38年の社会の空気感が、現代社会みたいにクリーンで無菌ではなかったのが印象的でした。
当時は、現代よりも凶悪犯罪率が高い時代だったので、巌みたいに倫理観が無茶苦茶な人間も多かったと想像します。そして、現代よりも家父長制度が強かったので、巌の父親の鎮雄と嫁の加津子の様な関係、あるいはそれ以上(舅の子供を身籠るとか)も割とあったのでは?と思いました。性暴力やハラスメントという概念が無い時代に、誰もがとは言いませんが、鎮雄が嫁を町の男に斡旋する様な倫理観なのは想像ができます。
そもそも昭和38年の社会は、あの地獄の第二次世界大戦・太平洋戦争を生き抜いた人達で形成されていたので、神も仏も無いというのが多くの人達の本音だと思います。
しかも、戦後も戦争の後遺症で日本人は多少狂っていたのかもしれません。私の祖父は軍隊に行ってから暴力的になったみたいですし、巌の凶行は暴力を正当化していた戦争の結果(象徴)なんだろうと感じました。私は巌という凶悪犯よりも、戦争の傷跡が強く残っていた社会が興味深くて、そこにフォーカスして鑑賞してしまいました。
神を信じても全く救われません。あの戦争で多くの日本人が死にました。皮肉にもタイトルは聖書を引用しており敬虔なクリスチャンも登場します。
人間は本来高尚な生き物ではなく野蛮で弱い生き物。そんなことを思わされました。
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