富嶽秘帖
劇場公開日:1959年9月2日
解説
陣出達朗の原作を、「執念の蛇」の土屋欣三が脚色し、新人第一回の工藤栄一が監督した山岳スペクタクル。「怪談一つ目地蔵」の杉田正二が撮影した。
1959年製作/日本
劇場公開日:1959年9月2日
ストーリー
◇第一部--江戸城中での観菊の夜、榊原家の息女亜矢姫は将軍綱吉の目にとまった。これを知った時の老中田沼意正は、自分の権勢を広めんため亜矢姫をお側奉公に上げるよう榊原家に迫った。しかし清廉剛直の榊原忠常はこれを断った。そこで意正は二万両も費用のかかる久能山東照宮修築の儀が忠常に下りるよう暗躍した。榊原家はこの修築費用調達に狂奔していた。折も折、忠常の奥方お遊の方が、黒覆面の一団に襲われ非業の死を遂げた。お遊のお方はその昔富士教を世に伝え、断食往生をとげた角行上人の残した“富士の白王”と八十貫の黄金の鍵を握る上人の一粒種であったのだ。しかし財宝の鍵を握る古文書は覆面の一団に奪い去られていた。忠常の忠臣来間又四郎は謎の新興宗教青屯教がこの事件に関係ありとにらみ、信者にまぎれ込んだ。だが教祖天堂勘兵衛に正体を見破られて大川に落されて、これを救ったのが巾着切りの才蔵で、又四郎は才蔵の口から古文書が謎の浪人炎嶽十郎が持っていることを知った。ここに又四郎と獄十郎との対決が訪れた。だが嶽十郎はあっさり古文書を投げ出して消えた。古文書から亜矢姫、又四郎、才蔵達が角行上人ゆかりの地富士へ急いだ。一行は種々の苦難の末、雷岩の祠にかくされた古壷の中から大飛出と称する能面を採り出した。財宝の最後の鍵は、能面の裏の朱塗りの下にかくされているのだ。だがこの財宝を狙って一行の後をつけていた勘兵衛達が襲いかかった。霊峰富士を朱に染めて又四郎の奮闘が続いたが、能面と亜矢姫は激流渦巻くはるか谷底へと、弧をえがき落ちていった。◇第二部--激流に流された能面は、富士根の里に住む長老半右衛門の娘お雪に拾われた。しかし能面はお雪の弟三吉のいたずらに真二つに割れてしまった。だが勘兵衛の配下飛猿道人らにお雪と能面は一味の本拠地御嶽神社に拉致された。このお雪を救ったのが亜矢姫を求める又四郎だった。又四郎はお雪の案内で亜矢姫とめぐり合う。勘兵衛一味はさらに田沼意正の腹臣影山左門達十数人の応援を得て、山祭りを利用して亜矢姫を連れ去った。勘兵衛一味は、亜矢姫と引換に能面を要求してきた。又四郎は単身指定場所に向った。多勢に囲まれた時謎の浪人嶽十郎が忽然と現われてその危急を救った。その後左半分の能面を求めてお雪と才蔵は勘兵衛一味の本拠地へ忍び込んだ。だが東照宮修築で事は後五日と迫り、亜矢姫は榊原八千石を救うため将軍家へ奉公に上ることを秘かに決意して山を下った。富士根の星の異端者源太は半右衛門の屋敷に忍び込み、右半分の能面を盗もうとして失敗、半右衛門を殺害してしまった。そしてその罪を又四郎に被せた。激怒した村人達のために、又四郎は無罪を叫びながら竪坑の底へと落ち込んでいった。一方お雪と才蔵は苦心の末に半々の能面を見つけ出したが勘兵衛一味のために才蔵は斬り倒された。お雪は能面を持って逃げた。里に帰って来たお雪は父半右衛門が又四郎に斬り殺されたと聞いてその能面を勘兵衛に渡してしまった。源太とお雪の能面から宝のあり場所は富士根の里の洞窟と判明した。そこで勘兵衛は秘密を知り過ぎている源太を斬り殺す。余りのことに源太は自分が半右衛門殺しの下手人であることをお雪に告げて絶命した。お雪は自分の軽率を悔い竪坑から又四郎を救い出した。又四郎は洞窟に急いだ。又四郎と勘兵衛一味の激闘が続く。またしても嶽十郎が現われ、二人の働きによって悪人達はことごとく倒された。謎の浪人嶽十郎は大目付と名乗った。田沼意正は閉門蟄居を命ぜられた。ある晴れた日東照宮修築工事総奉行として出立する又四郎を、亜矢姫はにこやかに見送っていた。