劇場公開日 1978年8月12日

「決して黒歴史の映画ではないと思います」火の鳥(1978) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0決して黒歴史の映画ではないと思います

2022年9月6日
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鑑賞方法:VOD

巨匠、市川崑監督の1978年の作品
原作はいわずとしれた手塚治虫のライフワーク
彼の最高傑作だといういう人もいます

原作漫画は、1954年から1988年の34年に渡って様々な雑誌に断続的に連載さたものです

単行本としては角川文庫だと全13巻あります

1巻 黎明編
2巻 未来編
3巻 ヤマト・異形編
4巻 鳳凰編
5巻 復活・羽衣編
6巻 望郷編
7巻 乱世編(上)
8巻 乱世編(下)
9巻 宇宙・生命編
10巻 太陽編(上)
11巻 太陽編(中)
12巻 太陽編(下)
13巻 ギリシャ・ローマ編

未完のまま手塚治虫は1989年にお亡くなりになってしまいました

本作はその中の黎明編を実写で映画化されたものです

当初の構想は、本作に続いてアニメで宇宙編を制作するという計画だったそうです
その計画は一度頓挫するものの、1980年に「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」として完成しています
但しこれは原作漫画の映像化ではなく、手塚治虫自身が新しくこの作品の為に作った物語です

本作は、市川崑のキャリアの中では、黒歴史扱いされているようです
評価はとても低いものがあります

しかし思い出してみて下さい
市川崑監督のキャリアの振り出しはアニメーター助手であったことを

本作には、手塚治虫の原作へのリスペクトが溢れています
できるだけ原作漫画を実写で忠実に再現したいとの熱意が感じられます
大きく腫れ上がる鼻などはそうです

しかしアニメとの融合シーンや生煮えのギャグシーンは確かに完成度が低いものです
もっと時間が監督に与えられていたならまた違ったことになったと思います

市川崑監督はこの頃、1975年の「犬神家の一族」の大ヒットで横溝正史の金田一耕助シリーズの大作映画を連続して何本も撮っていたのです

本作は1978年8月12日の公開
1977年の8月27日公開の「獄門島」と、1978年2月11日の「女王蜂」に続いて制作されたのです
そして、次の「病院坂の首縊りの家」は1979年5月26日公開だったのです

こんなスケジュールでは、まともな映画なんて撮れるわけありません
まして本作のようなスケールの大きい作品なのですから

市川崑監督自身、後年に見返して残念な出来の作品に思われたのも当然だと思います

それでも、驚くようような迫力ある映像や、ハッとするようやカメラの構図も多々見られます
美術や衣装も良く練られ、経費もかけたものが多くありチープさはありません

手塚治虫という世界的に傑出した才能の作った普遍性のある物語です
21世紀になっても微塵も古臭さもなく、その卓越した内容は却って価値を高めて来ているほどです

ハリウッドがコンテンツアイデアの枯渇に苦しんでいるのなら、「火の鳥」こそハリウッドが取り組むべきものだと思います
遥かなスケール観、スペクタクルな展開、貫く格調高いヒューマニズム
ハリウッドにこそピッタリのコンテンツだと思います

本作はその為のショーケースになりうるものだと思います

市川崑監督は時間の無い中でも、本作に取り組んだのは、原作を全巻を映像化するための先鞭をつけたかったに違いありません

自分は最初の1作しか撮ることができずとも、あとはアニメになろうとも、それはいい
このような世界に誇るコンテンツが日本にはあると言うことを、少しは国際的に知られるように名前が売れた自分が撮ることで世界に知らしめたい

せめて日本の中だけでもアニメで全巻映像化がなされるように仕向けたい

そういう願いであったのだと思います

劇場版「宇宙戦艦ヤマト」が公開されて空前のアニメブームが巻き起こるのは、本作のちょうど1年前の1977年8月のことでした
そして日本のアニメはこの頃から全世界的に人気を博していったのです

「火の鳥」はなんとしても全巻映像化されなければならないと思います

それが本作を貫くテーマであり、市川崑監督からのメッセージなのだと思います

決して黒歴史の映画ではないと思います

この市川崑監督からのバトンを21世紀の私たちは受け取らねばならないと思います

是非映画関係者の皆様、アニメ関係者の皆様、何卒ご検討のほどお願いいたします

あき240
iwaozさんのコメント
2022年10月1日

「火の鳥」全編映像化!!
素晴らしい提案、大賛成です。
(^。^)
クラウドファンディング等で是非、実現を願います。
m(_ _)m
これは日本人に課せられた使命ですよね!

iwaoz