美徳のよろめきのレビュー・感想・評価
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脚本はあまり良くないが、中平康監督らしい映像ショットには魅力を感じた
中平康監督による1957年製作(96分)の日本映画。原題:Fresh is Weak
配給:日活。劇場公開日:1957年10月29日
出だしの月岡夢路の映像ショットの美しさと新鮮さに、ドキットさせられた。その他にも、奥に見えるダブルベッド、裸体のシルエット、投げ捨てられたネクタイ等、何とも魅力的な映像で、中平康監督って凄いと思わされた。また、黛敏郎による音楽も斬新な感じで,かなり良かった。
三島由紀夫の原作は未読だが、お泊まりデートに出掛けており、際どいがあくまで浮気相手(葉山良二)とはプラトニックな関係で、浮気相手の妊娠をしてしまい堕胎するらしい原作とは大きく異なる様。
脚色は新藤兼人だが、原作を大きく変えたのは、主演女優側からの出演条件だったのだろうか?「よろめき」という言葉には合致しているが、息子も存在する家庭を重視して、あっさりと浮気相手と別れる物語展開は底が浅く、つまらなさを感じてしまった。更に、浮気旅行から帰ってきた夜に夫との間でできた子供を月丘は堕胎するが、その心理を示す描写もなく、納得感や共感も得られなかった。後に名脚本を多く産む新藤だが、かなりいただけない脚本と判断せざるを得ず。
堕胎を行う愛想無い医師が北林谷栄、月丘の心情を言い当てる盲目のマッサージ師が西村晃。何処までもお上品な月丘夢路の神経を逆撫でるガサツで無神経な夫役が三國連太郎で、その様に演じているのだが、ワイルドな魅了が滲み出てしまい、ヒロインの浮気心に説得力を与えないのも難点か。
監督中平康、脚色新藤兼人、原作三島由紀夫、製作大塚和、撮影岩佐一泉、美術松山崇、音楽黛敏郎、録音神谷正和、照明藤林甲、編集辻井正則。
出演
月丘夢路倉越節子、三國連太郎倉越一郎、青砥方比呂倉越菊夫、葉山良二土屋、宮城千賀子牧田与志子、信欣三牧田、安部徹飯田、高友子とみ、千田是也藤井景安、汐見洋伯父、
相馬幸子伯母、伊藤寿章叔父、原恵子叔母、堀恭子紀子、堀川京子元子、立花泰子祖母、
芦田伸介土屋省三、渡辺美佐子マダム秋子、高田敏江幼稚園の先生、南田洋子女優のような女、西村晃指圧師、北林谷栄女医、竹内洋子看護婦、二谷英明ボーイA、須藤孝ボーイB、
林茂朗ボーイC、草薙幸二郎洗濯屋の小僧、高橋昌也ナレーター。
気品ある女性の不倫とその結末
三島由紀夫のベストセラー小説を新藤兼人が脚色。名門の家に生まれ、経済的に恵まれた結婚をした倉越節子(月丘夢路)は、避暑地で出会った青年と愛し合うようになる。プラトニックな関係にとどめようと思いながらも、許されぬ恋にのめり込んでいく節子の心理を描く。
(広島市映像文化ライブラリーより)
中平康監督は、『月曜日のユカ』『狂った果実』と私の好きな監督である。
この『美徳のよろめき』の原作は、三島由紀夫の長編小説。名家の生まれで躾も厳しく、気品のある振る舞いの人妻(月丘夢路)と年上でガサツで品のない夫(三國連太郎)。そこに結婚前、テニスの男友達(淡い恋人)と再会し、会わずにはいられない気持ちがだんだんと深みにハマっていく。
相手の男性は強引に引っ張っていくタイプではなく、また、月丘夢路も人妻であることから、日記を付けながら思いをつのらせていく。しかし、あくまでも美徳を貫こうとする。一方で、女友達は自由に不倫を楽しんでいる。
新藤兼人脚色ということで、起承転結を重んじる内容だと思っていたが、「転~結」があっという間に展開し、モヤモヤした感がある。その辺りの人妻の苦悩は相当なものがあったと思われるのだが。三島由紀夫の小説のストーリーは踏んでいるようだが、小説ではどのように描いているのか気になるところである。
映画ポスターでは、「官能の海にただよう若き人妻 節子」「夜読んでは眠れないーとまで評判される三島由紀夫問題作の映画化!」と結構過激な言葉が並んでいるが、昭和32年の制作なので女性の不倫を映像で表現する方法もある程度節度あるものとなっている。名家の出で、気品高く、抑制の効いた、和服が似合い、しかも官能的な雰囲気を醸し出す人妻を演ずる月丘夢路は、この役にとてもふさわしいと思う。
広島市映像文化ライブラリー月丘夢路特集
「美徳のよろめき」
1957(昭和32)年 日活 96分 白黒 16㎜
監督/中平 康
出演/月丘夢路、三國連太郎、葉山良二、南田洋子
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