PICKLED PUNK
劇場公開日:1997年5月17日
解説
すべてを捨てて自己破壊に向かう男の数日を、緊張感あふれる映像と断片的なサウンドトラック、映像とシンクロしないナレーションなどのモンタージュで描いたパンク・フィルム。IMAGICAで劇映画のポストプロダクション業務に携わるかたわら、ロック・バンド“プリン爆発プリン”として音楽活動を開始した山岡信貴が、93年に山岡秀雄名義で発表した16ミリ処女長編作品。脚本・撮影・音楽も山岡が担当し、パソコンを駆使して編集・音響まで山岡の自宅作業で行なわれている。93年のPFFアワードで審査員特別賞を受賞、のち海外10ケ国の国際映画祭に招待上映され賛否両論を巻き起こした。
1997年製作/日本
配給:スタンス・カンパニー
劇場公開日:1997年5月17日
ストーリー
男は旅に出る。旅の目的は自分の存在を1枚ずつ剥いでゆき、その果てにあるものを見極めることだ。恋人を捨て、親を殺し、すべての既成概念を消去しきった先にある自分は、いったい何者か。男は無計画に、しかし衝動的ではない殺人を繰り返していく。恋人である女は、そんな彼を理解できないまま男に盲従し、ひたすら後を追った。そして放浪のカメラマンがこの女についてゆく。さらに、男の暴力を受け精神を破壊された会社員が、3人を追う。旅が進むにつれ、今まで微笑んでいたかに見える街の顔が剥がれ落ちていき、野蛮で荒涼とした表情に満ちていった。男の腹には、生まれながらにして胎児のまま取り込まれている双子の兄がいる。兄の“声”は男の旅を導いていた。この声と、ラジオから流れる発狂した人生相談番組のキャスターの声とが、男の耳を支配している。男は声を絶つために腹の中の兄を摘出するが、それは目の前の闇を照らす明かりを失うのと同じことだった。そして恋人があの会社員に撲殺された時、名状しがたい感情が男に押し寄せてくる。男の根源には空漠たる闇が広がっているに過ぎないのだろうか。