劇場公開日 1949年9月19日

「能面の如き原節子の表情に、黒澤作品での役柄だったらと想像も膨らみ…」晩春 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5能面の如き原節子の表情に、黒澤作品での役柄だったらと想像も膨らみ…

2023年7月11日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

小津安二郎に関しての書籍紹介の中で、
彼の「紀子三部作」への言及があったのを
切っ掛けとして、
「晩春」を先ずは、と再鑑賞した。

小津監督の「東京物語」は
私の生涯のベストテンの一作だが、
本来、私にとっては、このような淡々と描く
作風の作品は苦手の分野なのだが、
何故か小津映画は全くその範疇に入らない。

登場人物の心象を写し取ったかのような
合間合間の静止画的風景カットの挿入など、
全てが計算され尽くされた演出のためか、
最初から最後まで
作品世界に浸ることが出来る。

そして、この作品では、
父の娘を想う芝居の告白に涙が。

それにしても、原節子という女優、
にこやかにしているうちは良いのだが、
時折見せる彼女の、
観ている側が凍り付いてしまうような
能面の如き表情を見ると、
小津映画の女優陣の中でも
特異なキャラクターに感じ、
そんな彼女が演じるのが、
黒澤明作品での、「蜘蛛巣城」の山田五十鈴や
「乱」の原田美枝子のような、
妖艶さを醸し出す役柄だったら、
と想像も膨らんだ。

KENZO一級建築士事務所