「2024年は本作公開70周年です 今こそリメイクするべき意味があると思います」晩菊 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
2024年は本作公開70周年です 今こそリメイクするべき意味があると思います
残菊の候、と手紙の書き出しによく使う時候の挨拶の残菊
それと晩菊とはどう違うのでしょうか?
残菊の方は、秋の盛りの時期が過ぎて初冬の頃になっても、まだ菊が咲き残っいる様子のことを指すのだそうです
では晩菊とは?
その残菊の中でも、年末頃の一番最後の最後まで咲き残っている菊のことを指すそうです
本作の晩菊とは、もちろん登場人物のアラフォーどころか、アラファイブの女性たちのことです
主人公のおきん 杉村春子 48歳
おでん屋の女将 おのぶ 沢村 貞子 46歳
旅館の女中 たまえ 望月優子 49歳
会社の掃除婦 おとみ 細川ちか子 49歳
四人とも20年前は、売れっ子芸者としてブイブイいわせていたようです
その彼女たちも今では、残菊どころか、晩菊になってしまったその有り様を描く物語です
大した事件も物語もなにもありません
昭和29年1954年公開、白黒作品
今から70年近い大昔のお話です
当時は、このような人生の女性は特殊な事例だったと思います
でも、なぜか21世紀にみるとどうでしょう
なにかすごく一般的なお話のように感じてしまうのです
当時は24歳どころか、20歳位で結婚して子供を何人も産んで専業主婦になっていた時代です
それが21世紀の現代では、本作のように女性たちの多くは、30歳どころか、40歳を過ぎても働いています
正社員ならまだしも、非正規労働の不安定かつ低賃金で暮らしている女性も多いのです
毎日あくせく働いて、眠るだけの毎日
本作の晩菊の女性たちと、一体どこが違うのでしょう
四人の内、二人はシングルマザーです
今でいう毒親ですが、それでも子供は成人して巣立っていきます
もう50歳手前、はっきりいってもうおばさんどころか、正直おばあちゃんに見えてもおかしくないのです
それでもまだ女を完成に捨て去った訳ではないのです
おのぶさんは、自分も子供を作りたいとか、たまえに男を紹介しようとしたとか言ってます
女もアラファイブにもなれば、いろいろな過去があります
男との腐れ縁もあります
昔の男が訪ねても来ます
忘れられない男もあります
過去の栄光の記憶もまだまだ新しいのです
2024年は本作公開70周年です
今こそリメイクするべき意味があると思います
本作の晩菊の四人を演じる名女優の演技のものすごいこと!圧倒的です
令和の女優陣がどこまで迫ることができるでしょうか?
男優陣も然りです
何より成瀬巳喜男監督の演出を超えることができるかどうか
正直心許ないのですが、それでも本作のテーマは21世紀の女性には普遍性がある、21世紀にこそ撮られるべき、撮られなければならない映画であると思います