「芸者コントのルーツ」晩菊 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
芸者コントのルーツ
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人付き合いも少なく物静かな人柄でいて、撮影ぶりは迅速で無駄がない、助監督も務めたこともある黒澤監督もその仕事ぶりに感銘していたと言う成瀬巳喜男監督、撮影所仲間からは作風から「ヤルセ・ナキオ」と称されていたらしい。兎に角、市井の人間を描いたら凄まじいばかりの生々しさ、リアリティとペシミズムの権化のようなひとですね。それでいて皮肉の利いたユーモア精神も忘れておらず当時の庶民感情の代弁者的な共感性があったのでファンは多かったようです。NHKの番組で知ったのですが柄本明さんもその一人、亡き志村けんさんとの芸者コントの企画は本作にインスパイアされたと語っておられたので興味をもって鑑賞した次第。
今はもう、とうに盛りの過ぎた芸者仲間の4人の女性の生きざまを赤裸々に描いています、だから立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花だった姉さん方も今や例えて晩菊なのでしょう。
戦後まもない時代ということもあり世知辛い世の中、花柳界の粋な風情も地に落ち、かっての旦那衆の凋落ぶりもあって気が滅入ります。
等身大の女性を描かせたら並ぶべき人がいないと言われたほどの名匠ですから、女性たちへの応援歌であると同時に、都合の良い女らしさやロマンスを女性に求めるなら、そもそも男たちがしっかりしなければいけませんよ!、との檄を込めているのでしょう、身に沁みました。
ユーモアも確かにありますが余りにも辛辣、志村さん、柄本さんのコントとは似て非なるものでした。それにしても女優陣の迫力にくらべ男優陣の存在感の薄さは何でしょう、「女は生まれながらにして女優である」の名言どおり、圧倒されまくりでした。
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