劇場公開日 2000年12月16日

「21世紀とはどのような社会になるのかの予告だったのです」バトル・ロワイアル あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.021世紀とはどのような社会になるのかの予告だったのです

2025年7月11日
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鑑賞方法:VOD

バトルロワイアル
2000年、東映

文明の肌を剥ぐとこうなるという姿が、中学3年生をモデルにして繰り広げられます
弱肉強食
ついさっきまでの仲良し関係なぞ簡単にふきとんでしまうのだということです
助け合うとか、協調するとか、平和、非戦の誓い、武力の放棄、人類の博愛なんて美しいことは呆気なく消え去ってしまうのだということです

15歳
1985年生まれ
つまりバブルを生んだプラザ合意のあった年に生まれた子供達
彼等はバブル景気を象徴した存在です
小学4年のとき母は家を出た
10歳、1995年
バブルは崩壊して一流企業ですらリストラが吹き荒れた年

中学入学式の日に親父は首を吊った
13歳、1998年
巨大金融機関ですら経営破綻した年、日本はこのまま底なしの経済恐慌に突入するかも知れないと誰もが恐れおののいた年でした

もうこの国はダメになってしまいました

本作はそうなってしまった架空の歴史の日本です

おまえ等のせいだよ
おまえ等大人を舐めてんだよ
ナメんのはいいが、だけどなこれだけは覚えておけ

人生はゲームです
みんなが必死になって闘って生き残る価値のある大人になりましょう

国家が破綻したとき
人のことなんか構ってはいられない
人を押しのけて、蹴倒して自分が生き残れなければならなくなるその一歩手前まで行った恐怖を語っています
21世紀は、そんな時代になるんだぞということを極端な形でデフォルメした映像作品だと思います
本作公開の2000年は就職氷河期の真っ只中でした
他人を押しのけて生き残れなければ、どうなるのか
それを25年後の私達は結果を知っています
一流企業もバブル崩壊で巨額損失を負い生き残りに必死でした
不適切経理という粉飾決算まで起こす倫理的な崩壊にまで至っていました
バトル・ロワイアルを経験した者は正常な倫理観を失ってしまうのだということです
それを本作を描いているのだと思います

でもそんな薄っぺらい解釈なんか吹き飛ばしてしまうほどの圧倒的な迫力が映像にあります
多感な思春期に本作を観てトラウマになってしまうのもむべない事だと思います

21世紀に本作を観ると
今の世界の状況そのものだと思いました
簡単に読み替えできてしまうことに驚きました

もうこの国はダメになってしまいました
おまえ等のせいだよ
おまえ等米国を舐めてんだよ
ナメんのはいいが、だけどなこれだけは覚えておけ

世界秩序はディールです
みんなが必死になって闘って生き残る価値のある国になりましょう
そんなことをトランプ先生が言っています
関税のバトル・ロワイアルがいま行われているではありませんか

高度に経済が結合された今日ではもはや戦争なんて有り得ないと言われていたのに、ウクライナやイランではあのような戦争が行われて、簡単に民間人が殺されています
いまに関税どころか、ガチの戦争で世界大戦のバトル・ロワイアルが起こりそうな恐怖を感じました

蛇足
爆弾を自作するときに参考に観ている本のようなものは腹腹時計
これは、1974年に丸の内で爆弾テロを起こし死者8人、負傷者400人を出した極左過激派組織が同年刊行したマニュアルです
映像からは実物のように見えます

あき240
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