「私が見た、おすすめしたい難民映画」蜂の巣の子供たち usaoさんの映画レビュー(感想・評価)
私が見た、おすすめしたい難民映画
太平洋戦争直後の戦災孤児たちをテーマにした映画なんですが、映画の中で戦災孤児を演じているのは、本当に戦災孤児なんです。
なにしろ映画のオープニング・タイトルに、いきなり「この子たちに心当たりはありませんか?」と出るんですから、これを見ただけで昭和23年にタイム・スリップしてしまいます。
子どもたちの演技は(少々ぎこちないけど)喜怒哀楽を自然に表現しています。子タレでもない子たちに、なぜそれが可能だったのか。
「なあに、簡単なことだ。子どもたちといっしょに遊んでやればいいのさ」と清水宏監督は語ったそうです。子どもを撮ることにかけては定評のある人だったとか。
清水監督に期待に応えてか、子どもたちも頑張ってます。「急斜面のガケを全速力でかけおりる」と言う危険きわまりないシーンを、長回しの一発撮りでこなしてるのですから。かの有名な「蒲田行進曲」の「階段落ち」もマッ青です。
ストーリーは敢えて記しません。
本編「蜂の巣の子供たち」は、行き場を無くした復員兵が戦災孤児をつれて放浪する、一種のロード・ムービーです。
続編「その後の蜂の巣の子供たち」は、自分たちの居場所を見つけた子どもたちの後日談です。
「蜂の巣」シリーズは色んなテーマが盛り込まれてるし、また、楽しく見られる娯楽映画でもあるんですが、強いて挙げれば、この映画のテーマは「愛」と言うことになるでしょうか。
それはまず、子どもたちを撮る清水監督のまなざしに愛があふれているし、また、子どもたちを守る復員兵の次のようなセリフにも現れています。
「世間の人たちは戦災孤児にお金や物を与えるまではするけど、あの子たちに本当に必要なのはそういったものじゃない。何と言うかなあ、あの子たちに親身になってやる大人が必要なんですよ。」
実はこの復員兵、「みかへりの塔」と言う養護施設の出身で、そこの教師と保母に見守られて育った。子どもに大人の愛情が必要なことは身をもって知っていたのです。
それでこの子たち、その後どうなったのかと言うと、清水監督に養育されて「ふつうの人」になったとか。ふつうが一番ですよね。
日本にも難民問題はあったんだと言うことが良く分かる映画です。戦争は最大の人権侵害ですな。
「蜂の巣の子供たち」1948年、清水宏監督、日本
「その後の蜂の巣の子供たち」1951年、清水宏監督、日本