八月の濡れた砂のレビュー・感想・評価
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テーマ曲は印象に残るが
一般的な評価は高く、青春映画の傑作という人もいるが、私にとっては単なるやりたい放題の不良の映画。ただ、エンディングの石川セリの主題歌はいい。何か切ないムードと気だるい夏の感じが良く表している。
八月の濡れた砂は直ぐに乾いてしまい バラバラに飛び散る砂粒になり砂の城は崩れ去ったのだ
本作は1971年公開、狂った果実から15年後だ
同じ海、湘南葉山のとなり逗子を舞台にしている
狂った果実では金持ちの息子達だけの世界であったが庶民の高校生の物語だ
無軌道に生きる若者達の生態を描いているのも同じだ
映像は1967年のフランス映画の冒険者たちのヨットのシーンを意識しているものだ
暴力や女性への暴行シーンもあるが現代の露骨なものからすればなんということもない
第一、監督はそんなものを撮るつもりなどさらさらないのだから
本作は団塊の世代のレクイエムなのだ
その下のシラケ世代を表現しているという解説を目にするがとんでもない間違いだと思う
主人公達は高校生だから団塊の世代とするには下限の年代になろう
しかしこれは偽装だ
出演者の若者はテレサ野田を除いて全員団塊の世代なのだ
本当はこれは大学生の年代の物語なのだ
主人公達を大学生つまり団塊世代だと年代をとらえ直して、本作を観れば監督が何をテーマに撮ろうとしたのかが見えてくるだろう
団塊の世代、それも学生運動に参加した人ほど激しく琴線に触れるのだろう
その世代でなければ共感することは難しい
本作の世界は半世紀近い過去となり、21世紀の人間には只の青春物語としか目に映らないかもしれない
本作のテーマは学生運動の敗北とその後だ
それを描くための方便として狂った果実と冒険者たちを持ち出しているのだ
70年安保闘争の敗北をもって、嵐のような学生運動は終結をした
学生運動で中退したものもいるが、ノンポリ(政治に無関心)のものが大半だ、これ幸いと遊び呆けている
中には就職に向けて勉強に励むものもいる
学生運動を通じて日本を変革するという熱い情熱の夏の季節は去った
八月の濡れた砂は直ぐに乾いてしまい
バラバラに飛び散る砂粒になり砂の城は崩れ去ったのだ
大人達に潰されてしまい、目的を失って彼らは虚しく活きている
かくなるうえはと武力革命を夢想するが、結局は内ゲバを起こすのが関の山で、国民の誰の支持も受けず孤立していることを自覚するのだ
結局、団塊の世代はこのような達成できなかった熱い情熱を胸の中に飲み込み、日常に溶け込んで忘れるようにしていくだけなのだ
こう捉えると本作の内容はこういう風に読むことができる
冒頭の数名の男に暴行され浜辺に捨てられる少女は、学生運動の敗北の暗喩だ
彼女はボロボロにされ打ち捨てられた夢だ
だから若く美しいのだ
彼女には美しい姉がいる
妹は70年安保を、姉は60年安保闘争の暗喩だからだ
だから彼女達の家は立派な御屋敷なのだ
彼女達の家に入る泥棒とは公安のスパイの暗喩のようで実はアメリカだろう
日本から平和を盗み出そうといている泥棒になぞらえているのだ
だから折角追い詰めた泥棒を姉が解き放ってしまうのだ
主人公が妹に暴行するが、シフトレバーが折れて途中で止めてしまう
簡単にシフトレバーが折れるのは70年安保があっけなく改定されたこと、それによってあれだけ盛んだった学生運動も終息してしまったことを表している
村野武範が演じる野上健一郎は、学生運動の過激な暴力的活動で大学を退学させられた活動家を象徴している
彼はバイクの主人公たる普通の学生を学校にまで押し掛けて付きまとい、左翼運動から遠ざかることを許そうとしないのだ
勉強を励んでいる人物がガールフレンドを自殺に追いやるのは、別のセクト(派閥)の起こした内ゲバの記憶だ
野上は母親の恋人の男を脅し、逆にヤクザにやられる
これも学生運動の敗北の過程を表現している
結局、国家権力に屈服したのだ
ならばライフルによる武力革命しかないと決意するのだ
ヨットは日本国家であり、母の恋人は国家権力を象徴している
ヤクザは機動隊になぞらえられている
そして彼らはヨットを武力で奪取する
ヨットの内部を赤いペンキで塗り替えるのは、もちろん日本の赤化(共産主義革命)を意味している
しかし彼らの目的地は江ノ島位しか口に出ないのだ
はては内ゲバを起こす
ヨットには穴があき海水が流れ込む
彼らやヨットの運命がそこからどうなるのか
それは俯瞰する映像からはよみとれないまま映画は終わるのだ
21世紀の現代から振り返ると極めて予言的だ
本作公開の同年冬から翌年にかけ連合赤軍事件が起こる
壮絶な内ゲバリンチの地獄の末に浅間山荘立てこもり事件をもってその事件は終結する
国民は完全に学生運動を見放した
こうして団塊の世代の心のなかに見果てぬ夢はしまい込まれたのだ
しかし、その37年後の2009年に民主党政権が誕生する
武力革命ではなく民主主義に基づくものだが、その実態は団塊の世代の見果てぬ夢がスクラムして政権を奪取したものだろう
2009年とは正に団塊の世代が定年するピークを越えた頃だ
決して偶然ではないと思う
彼らは見果てぬ夢を成就させようとしたのだ
ヨットを乗っ取りペンキで赤く塗ろうとしていたのだ
しかし結局内ゲバに陥り船体に穴を開けて沈没させかねない状況に追い込んだのだ
正に民主党政権の顛末と末路を予言していたのだ
今、団塊の世代は70歳代となり徐々にに消えつつある
しかし彼らの妄執は未だ消えず、隙あらば若い世代に憑依しようとする呪縛霊のようだ
このように本作は実は学生運動に明け暮れた団塊の世代のレクイエムなのだ
あの夏の光と影はどこへいってしまったの
悲しみさえも焼きつくされた
私の夏は明日もつづく
主題歌の歌詞は正にレクイエムだ
本作を観て、彼らの妄執が静まらんことを祈るのみだ
一般的には評価高いが・・・
70年代初頭というと、ベトナム戦争。日本でも学生運動の余波が見かけられる時代だったと思うけど、その流れからはドロップアウトしている若者。湘南って、いつもこうした若者が多いのかと思うと変な気分になる・・・
車の中でレイプしようとした清は勢いでギアを折ってしまうのですが、そんなに簡単にレバーが折れる車って怖い。健一郎(村野)も無茶苦茶。女学校なら転校したいとか、むしゃくしゃしてレイプとか、挙句の果ては母に求婚する警察のおじさんを拳銃で脅す。まぁ、オヤジもヤクザを使ってヤキを入れてるし・・・
男って、結局はヤルだけの動物なのね・・・などとばかばかしくさせる映画なのだろうか。虚しいだけだぞ。
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