初めての愛
劇場公開日:1972年9月23日
解説
“青春”そのものが、本来持っている光と影、やさしさ、ためらい。様々な角度から“青春”を掘りおこす。全編に流れる歌は、作詞、作曲小椋桂で自らが歌っている。脚本は「蒼ざめた日曜日」の井手俊郎、監督は脚本も執筆している同作の森谷司郎、撮影は「白鳥の歌なんか聞えない」の中井朝一がそれぞれ担当。
1972年製作/94分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1972年9月23日
ストーリー
横浜の港が小雨にかすんでいる。悠一は二年前の上京の日を想い出していた。連絡船から見た函館の街も、雨にかすんでいた。「なに考えてるの?」ベッドに寝ていた夏子が、だるそうに起きあがった。夏子は横浜のクラブのママで、働きながら予備校に通っていた悠一に出逢ったその日から、成熟した女の魅力を彼に与え続けていた。夏子の魅力に捉えられてしまった悠一を徹は本気で心配していた。徹もまた進学を断念して、ホテルのボーイとして働き、悠一と同じ部屋で生活している。年上の女に深入りして不安になっている悠一には「黄色いレモンみたいな可愛い娘」を探してやらなければと、徹はやっきになっていた。それから間もなく徹は、同じホテルに見習いで入って来た娘を一目見たとき、彼女こそ「黄色いレモン」だと直感した。名前は光代といった。徹がひき合わせた光代と悠一の仲はうまくいきそうだった。光代は叔母の千枝と一緒に暮している。別居している父良平は、かつて妹・千枝を愛するあまり千枝の恋愛を許さなかった。光代はいつも、そんな叔母のようにはなるまいと思っていた。夏子は何故かこのごろ不安になる。悠一が若い娘と手をつないで、どんどん遠くへ行ってしまう夢にうなされるのだ。悠一は光代に惹かれ、光代もまた悠一を愛しはじめていた。光代の父は、娘に恋人が出来たと知るとかつて、妹の愛をひきさいたように光代と悠一の恋を認めようとはしなかった。光代は悠一を誘い初めて身体を許した。夏子にはもう悠一をひきとめる術はない。悠一は夏子を求めなくなり光代を追っていた。ある日、悠一の目の前で夏子が毒を飲んで死んだ。動転する悠一。車に乗って東名高速を走った……。車はトラックに激突し、悠一は死んだ。光代にとって、初めての愛を確かめ合った束の間の後にやって来た突然の死と破滅。北海道から上京した悠一の父母も、光代の父も叔母も、そして徹も泣いた。しかし光代は「あの人は誰か他の女のために死んだんです」と涙も見せなかった。「そのうちにあきらめて、半年もたったら、明るい顔になってまた好きな人ができて……そう思っているんでしょう」光代はなぐさめ顔の大人たちに、こう言い放った。