拝啓天皇陛下様のレビュー・感想・評価
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車寅次郎のモデルになった男が残したもの
BSの録画を視聴。
渥美清さんが扮する山正の人生を丁寧に描いた人間ドラマ。
ちなみに続編が存在しております。
今作に影響を受け、後に『男はつらいよ』(山田洋次監督作品)が誕生したのは有名な話。
カタカナしか書けない両親のいない山正は、天皇陛下様のおかげで三食お腹いっぱい食べれて天国で暮らせて幸せだったということですが、本人がそう思うならそれもまた真実であります。
続編も録画してあるので、いつか観たいです。
拝啓渥美清様
「男はつらいよ』同様、本作の主人公は渥美清さん以外考えられませんね。
観ている方が恥ずかしくなる程、馬鹿で真っ直ぐな“赤子“がスマートにカッコつけてなどいられない時代を生きる悲喜劇。
戦争と日本人を今まで見た事が無い角度から観せてくれました。
野村監督と渥美さんの八つ墓村コンビに感謝です。
戦争はもっとつらいよ?!
同名小説のヒットを受けて映画化された作品。
一日三食付きで風呂にも入れる軍隊生活を天国だと語る主人公のヤマショウこと山田正助。
彼を「純粋」と評する媒体もあるが、どちらかというと無学で無知。
服役経験があり、たびたび窃盗をはたらいては周囲を不快にさせるが、本人は至って無自覚。罪悪感など全くないという、貧困の原因が社会構造にあると考える能力はないが、行動原理は原始共産制的という、ちょっと不思議なキャラクター。
本作品は反戦映画と捉えられることもあるが、作中に声高に戦争批判を訴える登場人物も、視覚的表現もない。
確かにこの作品タイトルで『野火』みたいな映画には当時はできなかっただろうが、それでも、野戦征きへの不安や上官のパワハラで発狂する准尉や、戦友を間に合わせで火葬する戦地でのもめ事、無数に林立する棒杭だけの墓標(1963年の作品だから、サッドヒルよりも先)など、それなりに攻めていると自分は思う。
激戦地で戦死した中隊長の墓前で主人公が号泣するシーンに、原作者や作品の方向性が垣間見えるが、一方で、主人公の頓死を予感させるラストシーンに重なる大書の字幕は、戦争の意義をあらためて見つめ直すには十分すぎる表現。戦中・戦後を背景にした社会派ドラマとして評価したい。
主人公のヤマショウを演じるのは、松竹映画の看板シリーズ『男はつらいよ』を亡くなるまで支え続けた渥美清。同シリーズの寅さんや、TVドラマ『泣いてたまるか』にも通ずる、世渡りが下手で社会的に報われない人物像をここでも好演している。
渥美以外の共演陣も、かなり豪華。
『七人の侍』よりもある意味すごいかも(多々良純と上田吉二郎はどちらも脇役だが双方に出演)。
横暴で小ずるいが、どこか憎めない上官の二年兵・原を演じたのはふだん悪役や強面役の多い西村晃。のちにTVの二代目黄門様でお茶の間の人気者に。
後輩の初年兵・柿内を演ずるは、松竹新喜劇の花形役者・藤山寛美(先代)。いつもの「あほ役」とは正反対の、ヤマショウに文字を教える元代用教員役を落ち着いた演技で見せてくれる。
主人公に慕われる中隊長・堀江役は、銀幕の黄金期を脇で支え(出演作350以上!)、TVや舞台でも活躍した昭和の名バイプレーヤー、加藤嘉(よし)。ひげ面の加藤さんを観るのは初めてかも。
放浪画家・山下清もこそっとゲスト出演。むろん、裸ではない。
BS松竹東急で、本作品のヒットを受けて製作された続編『族・天皇陛下様』と併せ、初めて拝見。
戦争に対する懐疑的な表現は続編の方が多いが、いずれにせよ、どちらも秀作。
戦後18年経ったからこそ、軍隊を笑い飛ばせるようになった。
軍隊に好かれ、軍隊を愛した男は、軍隊解体と共に天に召されてしまうお話。
本作は反戦映画という側面もあるが、日本という国の在り方に疑問符を突きつけたような仕上がりになっている。
天皇陛下を異常なまでに愛する姿は戦時国家へとミスリードした者へのアンチテーゼとなっている。
それにしても、山田正助の虚言癖や誰にでも愛されるキャラ、短気で直情的なところは、後の車寅次郎の原型と見て取れる。
純粋無垢と言うよりもウマシカな男
我が亡父が好きな映画だった。だから、
何度か見たと記憶するが、全く印象が無い。
親父が言っていた事は「飲まされるアルコールは薬用じゃなくて、工業用で毒だからな」って言っていた。
兎に角、どこかで見た映画の元祖だ。たがしかし、大東亜戦争を公平に描いていない。南京陥落など中国から見た中国人の気持ちが描かれていない。また、日本人の女性の立場も全く無視。それで良いとは思えない。
で、それで、どうした?
って感じの映画。
純粋無垢と言うよりもウマシカな男。
最高の映画。 軍隊で生きた愛すべき男の物語。
反戦とかでもなく戦争賛美でもない。
軍隊でしごかれて恨みを持ち、反戦思想になる者もいる。
軍隊で、上官や戦友との出会いで、初めて自分の生きがいを感じた者もいる。
反戦でも戦争賛美でも無い。
愚直に生きた一人の男の物語。
大きな歴史のうねりの中で生きた。
皮肉だけど愛もあり…
滑稽だけど哀しみもあり…
たくましかった日本人のおかげで、現代があるんですねぇ…きっと。
人間同士の距離感が近い。僕はちょっと苦手だけど。
現代はコロナ禍で益々人の距離感は離れていくんでしょうね。
戦前から戦後の約20年の日本の軌跡の一端が垣間見える戦争喜劇にある客観的視座
従軍作家として日中戦争の兵役に就いた棟本博の追憶で語られる、岡山歩兵第10連隊に同期入隊の山田正助の数奇な半生を描いた戦争喜劇。昭和恐慌の大不況下の昭和6年からサンフランシスコ講和会議を目の前にした昭和25年までの、軍部が暴走し始めた戦前の軍隊生活と敗戦の痛手から漸く独立国家として再出発する寸前の日本が描かれている。貧しい生まれの無教養で手癖も悪い山田が、普通の兵士たちが抱く軍隊の厳しさに服従する辛さに反して、衣食住に満たさせた軍隊生活に生きる活路を見出す皮肉が作品の主題となる。しかし、山田を演じる渥美清の名演により、生きる術のないひとり孤独な男の悲哀がユーモアを伴いながら表現されていて、日本の喜劇映画の様式でも個性的な作品に仕上がっている。興味深いのは、再招集の昭和12年、南京陥落の報を受けて戦争が終わると予想する兵士たちの姿であり、それでは困ると天皇陛下に直訴しようとする山田の無垢さである。
情緒的な表現を得意とする野村芳太郎監督の堅実で安定した演出や、川又昂の撮影と芥川也寸志の音楽もいい。特に天覧の秋季大演習の場面が素晴らしい。進軍する歩兵の列の間をゆっくりと進む白馬に乗った天皇陛下に、初めて謁見して親しみを覚える渥美清の表情が人の良さを表す。途中トーキー第一作「マダムと女房」と「与太者と海水浴」「子宝騒動」の映像が流れ、時代の雰囲気を出している。前半の面白さに比べて、後半が駆け足気味な点が惜しい。上流階級の戦争未亡人に片思いする山田に、後の寅さんが重なるところが愉しい。
棟本の妻役左幸子の安定した演技力と当時の個性的な俳優人、藤山寛美、桂小金治、西村晃、多々良淳、上田吉二郎、清川虹子、そして加藤嘉と共演者も観ていて飽きない。長門裕之、中村メイコ、高千穂ひづるも適材適所の配役。
純朴な最後の赤子
「拝啓天皇陛下様」シリーズ第1作。
Huluで鑑賞。
純朴な青年・山田正助(渥美清)は、三度の飯が食えて、ちゃんと寝床があり、あまつさえ給料が貰える軍隊を“天国”と呼び、ずっと軍人でいられるように天皇陛下へ「まだ戦争を止めないで下さい」と手紙まで出そうとする…。
「この映画は、結局のところ何が言いたいんやろう?」と考えながら鑑賞していましたが、ラストのメッセージで納得が行きました。山田正助のような人間をつくり出してしまった当時の状況への批判、そして恐れ多くも陛下への…?
野村芳太郎の喜劇
野村芳太郎の喜劇もチェックしておこうというところで観ました。寅さんを観たことが一度もない、これが寅さんのプロトタイプだともしもしたら...私は本作一本で十分ですね~渥美清はどうもわざとらしくてだめです(それが多分好きな人なら良いところなんでしょう)。実は題名で身構えたが、変な左翼性は感じられないどころか逆でした。
純粋な男
葛西(桂小金治)だけは結婚していたが、スケベと囃し立てられるも手紙の内容を読むとそれだけで泣けてくるような話。二年兵になったとき、字の読めない山ショウは初年兵に字を教えてもらう。ある訓練の日、天皇陛下がお見えになり、彼はそれ以来尊敬の念を抱く。
除隊して昭和10年になった。戦争が始まり、棟本(長門)は召集される。大陸で生き残った棟本は戦争小説家となり、山ショウも三度召集される。
2度目の軍隊では天皇陛下に「兵士としてまた軍隊においてくれ」といった内容の手紙を書こうとしたが、棟本に止められた経緯があった。戦争や天皇陛下万歳ということに疑いを持たず、心が純粋すぎた男の物語。軍隊に入ったほうが生活が楽になるといった皮肉もあるが、何も知らないことによっても幸せになれるかというと・・・ちょっと疑問。
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