拝啓天皇陛下様のレビュー・感想・評価
全7件を表示
最高の映画。 軍隊で生きた愛すべき男の物語。
反戦とかでもなく戦争賛美でもない。
軍隊でしごかれて恨みを持ち、反戦思想になる者もいる。
軍隊で、上官や戦友との出会いで、初めて自分の生きがいを感じた者もいる。
反戦でも戦争賛美でも無い。
愚直に生きた一人の男の物語。
大きな歴史のうねりの中で生きた。
皮肉だけど愛もあり…
滑稽だけど哀しみもあり…
たくましかった日本人のおかげで、現代があるんですねぇ…きっと。
人間同士の距離感が近い。僕はちょっと苦手だけど。
現代はコロナ禍で益々人の距離感は離れていくんでしょうね。
戦前から戦後の約20年の日本の軌跡の一端が垣間見える戦争喜劇にある客観的視座
従軍作家として日中戦争の兵役に就いた棟本博の追憶で語られる、岡山歩兵第10連隊に同期入隊の山田正助の数奇な半生を描いた戦争喜劇。昭和恐慌の大不況下の昭和6年からサンフランシスコ講和会議を目の前にした昭和25年までの、軍部が暴走し始めた戦前の軍隊生活と敗戦の痛手から漸く独立国家として再出発する寸前の日本が描かれている。貧しい生まれの無教養で手癖も悪い山田が、普通の兵士たちが抱く軍隊の厳しさに服従する辛さに反して、衣食住に満たさせた軍隊生活に生きる活路を見出す皮肉が作品の主題となる。しかし、山田を演じる渥美清の名演により、生きる術のないひとり孤独な男の悲哀がユーモアを伴いながら表現されていて、日本の喜劇映画の様式でも個性的な作品に仕上がっている。興味深いのは、再招集の昭和12年、南京陥落の報を受けて戦争が終わると予想する兵士たちの姿であり、それでは困ると天皇陛下に直訴しようとする山田の無垢さである。
情緒的な表現を得意とする野村芳太郎監督の堅実で安定した演出や、川又昂の撮影と芥川也寸志の音楽もいい。特に天覧の秋季大演習の場面が素晴らしい。進軍する歩兵の列の間をゆっくりと進む白馬に乗った天皇陛下に、初めて謁見して親しみを覚える渥美清の表情が人の良さを表す。途中トーキー第一作「マダムと女房」と「与太者と海水浴」「子宝騒動」の映像が流れ、時代の雰囲気を出している。前半の面白さに比べて、後半が駆け足気味な点が惜しい。上流階級の戦争未亡人に片思いする山田に、後の寅さんが重なるところが愉しい。
棟本の妻役左幸子の安定した演技力と当時の個性的な俳優人、藤山寛美、桂小金治、西村晃、多々良淳、上田吉二郎、清川虹子、そして加藤嘉と共演者も観ていて飽きない。長門裕之、中村メイコ、高千穂ひづるも適材適所の配役。
純朴な最後の赤子
「拝啓天皇陛下様」シリーズ第1作。
Huluで鑑賞。
純朴な青年・山田正助(渥美清)は、三度の飯が食えて、ちゃんと寝床があり、あまつさえ給料が貰える軍隊を“天国”と呼び、ずっと軍人でいられるように天皇陛下へ「まだ戦争を止めないで下さい」と手紙まで出そうとする…。
「この映画は、結局のところ何が言いたいんやろう?」と考えながら鑑賞していましたが、ラストのメッセージで納得が行きました。山田正助のような人間をつくり出してしまった当時の状況への批判、そして恐れ多くも陛下への…?
野村芳太郎の喜劇
野村芳太郎の喜劇もチェックしておこうというところで観ました。寅さんを観たことが一度もない、これが寅さんのプロトタイプだともしもしたら...私は本作一本で十分ですね~渥美清はどうもわざとらしくてだめです(それが多分好きな人なら良いところなんでしょう)。実は題名で身構えたが、変な左翼性は感じられないどころか逆でした。
純粋な男
葛西(桂小金治)だけは結婚していたが、スケベと囃し立てられるも手紙の内容を読むとそれだけで泣けてくるような話。二年兵になったとき、字の読めない山ショウは初年兵に字を教えてもらう。ある訓練の日、天皇陛下がお見えになり、彼はそれ以来尊敬の念を抱く。
除隊して昭和10年になった。戦争が始まり、棟本(長門)は召集される。大陸で生き残った棟本は戦争小説家となり、山ショウも三度召集される。
2度目の軍隊では天皇陛下に「兵士としてまた軍隊においてくれ」といった内容の手紙を書こうとしたが、棟本に止められた経緯があった。戦争や天皇陛下万歳ということに疑いを持たず、心が純粋すぎた男の物語。軍隊に入ったほうが生活が楽になるといった皮肉もあるが、何も知らないことによっても幸せになれるかというと・・・ちょっと疑問。
全7件を表示