PERFECT BLUE パーフェクトブルーのレビュー・感想・評価
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楽しめたけど、ラストそういうこと?
なかなかサイコでホラー要素もあり、楽しめた。
どちらが現実でどちらが虚構か、区別がつかなくなっていく感覚が、観ている方にも連動してくる感じがあった。
ラストのシーン、てっきり自分は
錯乱・発狂し街に飛び出した未麻を必死で止めようとルミが追いかける
→揉み合いになり、二人して道路へ飛び出す
→ルミが重傷を負い、頭脳に異常をきたした
という経緯であのラストなのかと解釈したんですが
普通にルミが黒幕だということが、調べて分かりました。
「身近にいる仲間が実は黒幕だった」パターンですが、
あまりにもそんな素振りがなく、どんでん返しというよりは、突拍子もないという印象を抱いてしまった。
説得力を感じられなかったというか...。
私の感性の問題ですかね。
現実と幻想、虚構が混じり合う
今敏監督の作品を観るのは本作が初めて。前回のリバイバル上映を見逃していたので、今回の1週間限りの限定上映を楽しみにしていた。
今から見るといかにも低予算なつくりで、キャラクターデザインや声優も安っぽい感じがするが、画面から溢れ出る下世話なパワーと、場面転換の鮮やかさに惹きつけられる。ミステリーとしても、犯人像が二転、三転して飽きさせない。
題材的には実写向きに思えるが、実写にしたらあまりに生々し過ぎるし、同じカットを虚実どちらにも使えるというのはアニメならでは。後半に行けば行くほど、主人公の現実と、過去の自分の幻想、さらに撮影中のドラマの虚構が混じり合って、主人公と一緒にのたうち回るような感覚をもたらす。
ダーレン・アロノフスキーが本作を偏愛しているそうだが、確かに「ブラックスワン」のモチーフの一つにはなっているのだろう。
今敏監督はこの後、現実と虚構というテーマを深化させた作品を創っていき、道半ばで倒れてしまったが、今更ながらその道をこれから辿ってみたい。
恋はドォキ‼ドォキ‼するけど 愛がラァヴ♡ ラァヴ♡するなら~
と、聞いているうちにドンドン脳みそが耳から垂れ流れていきそうな歌詞が粗製乱造のチープな打ち込みサウンドにのって唄われ、フリフリの衣装でヌルヌル踊る3人組。1997年(日本公開は1998年)と言えばもう安室奈美恵はギャルのカリスマで結婚した年だし、SPEEDだってブレイクしていた訳で、唄って踊る女性シンガーはエナメルかナイロンの衣装に身を包み“アイドル”ではなく“アーティスト”と呼称されていた時代である。そんな時代にコレはどう考えてもダサいのだが、キャリアの岐路に立たされた主人公:ミマの日常がインサートされながら描かれる彼女のラストステージの模様は、否が応でも作品世界に惹き込まれる圧巻のオープンニングである。そしてなによりどう聞いてもチープなハズなのに脳裏にこびり付いて離れないこの曲、「愛の天使」……。本作にはいくつかのヴォーカルソングが流れるのですが、私はこの作品を何度見てもやっぱりこの曲しか頭に残らず、気付くとミマたちのステージを一眼レフ越しに見つめる“追っかけ”たちと同じ死んだ魚の目をしながら口ずさんでいるという恐ろしい曲なのです。(それにしても飛んできた空き缶を踊りながら躱すミマリンは何度見てもかっけぇー!)
そして後はもうただただシーンを巧みに繋げ時間を自在に操る今敏監督の手腕に惑わされるだけの90分。扱った題材と監督の映画哲学と演出技量の嚙み合い具合はもしかしたら「千年女優」(02年)など後の作品の方が高い次元にあるのかも知れませんが、私にとっては監督の処女作である本作が一番丁度よく楽しめる範囲の混乱具合で好きです。「羊たちの沈黙」(91年)のヒットから日本でも爆発的に(何なら今もなお)制作されたサイコスリラー。本作はその中でもストーリー自体はかなりシンプルな方だと思うのですがそれを抜群のセンスで編集し、このジャンルのトップレベルの作品にまで押し上げている感じなのです。
私のような素人にも分かり易く映画作品が“編集”という作業でどれだけ印象が変わるのかを教えてくれた作品であり、巧みな編集技術はもちろん、編集した後のシーンの繋がりを意識してキャラクターの動かし方(演技)や画面の構図が計算されているのだろう事が察せられ、分かり易く凄いと感じるのです。(本作と同じように私に“編集”の重要性を教えてくれた作品にクリストファー・ノーラン監督の「メメント」(00年:DVD特典の時系列編集版と見比べて)と「グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー」(89年:テレビ東京放送版とノーカットのビデオ版を見比べて)があります。)
所属事務所の方針でアイドルから女優への転身を図る主人公:ミマ。ミマが演じるドラマの登場人物:ヨウコ。そしてヨウコはドラマの中で自分を姉のリカなのだと思い込んでいるという、多重構造の上にさらに身に覚えもなく更新され続ける自分のホームページ。アイドルを続けていた場合のミマ。そのアイドルを続けたミマもミマ自身が思い描く理想の自分なのか?他人から『こうあって欲しい』と求められる他人にとっての理想の姿なのか?それらが判然としないまま幾重にも折り重なり、クンズホグレツしつつ入れ替わりながら複雑に絡み合って次第に混乱の度合いを強めていくミマ。そしてそれを観る観客もミマと一緒になって混乱していく事になるのですが、映画という虚構を観客という立場で観るのなら、この混乱も楽しい体験へと変わる。そんな極上の体感型の面白さも持った娯楽映画なのです。
本作は非日常的な体験をさせてくれる映画ではありますが、その娯楽性は【『やっちまった!』と思った瞬間に目が覚めて『夢だったのか…』と胸を撫でおろす】という、誰もが経験したことがあるであろう感覚を基にしていると思いますので、普遍的な面白さを持った映画だと思うのです。ですが結構いろんな角度でエグい描写が多いのでその点人を選ぶのかも知れません。ただ今回劇場でのリバイバル上映を鑑賞してきて驚いたのが、女性の多さ!制服を着た女学生や、私と同じ年頃の淑女に、迷彩柄のダウンを羽織ったすんごいアグレッシブな音楽が好きそうな女子の姿まで様々で、私のような死んだ魚の目でミマリンを見つめるオッサン連中は割と少なかった印象です。
私はそもそも今回、劇場へは「ガメラ 大怪獣空中決戦」(95年)のリバイバルを観に来たのですが、劇場のスケジュールに「ガメラ~」の後に約1時間のインターバルで本作が上映される事を発見した瞬間、頭の中で『恋はドォキ‼ドォキ‼するけど~』と、あのメロディーが甦ってしまったので観てきました。連休中の人でごった返す映画館はしんどかったですが、どうせ皆他の作品を観にきているのだろうと高を括っていたのに、スクリーンに入ると両作とも大盛況なのです。さすがに一月前に観た「もののけ姫」(97年)程の入りではないのですが両隣にミッチリ人が座った前から3列目の席でスクリーンを見上げての鑑賞でした。この席しか取れなかったからなのですがスクリーンの間近で見ると描かれた線の擦れや背景とセルの間の影まで確認出来て、作り手の痕跡を見られた気がしてこれはこれで趣のある鑑賞体験でした。
何故いま本作がリバイバル上映されたのかな?と思ってみると今敏監督が早逝されてかもう15年も経ったことに気づき、改めて失われた才能の非凡さに思いを馳せずにはいられないのです。
みえみえの釣り餌に食いついてしまった
私は本当に
アニメ初のサイコスリラーと言われる今敏監督の劇場デビュー作品。
アイドルから女優に転身した霧越未麻。アイドル時代とは違う役割を求められながらも仕事をこなしていく。しかしインターネットに起ち上げられた自身のファンサイトにはそんな自分を見透かしたような日記が投稿され、周囲では事件が起き始める。
これは私が書いたの?
事件は誰が?
あなたは誰なの?
私は正気なの?
ストーリー的にはそこまで珍しいものではないが、アニメーションならではのイマジネーション的なダイナミックさと同じ絵をコピー出来るという反復性が、現実と虚構の混乱にリアリティを与えている。
インターネットの中の自分、アイドルとしての自分、女優としての自分、そして本当の自分?
未麻の混乱はそのまま観客へも移っていく。
客席に座りながら現実と虚構の間で揺さぶられ果たして自分は正気なんだろうかと疑う自分がいた。
20年振り位に観たと思うが、当時はアニメーションでどういう表現が出来るのか。実写でやっても構わないことをアニメーションで表現する意義が強く意識されていた時代だったように思う。
現実と虚構が入り混じる作品スタイルは今敏監督のオリジナリティ。
早逝が惜しまれる監督だった。
アニメーションならではのサイコスリラー
本作が27年前に制作されていることにまずもって驚愕した。
予告編で完全に騙された。制作者や宣伝にまんまと意図通りに。
殺人犯をミスリードさせる展開、そして驚いた真犯人の存在。
(これは途中でも気づいて良さそうなのに、全然気づかなかった)
脱アイドルの俳優の女性の心傷を描く作品なのかと思いきや、
そうではなく、ストーカーまがいの男性ファンをベタに犯人かと誤認させ、
主人公未麻が多重人格者で実は殺人犯だったと誤認させ、
そして真犯人・・・という、この2回のミスリードは実に巧みだと思った。
それも、虚実入り混じる感じが観客を良い意味で混乱させていくあたりが
アニメーションという表現を使用した価値なのだろう。
いやぁ、でも、これは私としてはどんよりしちゃう作品。
何度も観たいとは思わないけど、いちどは鑑賞しておくべき作品だと思った。
偶像
先日、旧劇エヴァを観に行った時に予告編で流れ、観たい!と思い調べてみたら一日一回の一週間の上映
発売日にチケットを買ったら、その後すぐに完売になっていました
ネタバレがイヤだったので事前情報は一切頭に入れずに観てきました
最初のクレジットに大御所ネームがたくさん見受けられて改めて(凄い作品なんだな!)と前のめり気味に
かなり精神的にパンチのある作品でした
信じていたのに……っていうダメージ
そして何が真実なのかもわかりません
果たしてラストが真実なのか架空なのかもわかりません
脳をぐちゃぐちゃにかき混ぜられた感じ
理解はできなかった
でも!でも!!とても良かった!!
絵面がとにかく素晴らしく、丁寧で独特の暗さと美しさ
この映画のために作られたであろう、曲の出来もものすごく良くて
同行者に話したらCDが発売されていたとのこと
ヒロインにぴったりの、良い曲ばかりでした
逆にそのぴったり加減が残酷です
もう一回、配信で観ようと思います
ラストを知ってるからこそ、見えてくるものがたくさんありそうです
90年代の空気と共に。
リバイバル上映を鑑賞しました。上映時間は長くありませんが、物語が入れ子構造のように進んでいくため、意識が揺さぶられる独特の難しさがあり、とても引き込まれました。
また、当時の文化やファッション、家電などが丁寧に描かれており、90年代の空気感にふっと戻るような懐かしさもあった。
アニメーション作品として完成度の高い一本なのでしょう。
【ストーリー本線を追うのに必死になる作品】
アイドルと自己
完璧に構築されたアイドルのイメージ(衣装と愛嬌)が崩れ去っていく、、、そんなポスターのメインビジュアル。
夢と現実とパラレルと、自己同一性、自分の“中身”を曝け出すことへの葛藤、そこに“演技”という女優特有の多面性が組み込まれることで複雑さが増している。またこれはデヴィッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』に通ずるものがある。
しかしながら本作ではむしろ、個人的な内面よりも自己の外側にいる第三者からの目線や認知に近い側に鑑賞者の視点は置かれていたのではないだろうか。
鑑賞者は主人公の感情に寄り添っていたようで、実はそうではなかった。カットの切り替えで果てしなく紛らわされていく入れ子状の虚構が何度も暴露され、鑑賞者が仮の現実に引き戻され続けることの繰り返しは、ラストで明らかとなる真実(であってくれ)への驚きに繋がる。鑑賞者が観るもの、考えることは常に誘導され得るのだ。
では映画として観せられる虚構、メディアにおける演出の変更、それと一個人のプライベートとの境目、それは果たして“裏切り”なのだろうか。
そして本作がアニメであることも重要な点である。異なる世界線を飛び越えて存在するモチーフの数々や個々人の印象を固定し、揺らぎのない“完全な(パーフェクトな)”記号として理想的に構成できることは、意図しない表現の誤差を減らし、虚構としての“画面”という前提をわかりやすく示すこと可能にしているだろう。
完全なる疲労と憂鬱。完璧な彼の娘は、パーフェクトな希望。
執着と狂気
こんなアニメ作品があったとは!!かなり衝撃的でした。まずカット割りが絶妙で、一瞬、呆気にとられます。しかも、それが単に奇をてらったものではなく、物語の展開に必要不可欠な技であるところが、観ている気持ちとぴったりフィットします。今敏監督が入れ子構造の作品を作りたかったと語っていましたが、現実とドラマの話と幻想とが縦横無尽に入れ替わるため、観ていて非常に混乱しますが、そのこと自体が主人公・霧越未麻の心理状態を表しており、観客は作品を観ているというより、作品の中にいるかのような感覚になります。今作が描いているアイドルの消費期限(若さへの執着)や熱狂的ファン心理、虚構と実像の乖離などは、今作が公開された1997年よりさらに今日的なテーマになっているようにも感じます。なかなか見応えのある作品でした。
観客を迷宮に誘う名作
以前から観たかった作品で、数か月前に配信で観たのですが、ヒューマントラストシネマ渋谷で限定上映をしていたのを知り劇場で鑑賞して来ました。
3人組のアイドルグループ「CHAM」の一員であった未麻が、グループを卒業して女優として独り立ちしていく過程で発生した連続殺人と、未麻の葛藤や彼女の周辺で発生する奇怪な現象をミックスし、さらには夢と現実、さらには劇中ドラマのシーンを巧みに重ね合わせることで、観客を迷宮の中に放り出すかのようなダイナミックな展開が非常に魅力的な作品でした。
見所は未麻の心的描写でした。CHAMを卒業することに対する迷いをはじめ、女優としてドラマでレイプシーンをやったり、ヌード写真を撮影したりするなど、アイドルと女優のギャップに直面する苦悩、そして熱狂的ファンがストーカーになっている状況に対する恐怖、さらにはそうした状況が生む自分の分身の幻影に苦しめられる悪夢を見せつつ、現実の世界で発生する連続殺人の恐怖を重ねることで、虚構と現実をボーダレスに行き交う展開は、まさに今敏ワールド全開でした。
そして結局は元アイドルだったマネージャーのルミが、自分が諦めたアイドルの夢を未麻に仮託したことが一連の奇怪な事件の原因であるというストーリー展開も面白く、やはり劇場で鑑賞して正解だったと思った次第です。
そんな訳で、本作の評価は★4.8とします。
えっ、もう一つ!
アイドルから女優へ転身した霧越未麻。グラビアや過激なシーンにも果敢に挑戦するが、本心とは裏腹の仕事で精神が不安定になっていく。そんな彼女にアイドルのままでいてほしかったものもいて、やがて周囲で殺人事件まで発生し、彼女は。
評価が高い作品ということで期待して鑑賞。虚実混沌とした演出は想像以上に複雑で、未麻自身、ファンの男、出演中のドラマが絡み合っているだけではなく、さらにもう一つの物語が加わっていたことに驚かされました。その物語の真相には、期待以上に衝撃を受けました。
曲もよかった。♪
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