PERFECT BLUE パーフェクトブルーのレビュー・感想・評価
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予想外に恐ろしくエロいシーンも多めなアニメだった。
3人組女性アイドルグループ「CHAM!」のメンバーの未麻。
女優という新たな夢に向かって卒業を決意するものの女優業に翻弄されていて行くストーリー。
女優として活動するものの、セリフの少ない役や、過激な濡れ場、ヌードグラビアといった仕事しかない。
未麻は葛藤しながら女優としての経験を懸命に歩もうとする感じ。
そんな中、次々と起こる意味不明な残酷な殺人事件や未麻自身の幻影が出現。
現実と幻虚、ドラマのシーンが入り乱れる展開。
観ていて混乱する始末(笑)
何が現実で、何が幻なのか?
全く分からない(爆)
ストーリーを通して不気味な謎の人物が登場。
彼はいったい何者なのか謎?
歯の矯正した方が良くね(笑)
そして誰が何のために作ったのか分からない未麻のストーカー的な日記サイト。
未麻の幻影はなぜ現れるのか?
数々の謎が出現。
頭の中が「?」マークだらけになる始末(笑)
そんな予測不能な展開の中、未麻のマネージャーである留美。
未麻に異常なほど献身的に接する様子が何だか怪しい。
終始、観る者を翻弄するような作風だったけど、ラストシーンで未麻が鏡に向かって語りかける言葉を聞いた時、それまで意味不明な謎が一気に解き明かされた様な感じだった。
本作は自分的に、かなり恐ろしい作品だった。
真夜中に一人で観るのは間違いなくヤバいかも( ´∀`)
光を魅せたアイドルが人を魅せる女優に変わる!
1998年の作品。ホラー映画が大好きで、レンタルビデオで見た覚えがあるんだけど、あまり良い印象は残っていませんでした。配信で見かけて、懐かしさのあまり再見したんたけど・・・
何故かな?今回はかなり楽しめました。
画像が粗くて、こんなに雑だったかなってのが、再見の第一印象でしたが、そんなの忘れるほど魅入っちゃった次第です。
不気味な絵で、ゾクゾクする怖さがあります。
アイドルから女優へと転身する中で、自分自身と描いていた夢との亀裂が広がるのを感じる。そして、偶像を求める人の偏執的な想いが、常軌を逸していく。
【ネタバレ】
2000年のミレニアムの頃は、人の意識の変換期だった気がする。アイドルは💩をしないと神格化されていた時代から、会いに行けるアイドルが登場してくる。
神の様に崇めていた人からすれば、レイプシーンなんて、もっての外だろうね。その人を偽物だと思いたくなる気持ちも分からなくもない。
多重人格を盛り込んだ劇中劇との絡みも見応えありました。おかしくなっていく自分、幻覚に悩まされていく恐怖に、見ている自分も困惑していく感じです。
アニメではありますが、生々しい映像と複雑な展開に楽しませてもらった一本です。
やっと見た
随分前から気になってはいたんだけど中々見る気が起こらず、
今日やとみた。
正直期待外れだったかな。
30年近く前の作品としては絵のクオリティが高いのはことは認めるけれども
いかんせん内容については古臭さが否めない。
犯人がマネージャーで多分かつて売れなかった自分をみまに投影していて、、、
みたいな感じなんだろうけど使い古してて流石にねえ。
幻覚と現実の交差する設定は意味があったのかかなり疑問。
それならもっと自分が殺人を犯したのでは?という不安を演出するべきだったと思うし。
マリグナントくらい不安を煽っても良かったと思う。
不安定な幻想と殺人とストーカーが噛み合ってなくて演出の意味を持たないのだもの。
パプリカは見てないけどこういう現実かどうかわからない世界観はビューティフルドリーマーの方が上手かったなと。
何でこの原作をチョイスしたのか本当に疑問。
そういえばストーカーとマネージャーの目の離れ具合が尋常じゃなくて気になって仕方なかったよ。
なめてた、面白い
何が本当で何が幻か
鑑賞後結局何だったのだと疑問が残る。
これぞ今敏監督作品って感じだった。
主人公未麻はアイドルから女優への転身するなかで、醜い姿をしたストーカーが怪文書を主人公自宅へファックスしたり、主人公の行動を全てウェブ上で日記として垂れ流したり。序盤はストーカーって本当恐ろしいなぁとゾワゾワしていた。
だが、女優になるのはそう順調にはいかない。女優として成功していくためにグラビアやレイプされる役を引き受ける。映像作品とはいえ凄惨な姿だった。主人公は精神的ダメージを受け、徐々にメッキが剥がれていく。未麻の周りで起こる不可解な事件も結構グロテスクであった。
最終的にはルミが未麻に襲いかかり混乱を極めた。ルミが未麻がアイドルとして活躍することを応援するのは献身的な気持ちではなく、自分を重ね合わせていた。自分がアイドルとして成せなかった深い後悔が見受けられる。
現実と虚構が入り混じり、結局あまり理解出来ずにいる。
何が本当にやりたいか、何が本当の自分なのか問いかける哲学的や姿はこの時代ならではの不気味さがあって素敵だなとおもった。
98年の作品だが、現代に見合った内容で驚いた!!
Windows95が普及して、ネット利用者が増えた頃が舞台で懐かしいですが、内容自体はアイドル・推し活全盛で、また精神疾患に認知のある現代に見合っているという、先進的な映画でした。なぜレ◯プシーンなのかと思いましたが、【推しの子】で劇中劇に全く興味がわかなかったので、本作の方が演技や覚悟を表すには分かりやすいですし、小賢しくない演出だと感じました。岩男潤子さんの悲鳴も沢山聞けますし、上手かったです。
【アイドルに魅せられた幻達】
怒涛の展開の数々、鑑賞者も惑わされる悪夢のような繰り返しの展開に、81分間とは思えない程の内容量に感服させられました。
「人気絶頂で女優に転身した元アイドルの未麻」と「ファンの前でキラキラと輝くアイドルの未麻」。
どちらが本物でどちらが偽物か。
この両極端な二面性に、登場人物も鑑賞者も惑わされてしまっています。
アイドルの未麻が魅せる幻影。それに取り憑かれた登場人物達が躍動する物語は、思わず声を出してしまそうになる程に圧巻でした。
映画『JOKER』のように、主人公が見ているのは現実なのか幻覚なのか、目が狂わされる作品はとても素晴らしいですね。
最後、大女優に成ったであろう未麻がバックミラーに向かって「私は本物」というシーンは、最後まで未麻自身もアイドルの頃の未麻に取り憑かれているような感覚を憶え、最後の最後まで混乱させられてしまいました。
ここまで鑑賞者が頭の中で考察を張り巡らせる作品は中々出会えないと思います。
私が産まれる前の作品ですが、とても感動致しました。
アニメでしか表現できない狂気
おかしい。狂っている。
どうしてこんな映像作品が創れるのか?
先に千年女優を観て、その才能に度肝を抜かれた今敏監督。
この作品はずーっと昔から知っていたが、今の今まで観るのを避けてきた(ホラーとか怖いのは苦手)
現実と虚構(幻覚)が入り乱れていく世界。主人公がおかしくなっていくのを観る我々も徐々に虚実の区別がわからなくなっていく。
そしてラストで種明かしが提示される。
我々は一体何を観させられたのか?
主人公の葛藤も虚だったのか?何が本当か?何が幻覚か?
一切合切、説明はない。説明がないから、ずーっと忘れられない感覚を残す。
でも、「真実」が何だったのか考察しようという気持ちにはならないのだ。
それを考えて何になるのか?という気持ちになるのだ。
「わからないものは、わからないままでいい」
「不思議なものは、不思議なままでいい」
「気持ち悪いものは、気持ち悪いままでいい」
得体の知れない強烈な感覚を観る者に残す、狂気の天才による狂気の作品。
たたみかけるような展開
1998年当時にこれを見たら結構な衝撃だったのでは
現実と撮影中のドラマと夢とが混在し
観ている者すらわからなくなっていく
現代ではストーカーも多重人格も
アイデアとして消費され尽くした感はあるけれど
約30年前の作品だと思えば
センセーショナルだったと思う
だって今観てもおもしろいし
左様なら♥️ネット社会!
Mac LC575が載っています♥️
持ってました。
さて、
「ブラウザーをダブルクリックして立ち上げて」
「えっ!ダブルクリップ?」
「挟んでどうするの」
「それでロケーションってとこにURLを入れるの」
「日本語で説明して!」
てな事になる。
このアニメは、日本の芸能界のドロドロと
ネットのドロドロを先取りしているね。
それとこの頃流行った事ばかり。
二重人格を解離性同一性障害って難しい名前で言われる様になった。つくづく、『日本語で喋ってもらいたいなぁ』って思ったものだ。
このアニメは実写版は今も昔も作れないですね。
なんで『アイドルー偶像』なんて言うんですかね。現在の海外ではアイドルとして扱われるのはK−POPとかのみ。つまり、このアニメの頃のアイドルが起源なのかもしれない。
このアニメでディスプレイの扱い方がテレビ時代の終焉を予言していると感じた。一番の場所にMAC。この機種はまだテレビチューナーはつけられなかった(かもしれない)。そのテレビは天井近くの片隅。つまり、テレビはこのアニメの中では無用の長物なのだ。
さて
この頃の現実は。世はまさにテレビの多チャンネル時代。衛星放送。
スカ〇パーフェ〇〇TV、ディレ〇〇TV。アンテナ立てる為に引っ越したものだ。
僕もそれに完全に乗っかった。
勿論、特定の偶像を追いたかった訳では無い。理由は言うまでもない。
結果は日を見るよりも明らかで、直ぐに忘れさる事になる。
そして、ネットの世界がひらけたわけだが、やってる事は昔と変わらない。
加速度的にそれも終焉を迎える様な気がする。
未麻の戦闘力高!!!
レビュータイトルがまず、この映画のツッコミたい所でしたが、一旦それは置いときまして、終始不気味な雰囲気が漂っている映画だったなぁと。最初は女優に転身した未麻の深層心理として見えているのがアイドルの頃の未麻なのだと思っていましたが、あれ?これ未麻の精神が乖離しちゃってる?いや、違うよな、犯人は最初から偽ブログを書いていたアイツだよな?からの、、、アイドル未麻がマネージャーだったなんて。。。身の毛がよだつ展開でした。
最後は明るいエンディングが流れこれまでのどんよりとした気持ちを吹き飛ば....せるわけないだろ!
アニメを超えてる
ブラック・スワンの元ネタとか
ハリウッド映画「ブラック・スワン」の未承諾元ネタがこの映画だと知って見てみた。
(R15だったようでフラッシュバックの危険性がある人は見ない方が…)
インターネット黎明期の作品らしく分厚いパソコンやテレビデオが懐かしい。
絵がうま怖い。一般的な外見と思われる人たちが何だか全員恐ろしく性格悪そうに描かれる。ヤバいやつはとびきり怖く描かれる。
中身は当時の殺伐とした時代を反映したもので、売れないアイドル、群がるカメラ小僧、未成年を簡単に脱がしたり襲われるシーンを撮りたがる大人どもと心冷え冷えする。
アイドルに限界を感じ女優に転身するといっても1から演技の勉強するわけでもなくただ生き残りをかけてるだけ。見る方も事務所にゴリ押しされただけの下手な役者などみたくないのに。際どいシーンをこなしたり脱いでこそ女優扱いな風潮もおかしいが。
不思議なのが勝手に「未麻の部屋」なるサイトを作られ日記もストーカーしてるとしか思えない内容なのに未麻は事務所にもマネージャーにも誰にも相談しない。
事務所の社長が未麻宛の手紙が爆発したことで相当の出血だったのに軽傷で済み警察に届け出なかったのも謎。ニュースになればある意味名を売るチャンスでは?
つきまとい警備員の存在にしろストーカー規制法がない時代にしても「何で周りに相談しないの?」ということ続出。
その後も現実か幻影かドラマの撮影か分かりにくく展開し主人公が精神的に参ってるのは確からしい。
レ〇プシーンはTVドラマで未成年だろうにこんな撮影までさせる?酷すぎ!と思わされた。(当時のTVは平気で未成年のヌードやグロシーンをだしてたことを思い出す)
それらも実は未麻もストーカーも存在せず、主人公はタカクラヨウコという名で街でモデルにならないかと騙されストリップ劇場に出る羽目になり集団レイプされたショックで生み出された別人格!
と思わせる場面が出てきたことで納得しかけた。レイプシーンがリアルで悪質なのは撮影じゃなく本当にあったから。誰にも相談しないのもストーカーの監視力が半端ないのも幻影だから。
酷い。せめてレイプ魔を殺してくれたなら…せめて逮捕されてたらいいのによくある加害者野放し?
と思わせてから女優未麻としての話がまだまだ続き「?」で実は黒幕はこの人でした!とくる。(先にレビューで「このアニメでヤバいやつは目が離れた顔に描かれる」と読んでしまっててこの人信頼できそうなのに目離れてる…と思ってたら案の定。ネタバレだった)
ほとんど黒幕がやったことで未麻は実在し人気女優になれてると思えたほうがまだ後味いい。
でも未麻が何が現実かわからないほど不安定になっていた理由は?
ブラック・スワンの元ネタらしいけどこちらも「世にも奇妙な物語」初期の傑作「女優」に影響されてそうなストーリー。
何が現実で妄想なのか誰が実在したのかわからないという話にしたかったのかもしれない。
一昔前前の作品とは思えないクォリティー
一点二点変化するストーリー構成、当時としては素晴らしいクォリティーの映像、音響。よく出来た作品。パソコンの分厚さ以外は時代を感じさせなかった。
というか、日本はこの頃から本当止まってしまってるな、。進化が。夢とリアルが混ざるをこの時代にやっている凄さ。
一気に見れました。
【”未麻の部屋。アイドルの私、女優の私。そして多重人格者が惹き起こした恐ろしき事。”今作は20年以上前の作品とは思えぬクオリティを誇るサイコ・サスペンススリラーアニメーションである。】
■人気アイドルから女優へ転身した未麻は、大胆なレイプシーンやヌード写真を映されるなど、急激に芸能界での立ち位置を変えていく。
だが、未麻の周囲にはストーカーの影が徐々に、見え隠れするようになっていく。
ストーカー行為は次第にエスカレートし、ついには彼女が出演したドラマの脚本家、写真家が惨殺される事件が次々に起きる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・主人公の未麻のキャラクターデザインが、江口寿史氏である事がエンドロールで流れる。
そして、制作には大友克洋氏の名も記載されている。
成程と思う。
・予想を超えるサイコサスペンススリラー要素を孕むストーリー展開や、未麻の混乱する心理を表した表情の描き方が、歳月を感じさせない。
これは「千年女優」「パプリカ」でも思った事だが、46歳で早逝した今作の監督である今敏の図抜けたセンスを感じさせるのである。
・”アイドルの未麻”が混乱する”女優の未麻”を、アイスピックでひらりひらりと軽やかに追い詰めるシーンの描き方などは、その一例であろう。
・又、多重人格者であったマネージャーのルミと”アイドルの未麻”が被るシーンの描き方も同様である。
・未麻が見る”現実”と”虚構、幻”の描き方も見事であるし、作品の怖さを増している。
<今作は、アイドルから女優への転身を図った若く美しき女性を襲った恐ろしき出来事を描いた20年前の作品とは思えないクオリティを誇るサイコ・サスペンススリラー・アニメーションなのである。
改めて、今敏監督の早逝が惜しまれると感じる作品でもある。>
色あせない青
imdbに公開当時(1998年)のパンフレット画像があった。
パンフレットには大友克洋とロジャーコーマンと藤井フミヤの賛辞が載っていた。
そこで大友克洋はこう書いていた。
『これは、アニメーションと云うカテゴリーで作られ、映像作品と云う意味を持ち得ているすばらしい作品です。監督の今敏君の中では、アニメも実写も既にボーダレスで、彼の前にあったのはいかに面白い映像作品を作るかという事のみであり、そのために費やされた努力に拍手を送りたいと思います。様々な映画ファンにぜひ見て欲しい作品です。アニメーションの進化はデジタル化ばかりでなく、本来のエンターテインメントに向かっているのです。』
これはアニメであることに囚われずにつくった結果、PERFECT BLUEはアニメ映画としてでなく、たんに映画として人々に認知され評価されたという現象を、これより10年前の1988年にAkiraをつくった大友克洋が敷衍したものだ。
そしてPERFECT BLUEが、人々の記憶の映画棚に、アニメ映画という注釈やカテゴライズ抜きで並べられていることが、喜ばしい方向性である──と大友克洋は1998年PERFECT BLUEの賛辞として述べたわけである。
アニメ映画を見るときに「アニメ映画を見る」という身構えで見るわけではない。わたしはそうだ。
最近ルックバック(2024)を見たときも「映画を見る」つもりで見たし、宮崎駿や新海誠の新作を見るときも、映画を見る──つもりで見る。
クリエイターの目的が『いかに面白い映像作品を作るか』であるなら、観衆の関心は『いかに面白い映像作品』たりえているかであって、アニメか実写かに仕切りを設けていないのが一般的な観衆の視聴態度であろうと思われる。
しかし。
現実には、日本の実写映画は、日本のアニメ映画にくらべて、圧倒的につまらない。
クリエイターが実写にするかアニメにするかを題材に合わせて選んでいる──わけでもない。
今敏、宮崎駿、新海誠、細田守、押井守、大友克洋・・・そういった優れたアニメーターの作品世界や精神性を、日本の実写映画で見たことがあるだろうか。わたしはない。
両刀づかい(アニメも実写も扱える)なのは庵野秀明だが、逆に言うと庵野秀明くらいしかいない。
最近、藤本タツキ&押山清高のルックバックを見たが、日本の実写映画では見たことも聞いたこともないアイデアやセリフが、アニメ映画では出てくる。
本作PERFECT BLUEはダーレン・アロノフスキーが惚れ込み、入浴シーン(上からの俯瞰と、顔を湯にうずめて叫ぶ)が、ほぼそのままRequiem for a Dream(2000)で使われ、オマージュであることをアロノフスキー本人が認めて打ち明けているが、海外の映画人に(かつての黒澤明などはともかくとして)模倣される日本の実写映画があるだろうか?
たとえばNope(2022)の監督ジョーダンピールは、Nopeの前提やモンスターのインスピレーションを新世紀エヴァンゲリオンの天使から得た──と明言している。
今そのように影響を与える日本の実写映画はあるだろうか?
結局、日本の実写映画の製作者たちとアニメ映画の製作者たちは、180度違う人種であり、180度ちがう畑だ。
加えて、すべてがそうだとは言わないが、あきらかにアニメ映画の作り手のほうが実写映画の作り手よりもアタマがいい。
だいたいにおいて、日本の実写映画撮影現場は、いみじくもPERFECT BLUEのキャラクター、アイドルから転向した霧越未麻の境遇のように、女優デビュー作品からいきなりレイプシーンをやらされる──というような昭和四畳半下張りの世界線なわけである。それは令和の今も変わっていない。そんな旧態依然の環境に「本来のエンターテインメントに向かう」意向なんてあるはずがない。
しばしば指摘していることだが、ポルノを出発点とする日本の実写映画人の野心の根底には「(女優と)やれるかもしれない」というのがあったはずだ。全員がそうだったとは言わないが、下心が映画製作の原動力となったのは間違いないと思う。現実に性加害が判明した監督がいるではないか。いわんや旧世代・長老たちなら尚更である。現場には女優たちの泣き寝入りが数知れず転がっていることだろう。
真のエンタメは、アニメ・実写の垣根をもたない──という大友克洋の言説は、よく理解できる。
時代が巡って今2024年、ますますその通りだと思う。
しかし、映画を見慣れている人で、日本の実写映画と日本のアニメ映画のクオリティの差を知らない人は一人もいない。アニメと実写はおなじ日本製でも全然デキの違う兄弟なのである。
つまり観衆はアニメでも実写でも、どちらでもいいのだが、もし実写の製作環境にこのスクリプトを渡していたなら、PERFECT BLUEはつくられたとしても埋もれていた──と言いたかったわけ。
ロジャーコーマンは賛辞に寄せこう述べている。
『驚異的で、パワフルな作品だ。もし、アルフレッド・ヒッチコックがウォルト・ディズニーと共同で映画を作ったならば、きっとこのような作品ができただろう。』
そのとおりだが、もし日本の実写映画人にこのスクリプトを渡したばあい、これはヒッチコックではなく、ロマンポルノ路線へ奔っただろう。それが日本(実写)映画のわかりきった運命なのだ。
そもそも、この映画PERFECT BLUEは、実写映画として構想されていたのが製作段階で出資者が撤退したためアニメになったのだという。
実際にアニメでなければ埋もれるはずの映画だったわけである。
『カルトなテレビドラマのマニアとして知られていた竹内は当初、実写映画を想定していたと言われるが、資金調達が困難だったので、企画はオリジナルビデオに、さらにオリジナルビデオアニメ(OVA)に格下げされた。今(敏)のところにオファーが来た時にはOVAの企画だったので、彼は映画ではなくビデオアニメとして『パーフェクトブルー』を制作した。その後、完成直前になって急遽映画として公開されることが決まった。本来、この作品は「ビデオアニメーション」という枠で作られた作品であり、その狭いマーケットの中で少しだけ話題になってそのまま消えて行くはずだった。それが、劇場映画として扱われ、世界の映画祭などに招待され、各国でパッケージとして発売されることになるとは、関係者は夢にも思っていなかった。』
(ウィキペディア、パーフェクトブルーより)
かつて見た記憶はあるが、今見たら確かに原石の印象があった。ストーカーや男たちが嫌悪感たっぷりに描かれ気味が悪く、想像していたよりもはるかに扇情的なレイプシーンがあり、現代でもインパクトは痩せていなかった。
imdb8.0、RottenTomatoes84%と89%。
今敏監督は、この後、千年女優(2002)、東京ゴッドファーザーズ(2003)、パプリカ(2006)と、怒濤の高クオリティ作品を連発したが、
『新作『夢みる機械』準備中の2010年8月24日に膵臓癌で死去。享年46。』(ウィキペディア、今敏より)
──
imdbで見つけたトリビア。
『未麻がインターネットの使い方を教わるとき使われていたブラウザはネットスケープ・ナビゲーターである。この映画の制作当時、ネットスケープは地球上で最も人気のあるインターネット・ブラウザだったが、その後徐々に人気が低下し、最終的に2008年に開発が中止された。』
インターネットの歴史年譜によると1998年(前後)はブラウザ争いのほかに、1M/秒のADSLが実用開始した年、Windows98がリリースされた年、Googleが創業・法人格を取得した年、「ひろゆき」が2ちゃんねるを開設した年、iモード(携帯電話からネットへアクセス)が開始された年。など・・・。
映画内では未麻が極度のパソコンオンチであることを描写していたがそれが滑稽なほど時代的だった。
ちなみに藤井フミヤの賛辞は──、
『アニメーションでしか表現できない主人公未麻の存在感とリアリティがこの作品の切なさと恐怖を増幅させていく。この映画は日本の新しい文化と技術でしか作れないサイコだと思う。』
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