PERFECT BLUE パーフェクトブルーのレビュー・感想・評価
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アイドルと自己
完璧に構築されたアイドルのイメージ(衣装と愛嬌)が崩れ去っていく、、、そんなポスターのメインビジュアル。
夢と現実とパラレルと、自己同一性、自分の“中身”を曝け出すことへの葛藤、そこに“演技”という女優特有の多面性が組み込まれることで複雑さが増している。またこれはデヴィッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』に通ずるものがある。
しかしながら本作ではむしろ、個人的な内面よりも自己の外側にいる第三者からの目線や認知に近い側に鑑賞者の視点は置かれていたのではないだろうか。
鑑賞者は主人公の感情に寄り添っていたようで、実はそうではなかった。カットの切り替えで果てしなく紛らわされていく入れ子状の虚構が何度も暴露され、鑑賞者が仮の現実に引き戻され続けることの繰り返しは、ラストで明らかとなる真実(であってくれ)への驚きに繋がる。鑑賞者が観るもの、考えることは常に誘導され得るのだ。
では映画として観せられる虚構、メディアにおける演出の変更、それと一個人のプライベートとの境目、それは果たして“裏切り”なのだろうか。
そして本作がアニメであることも重要な点である。異なる世界線を飛び越えて存在するモチーフの数々や個々人の印象を固定し、揺らぎのない“完全な(パーフェクトな)”記号として理想的に構成できることは、意図しない表現の誤差を減らし、虚構としての“画面”という前提をわかりやすく示すこと可能にしているだろう。
完全なる疲労と憂鬱。完璧な彼の娘は、パーフェクトな希望。
執着と狂気
こんなアニメ作品があったとは!!かなり衝撃的でした。まずカット割りが絶妙で、一瞬、呆気にとられます。しかも、それが単に奇をてらったものではなく、物語の展開に必要不可欠な技であるところが、観ている気持ちとぴったりフィットします。今敏監督が入れ子構造の作品を作りたかったと語っていましたが、現実とドラマの話と幻想とが縦横無尽に入れ替わるため、観ていて非常に混乱しますが、そのこと自体が主人公・霧越未麻の心理状態を表しており、観客は作品を観ているというより、作品の中にいるかのような感覚になります。今作が描いているアイドルの消費期限(若さへの執着)や熱狂的ファン心理、虚構と実像の乖離などは、今作が公開された1997年よりさらに今日的なテーマになっているようにも感じます。なかなか見応えのある作品でした。
観客を迷宮に誘う名作
以前から観たかった作品で、数か月前に配信で観たのですが、ヒューマントラストシネマ渋谷で限定上映をしていたのを知り劇場で鑑賞して来ました。
3人組のアイドルグループ「CHAM」の一員であった未麻が、グループを卒業して女優として独り立ちしていく過程で発生した連続殺人と、未麻の葛藤や彼女の周辺で発生する奇怪な現象をミックスし、さらには夢と現実、さらには劇中ドラマのシーンを巧みに重ね合わせることで、観客を迷宮の中に放り出すかのようなダイナミックな展開が非常に魅力的な作品でした。
見所は未麻の心的描写でした。CHAMを卒業することに対する迷いをはじめ、女優としてドラマでレイプシーンをやったり、ヌード写真を撮影したりするなど、アイドルと女優のギャップに直面する苦悩、そして熱狂的ファンがストーカーになっている状況に対する恐怖、さらにはそうした状況が生む自分の分身の幻影に苦しめられる悪夢を見せつつ、現実の世界で発生する連続殺人の恐怖を重ねることで、虚構と現実をボーダレスに行き交う展開は、まさに今敏ワールド全開でした。
そして結局は元アイドルだったマネージャーのルミが、自分が諦めたアイドルの夢を未麻に仮託したことが一連の奇怪な事件の原因であるというストーリー展開も面白く、やはり劇場で鑑賞して正解だったと思った次第です。
そんな訳で、本作の評価は★4.8とします。
えっ、もう一つ!
アイドルから女優へ転身した霧越未麻。グラビアや過激なシーンにも果敢に挑戦するが、本心とは裏腹の仕事で精神が不安定になっていく。そんな彼女にアイドルのままでいてほしかったものもいて、やがて周囲で殺人事件まで発生し、彼女は。
評価が高い作品ということで期待して鑑賞。虚実混沌とした演出は想像以上に複雑で、未麻自身、ファンの男、出演中のドラマが絡み合っているだけではなく、さらにもう一つの物語が加わっていたことに驚かされました。その物語の真相には、期待以上に衝撃を受けました。
曲もよかった。♪
夢と現実の境を曖昧にして描かれる歪んだファン心理
【イントロダクション】
竹内義和による1991年発表『パーフェクト・ブルー 完全変態』を原案に、『千年女優』(2001)、『パプリカ』(2006)の今敏が劇場映画化。
アイドルを引退して女優業に転向した女性が、芸能界での過酷な仕事やストーカーからの被害により、次第に夢と現実の区別がつかなくなっていく過程を描くサスペンス・スリラー。
脚本には、実写・アニメ共に経験豊富な村井さだゆき。
【ストーリー】
売り出し中のアイドルグループ「CHAM(チャム)」に所属する霧越未麻(きりごえみま)は、グループを脱退して女優業に転向する。自身のラストライブとなるミニライブは、マナーの悪い常連客と警備員のトラブルがありつつも、未麻は最後の舞台に立ち、アイドルを引退する。
女優業に転向した未麻だったが、早々に上手く行くはずもなく、舞い込んできた仕事はドラマ『ダブルバインド』の端役で、台詞は一言のみ。事務所の社長・田所の後押しもあり、脚本家の渋谷は、未麻に「ストリップ劇場の舞台で客からレイプされる」という過激なシーンを提案してくる。嫌々ながらも女優として成功する為だと、未麻は体を張ったシーンの撮影を乗り越える。やがて、未麻にはヘアヌード写真の撮影として、業界で“脱がし専門”と評されるカメラマンの村野からの過激なオファーも舞い込み、これに応えていく。しかし、過酷な仕事の日々に、未麻の心は確実に摩耗していった。
ある日、未麻はマネージャーの日高ルミの手伝いもあり、パソコンを購入してファンレターにあった自身のファンサイト『未麻の部屋』に辿り着く。そこには、まるでもう1人の自分でも居るかのように、未麻の性格から日々の生活までが日記の網羅されていた。恐怖に怯えながらも、未麻は日々更新されていく日記の内容を確認せずにはいられなくなっていく。
未麻は今の自分が本来望んだ姿なのか疑問を抱き始め、アイドルとしての理想の自分の姿を幻や夢に見るようになる。やがて、未麻の周囲では渋谷や村野といった過激な仕事をオファーした人物が次々と何者かに殺害されるという事件が起きていく。
【感想】
今監督の作品は、『パプリカ』(2006)を鑑賞済み。
監督のネームバリューや評価の高さから鑑賞したが、まさかこんなにも正統派なサスペンスだとは思わず(『パプリカ』のような超展開、『マルホランド・ドライブ』(2001)のような夢と現実の狭間で狂気に呑み込まれてゆく物語を想像していた)、思わぬ傑作との出会いに驚いた。鑑賞後、情報を整理して伏線となる箇所を確認したくなり、すぐさま2回目の鑑賞に手が伸びた。
また、物語の真相がクライマックスまで分からず、常に観客の予想を上回っていくのが素晴らしい。鏡やガラスを用いた夢と現実の対比が見事で、時に幻想を、時に真実を写し出す演出は、アニメーションならではの特性をフルに活かしている。現在から過去回想、夢や現実かと思えばドラマの撮影シーンといった、“何が現実なのか分からなくなる”シーンの繋ぎ方の上手さも特徴的。それがまた、観客に物語の真相を最後まで掴ませない効果を発揮している。妄想に取り憑かれたストーカーによる犯行、未麻の多重人格、夢オチ。あらゆる可能性が頭を過っては、それらが次々と覆されていく。しかし、全ての真相を知ってからなら、最初から全てが日高ルミの犯行(迷惑ファンをトラックで撥ねて重傷を負わせたのは、ルミが操ったストーカーの内田)によるものであり、ヒントは全て提示されているというフェアな作りだと分かる。原案があるとはいえ、非常に緻密で完成度の高い脚本だ。
散りばめられた細やかな伏線の数々を確認していく2回目の鑑賞もまた楽しい。
・冒頭のルミによる「未麻が可哀想」という台詞から既に、本物の未麻ではなく、かつての自分自身と未麻を重ね合わせて作り出した、理想の未麻が崩される事への抵抗だと分かる。それによって、あの台詞は「未麻の幻想に浸る私が可哀想」と聞こえてくるから恐ろしい。
・女優業への転向を告げたラストライブの帰り、ファンからの「いつも未麻の部屋見てるからね〜」という台詞が、後にストーカー視点の台詞ではなく、ルミが運営するファンサイトだと分かる仕掛け。
・未麻のストリップシーンの撮影時に、タバコの火が落ちるのも気にせず、鋭い形相で撮影風景を見つめるルミ。苦しむ未麻の姿に耐えかねて、涙を流して現場を去るのも、自らの中にある理想の未麻が穢されていく事に耐えられなかったから。
・『ダブルバインド』の最終回の撮影風景で、ドラマの結末が“未麻の演じた高倉陽子は、トップモデルの姉を殺して、自分が高倉りかとなる事で成り代わる事で救われた”というのは、ルミが未麻に成り代わろうとした事と重なっている。
・田所が未麻の次の仕事として過激なシーンのあるビデオ映画の主演を持ってきた事を知った瞬間、彼の殺害を決意した笑顔。
未麻役の岩男潤子さんの熱演が光る。幻想として現れる理想の自分、そんな自分の姿に次第に追い詰められていく未麻の姿の演じ分けが良い。アイドルとしてキラキラと輝いている未麻の姿には、常に何処かにルミの狂気が宿っているかのようで不気味さも放っている。
【アイドルという“偶像”に幻想を抱き過ぎる事の危うさ】
ラストで明かされる、一連の事件の真犯人が“理想のアイドルである未麻”を追い求めたルミの犯行であるという真実。ルミの狂気を見事に演じ切った松本梨香さんの熱演に拍手。
かつて自分も売れないアイドルとして活動し、そこからアイドルのマネージャーという立場になった彼女にとって、未麻はある種の“母親が叶わなかった自分の夢を子供で果たそうとする”という、心理学の「自己投影」の亜種と言える。ルミの場合は、未麻を追い詰めて殺害する事で、自らの期待を裏切った未麻への復讐と自らの幻想を守り、自分が理想の霧越未麻になろうとした。
アイドルとは観客に夢を与える仕事である。しかし、舞台を降りれば、そこに居るのは紛れもない1人の人間であり、それぞれの意思がある。「アイドルはファンや周囲の幻想・理想に準じるべし」という行き過ぎたファン心理は、1人の人間の人格と人権を無視した身勝手な思想である。ましてや、そこに“果たせなかった自分の夢を重ねる”というのは、狂気以外の何物でもない。
【総評】
夢と現実の境を曖昧にし、芸能界の過酷さ、夢を追う事の過酷さとそこで生きる者に向けられる行き過ぎたファン心理を描いた本作は、一級のサスペンス・スリラーとして強烈な印象を与えてくれた。
唯一気になるのが、未麻や一部俳優以外のキャラクター以外の目と目の間の間隔が異様に開いたデザイン。あれは、美醜の区別なのだろうか。ストーカーの内田含め、ファンや周囲の人々のデザインに「アイドルオタクって、ストーカーってこんなものだよね」という悪意を感じるのは、当時の時代性故だろうか。
予想外に恐ろしくエロいシーンも多めなアニメだった。
3人組女性アイドルグループ「CHAM!」のメンバーの未麻。
女優という新たな夢に向かって卒業を決意するものの女優業に翻弄されていて行くストーリー。
女優として活動するものの、セリフの少ない役や、過激な濡れ場、ヌードグラビアといった仕事しかない。
未麻は葛藤しながら女優としての経験を懸命に歩もうとする感じ。
そんな中、次々と起こる意味不明な残酷な殺人事件や未麻自身の幻影が出現。
現実と幻虚、ドラマのシーンが入り乱れる展開。
観ていて混乱する始末(笑)
何が現実で、何が幻なのか?
全く分からない(爆)
ストーリーを通して不気味な謎の人物が登場。
彼はいったい何者なのか謎?
歯の矯正した方が良くね(笑)
そして誰が何のために作ったのか分からない未麻のストーカー的な日記サイト。
未麻の幻影はなぜ現れるのか?
数々の謎が出現。
頭の中が「?」マークだらけになる始末(笑)
そんな予測不能な展開の中、未麻のマネージャーである留美。
未麻に異常なほど献身的に接する様子が何だか怪しい。
終始、観る者を翻弄するような作風だったけど、ラストシーンで未麻が鏡に向かって語りかける言葉を聞いた時、それまで意味不明な謎が一気に解き明かされた様な感じだった。
本作は自分的に、かなり恐ろしい作品だった。
真夜中に一人で観るのは間違いなくヤバいかも( ´∀`)
光を魅せたアイドルが人を魅せる女優に変わる!
1998年の作品。ホラー映画が大好きで、レンタルビデオで見た覚えがあるんだけど、あまり良い印象は残っていませんでした。配信で見かけて、懐かしさのあまり再見したんたけど・・・
何故かな?今回はかなり楽しめました。
画像が粗くて、こんなに雑だったかなってのが、再見の第一印象でしたが、そんなの忘れるほど魅入っちゃった次第です。
不気味な絵で、ゾクゾクする怖さがあります。
アイドルから女優へと転身する中で、自分自身と描いていた夢との亀裂が広がるのを感じる。そして、偶像を求める人の偏執的な想いが、常軌を逸していく。
【ネタバレ】
2000年のミレニアムの頃は、人の意識の変換期だった気がする。アイドルは💩をしないと神格化されていた時代から、会いに行けるアイドルが登場してくる。
神の様に崇めていた人からすれば、レイプシーンなんて、もっての外だろうね。その人を偽物だと思いたくなる気持ちも分からなくもない。
多重人格を盛り込んだ劇中劇との絡みも見応えありました。おかしくなっていく自分、幻覚に悩まされていく恐怖に、見ている自分も困惑していく感じです。
アニメではありますが、生々しい映像と複雑な展開に楽しませてもらった一本です。
やっと見た
随分前から気になってはいたんだけど中々見る気が起こらず、
今日やとみた。
正直期待外れだったかな。
30年近く前の作品としては絵のクオリティが高いのはことは認めるけれども
いかんせん内容については古臭さが否めない。
犯人がマネージャーで多分かつて売れなかった自分をみまに投影していて、、、
みたいな感じなんだろうけど使い古してて流石にねえ。
幻覚と現実の交差する設定は意味があったのかかなり疑問。
それならもっと自分が殺人を犯したのでは?という不安を演出するべきだったと思うし。
マリグナントくらい不安を煽っても良かったと思う。
不安定な幻想と殺人とストーカーが噛み合ってなくて演出の意味を持たないのだもの。
パプリカは見てないけどこういう現実かどうかわからない世界観はビューティフルドリーマーの方が上手かったなと。
何でこの原作をチョイスしたのか本当に疑問。
そういえばストーカーとマネージャーの目の離れ具合が尋常じゃなくて気になって仕方なかったよ。
なめてた、面白い
何が本当で何が幻か
鑑賞後結局何だったのだと疑問が残る。
これぞ今敏監督作品って感じだった。
主人公未麻はアイドルから女優への転身するなかで、醜い姿をしたストーカーが怪文書を主人公自宅へファックスしたり、主人公の行動を全てウェブ上で日記として垂れ流したり。序盤はストーカーって本当恐ろしいなぁとゾワゾワしていた。
だが、女優になるのはそう順調にはいかない。女優として成功していくためにグラビアやレイプされる役を引き受ける。映像作品とはいえ凄惨な姿だった。主人公は精神的ダメージを受け、徐々にメッキが剥がれていく。未麻の周りで起こる不可解な事件も結構グロテスクであった。
最終的にはルミが未麻に襲いかかり混乱を極めた。ルミが未麻がアイドルとして活躍することを応援するのは献身的な気持ちではなく、自分を重ね合わせていた。自分がアイドルとして成せなかった深い後悔が見受けられる。
現実と虚構が入り混じり、結局あまり理解出来ずにいる。
何が本当にやりたいか、何が本当の自分なのか問いかける哲学的や姿はこの時代ならではの不気味さがあって素敵だなとおもった。
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