劇場公開日 1958年6月15日

「一人二役を同時に演じた森繫久彌氏の見事な演じ分けと演技力の確かさに驚き!」暖簾 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0一人二役を同時に演じた森繫久彌氏の見事な演じ分けと演技力の確かさに驚き!

2024年10月13日
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鑑賞方法:映画館

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神保町シアターさん特集企画「生誕百年記念 小説家・山崎豊子 華麗なる映画たち」(2024年10月12日~11月1日)にて作家デビュー作『暖簾』を鑑賞。

『暖簾』(1958)
山崎豊子氏が新聞記者時代に森繫久彌氏のもとを訪れて置いていった原稿を森繫氏が気に入り菊田一夫氏がまずは戯曲化、その後映画化された作家デビュー作。

『白い巨塔』『華麗なる一族』『不毛地帯』などの社会派作品ももちろん好きですが、本作はじめ初期の『ぼんち』『女の勲章』『女系家族』といった大阪(船場)の商人たちの生き様を描いた作品も抜群に良いんですよね。

本作も船場の老舗昆布問屋に丁稚奉公、暖簾分けが許された主人公吾平(演:森繫氏)とその次男孝平(演:森繫氏(二役))の大正時代から戦中、戦後までを描いた悲喜こもごもの親子の商売繫盛記。
名匠川島雄三監督の演出によるところも大きいのですが、なんといっても初老と復員した商売の才覚ある次男の一人二役を同時に演じた森繫久彌氏の見事な演じ分けと演技力の確かさに驚かされました。(途中まで次男坊の余りの快活な芝居に別俳優とばかり思ってました…)

最初は全く次男に期待していない吾平が実は自分の背中を見て育った孝平の才覚ある昆布問屋の再興をきっかけに反目しながらも認め徐々に互いの距離が近づいていくまでがとにかく自然に描かれてます。

吾平の妻役の山田五十鈴氏、幼馴染のお松役音羽信子氏、お松の娘役の扇千景氏(とにかく綺麗!)、孝平の恋人役中村メイコ氏、浪花千栄子氏など他の配役も豪華で芝居上手ですが、特に中村鴈治郎氏の厳しくも人情味溢れる吾平の旦那さん役が白眉でしたね。
人情喜劇として最高傑作、笑って泣かされましたね。

矢萩久登