「会社がお金をつぎ込んで、アイドルを作った時代。」野菊の墓 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
会社がお金をつぎ込んで、アイドルを作った時代。
尤も、それでアイドルとしてだけで終わるか、その後も生き続けるかはその人次第ではあるのだけれど。
オーディションそのものが宣伝。幾らかけたんだろう?
と、昔は考えていたけど、うまい役者を政夫に配したら、聖子さんの棒読みだけが際立っちゃうから、わざと素人を起用したのかしら?
聖子さん人気にあやかって、売り出したいアイドル男優を配することもよくあるけれど、主役を食ってしまうレベルだと困るし。
オーディション場面を基にした予告を見ると、ペアで売り出す気もないみたい。聖子さん自身が、優勝者である桑原君と視線を合わせることすらせず、常にカメラ目線。これでは映画にならない。
主役二人の演技に比べて、周りは豪華俳優陣。華もあり、実力も確かな人々の競演。(脇を務める方々の、一人語り芝居にしても、一つの作品として成り立つぞ)。
そして原作は純愛の極致。
これで、つまらない映画になるわけない。
とはいうものの、あの木下監督をはじめ、この映画で3回目の映画化。
それ以外に、TV版での、あの山口百恵さん主演の『野菊の墓』が記憶に新しい時期にもかかわらずの映画化。
チャレンジャーですね。否、そんな評価すら吹き飛ばすほどの、聖子さん人気だったのだろう。演技がなんだ、この映画なら、皆必ず泣いて感動するぞと。動員見込めるぞと。
そして、脇の方々がきっちり収まっていて、気合の入った映画なのだろう。
でも、心に残っていないんだなあ。小説の筋はしっかり残っているけど。
物語・演出・映像・音楽、脇役には高得点をあげたいのに、全体評価とすると★2つ。そんな映画。
聖子ちゃんファンのための映画です。
☆ ☆ ☆
千葉と東京の境、矢切りの渡し付近の話。小説の(この映画ではない)記念碑も立っている。
名家での結婚で大事なのは家と家の繋がり。個人の意志は無視。貧しい家の娘は、名家に奉公することによって行儀作法を身につけて箔をつけ、少しでも良い所に嫁入りを斡旋してもらっていた時代の話。(『おしん』『ちいさなおうち』)
だから、政夫の母が極悪人かといえばそうでもないんだけど、やっぱり二人の純愛を思えば、涙する。
初恋。結ばれぬものとはいえ、それだけでも胸の奥がキュンとする。
原作も読んでみることをお勧めします。