人間の條件 第1・2部のレビュー・感想・評価
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「やっぱり戦争はしちゃいけない」では済まされない
中学生の時にお弁当を二つ持って劇場に向かった時以来、約50年ぶりに全編9時間31分(途中休憩を2回挟んで計10時間)の6部一挙上映に臨みました。五味川純平・畢生の大作の映画化作です。太平洋戦争末期、旧満州の鉱山で劣悪な条件下で中国の人々を徴用していた満州鉄道で労務管理を担っていた男が、労働者を人間らしく扱おうとする内に時代の波に呑まれてやがて自身も戦争へと巻き込まれるお話です。僕の映画史で最長の上映作ですが、ただ長いだけでなく濃密な内容で、50年前には鑑賞後に原作全6巻を読み直したものでした。そして、今回改めて観て。
例えばです。多くの人に見守られながら特攻機が飛び立って行き、その背後にバラードが流れ、スクリーンでそれを観る人は涙しながら「ああ、やっぱり戦争はしちゃいけないんだ」と思うというパターンが日本の戦争映画に近年多く見られます。それが決して悪い訳ではありませんが、本作はそんな作品と比べると、物語のドキドキ・ハラハラを保ちつつも観客を突き刺す刃の鋭さ・強さ・深さが別次元の凄まじい作品でした。
中国の人々への加害・日本人の傲慢・軍隊内部(特に内務班)の非人間性・戦場での殺される恐怖・人を殺す恐怖・敗残兵として逃げる緊張感と飢餓感・女性へのロシア兵及び日本兵による性的暴行など、戦争の全てが描かれていると言ってよいでしょう。それらを通して描かれるのは、「個人の甘っちょろいヒューマニズムなど何の力も持ち得ない」という残酷な事実です。原作ではそれを「センチメンタル・ヒューマニズム」と表していました。「では、あなたならどうする?」を問い詰めるスクリーンからの圧力が息苦しいほどで、自分の眼で実際に戦争を見て来た制作者・出演者の人々の戦争への怒りが渦巻いています。
「私は人間である」と言ってよい条件とは一体何なのか? その辛い問いが、戦争と言う環境下では生身の形で突き付けられます。弱虫の僕はそんな詰問に堪えられとは思えません。一方、戦争が始まってしまったら個人のヒューマニズムなど簡単に圧殺されてしまいます。だから厳しい問いを避けながらのんべんだらりと生きたい僕は、その為にも、戦争の1歩前ではなく2歩前・3歩前で止めねばなりません。それが戦前を生きるまさしく今なのではないでしょうか。
戦後大ベストセラー
「軍隊ヤクザはつらいよ♥️」
3300ボルトの高電圧の電気を100アンペアの電流で細い針金に流す事は出来ないと思うけどね。
針金が焼け落ちるよ。
悪い悪い日本兵は、わがまま放題にやりたいたい事をやり尽くす。
アメリカと同盟を結ぶにはそのくらいの善意は見せないとね。
しかし、日本のナショナリズムとアイデンティティはこれで良いのだろうか?
アメリカにだけ戦争の贖罪を見せてもね。
この映画の様に侵略したのは別の国。
アメリカにはコテンパンにヤラれてしまっただけ。それでいて、アメリカにはペコペコ頭を下げてばかり。
兵隊ヤクザならぬ軍隊ヤクザはつらいといったところだよ。
なんか、2回目の鑑賞の様だ。、
現代では到底つくれない良作だった。しかし一方 随分、冷めた目でも観...
人殺し
日本人が本作を観て過去の反省を活かすならば、今この瞬間のヒューマニズムを見失わないようにしなければならない
映画としての出来映えは素晴らしい
撮影、演出、美術、豪華俳優陣の熱演
どれもこれも文句のつけ様はない
本作の舞台は太平洋戦争の末期の満州
あれから75年近く時は流れた
21世紀の現代では皮肉なことに中国人自身が、ウイグル人や少数民族、政治犯や法輪功などの宗教人をこのような収容所に閉じ込め、この映画以上の苛烈なことをなしているのだ
八路すなわち中国共産党がそれを自らしているのだ
それほどまでに時は流れたのだ
ヒューマニズムを見失わないことが人間の條件なのだ
この言葉は21世紀の今では、中国自身にこそ向けられるべき言葉だ
日本人が本作を観て過去の反省を活かすならば、今この瞬間のヒューマニズムを見失わないようにしなければならない
中国の逆コースの現実を見てみないふりをすること
中国のこのような不都合な姿を擁護するようなことこそ、本作の反省を活かしていないと言うべきだ
香港の若者達の姿は本作の収容所の特殊工人に重なって見えるはずだ
収容所の中国人のリーダーの王、もちろん中国共産党員だろう
彼は梶にこういう
人間は誰しも間違いは誰しもある、しかし決定的な瞬間の誤謬は犯罪だと
傍観していることは人道主義の仮面を被った殺人狂の仲間になることだと
恐ろしい皮肉だ
日本映画界が、世界に誇れる超ド級の骨太作品
最近の映画を観ていると直ぐに退屈して寝てしまう。
話のつまらなさ、くだらなさに加えて、出演者達の学芸会じみた演技の数々。何よりもその志しの低さはいかんともし難い。
「人間が人間を信用しなくてはいけない」
五味川純平原作。小林正樹監督による本作品には“その”高い志しの精神が溢れている。
だから1部・2部併せて3時間半もの長丁場なのにあっという間に過ぎて行ってしまう。
確か小学生の頃にテレビで断片的に観て以来だから、実質的には初見と言ってもよいかな。
この映画の主人公仲代達矢演じる《梶》とゆうキャラクターは、あくまでも“理想的”な人物像でしか無いと思う。
特に当時の戦時下に於いて、多少なりとも上層部に対して物言いが言えるとはとても考え難い。
寧ろ「君はヒューマニズムの列車に乗っていろ…俺は俺流にやる!」と言い放つ、山村聰の方が現実味に近い。
“理想像”であるだけに、廻りから裏切られた時の苦しみは計り知れない。
それは全て、“進め一億火の玉だ”“欲しがりません勝つまでは”等のスローガンを信じたばかりに、悲劇に向かって突き進んだ過去の反省に基づいていると言えないだろうか?。
《梶》とゆうキャラクターは、2度と悲劇を繰り返してはいけない為に生まれたキャラクターであり、我々日本人1人々々に架せられた“足枷”なのだ…と。
出演者達の素晴らしさは今更言うのも野暮だろう。
特に素晴らしいのは、何かにつけて事なかれ主義で責任逃れをする所長役の三島雅夫に、娼婦館の女主人の淡島千景。更には憲兵役の安部徹に古屋役の三井弘次。
これに中国人役の宮口精二に、班長役の小沢栄太郎。。勿論相棒役となる山村聰に奥さん役の新珠三千代等々、挙げだしたらきりがない。
東野英治郎や佐田啓二を始め、名だたる名優達が単なる脇役出演なんだから、その凄さが分かって貰える筈です。
日本映画界が、世界に誇れる超ド級の骨太作品です。
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