劇場公開日 2000年4月29日

「【虚飾に満ちた人生からの様々な形の自己解放を描き出す。サム・メンデス監督の剛腕が世界に知れ渡った記念碑的コミカル&シニカル&アイロニー作品でもある。】」アメリカン・ビューティー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【虚飾に満ちた人生からの様々な形の自己解放を描き出す。サム・メンデス監督の剛腕が世界に知れ渡った記念碑的コミカル&シニカル&アイロニー作品でもある。】

2020年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

怖い

知的

難しい

 アメリカン・ビューティー。
 全く知らなかったがアメリカ産の薔薇の名前だそうである。

 劇中、頻繁に表れる”アメリカン・ビューティー”の真っ赤な花弁。

 当時の資料を読み直すと、”アメリカ人の夢は、テニスコートの半分もあるような前庭に、この紅い薔薇を植えて、朝食の食卓に一輪飾る事”というコメントがあった・・・。成程。

 又、スティーブン・スピルバーグが”一切、リライトせず、この脚本(アラン・ポール)通りに映画にするように”と指示したとも書いてある・・。

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 42歳の冴えない主人公、レスターを演じたケビン・スペイシーはこの役を初めての ”待望の普通の男” だったと当時言っている。(いやあ、普通の男ではないだろう!と軽く突っ込む。)

 妻キャロリン(アネット・ベニング)と娘ジェーンから人生の敗北者として軽んじられているレスターは娘ジェーンの友人、アンジェラに一目惚れ(おいおい・・)をしたことで、リストラ対象になっていた会社を自分の意思で辞め、いきなり体を鍛え始める。(アンジェラの言葉がきっかけ・・)

 そして、彼の娘ジェーンを主に彼らの姿をビデオに収める隣家の息子リッキー。そして、彼を監視する父フィッツ大佐。
 だが、リッキーは時折、レスターに最上のマリファナを売っている・・。

ー個人的には、当初不気味に見えたこの家庭が、一番まともだったと思う・・。元海兵大佐フィッツの口癖は”人間は世の中のルールに従って生きるべきだ!”である。-

 そして、レスターが念願叶って、アンジェラと結ばれようとした時にアンジェラの口から出た言葉・・・。(どこまでも、シニカルであるなあ。)

 [劇中様々な形で出て来る”赤色”]
 ・彼らの家の赤い扉であったり、
 ・開き直って会社を辞めて、レスターが働き始めたハンバーガー屋のユニフォームであったり、
 ・レスターが憧れていたスポーツカー:ファイヤーバードの色であったり、
 ・そして、ラストの・・・

<虚飾に満ちた人々の生き方を、とことんコミカル&シニカル&アイロニー風味で描き出したサム・メンデス監督の記念碑的作品。
 エンドロールで流れる、エリオット・スミスの美しいビートルズカバーの”BECAUSE”が、今作の余韻に浸らせてくれた作品でもある。>

<2000年5月 劇場にて鑑賞>

<2020年4月11日 DVDにて再鑑賞>

NOBU