にっぽんぱらだいすのレビュー・感想・評価
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「お腹減っちゃった…」
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売春防止法による赤線廃止を描いた作品としては、溝口健二の『赤線地帯』が広く名作として知られているが、前田陽一監督によるデビュー作のこの作品も、溝口作品と堂々と渡り合う程の秀作です。
戦後GHQを相手に、疎開していた赤線の娼婦達を従軍慰安婦の様に働かせて稼ぐ男に加東大介。
その息子で、父親の仕事を嫌う引き揚げ兵に長門裕之。
彼が恋していた娘で、ウブな生娘からやがて花街一のミス花魁にまでなるのが香山美子。
その香山を水揚げする材木問屋の旦那には益田喜頓。
更には女子大生ながら、夜の女を取材する目的で花街へ入るのが加賀まりこと言った顔ぶれ。
他にも終盤で香山に入れ込んだ男達を取材するジャーナリストとして菅井一郎が登場。赤線最後の日に於ける彼の演説等は、新劇俳優である菅井一郎らしい演劇的な場面。
益田の妻役の浦辺粂子の考え方や、やはり香山に入れ込む学生勝呂誉等々。
遂には父親の仕事を嫌っていた長門が後を継ぎ…と。赤線は廃止されたが、新たに生まれた《トルコ風呂》に移行する経営側の強かさに対しては、より良い条件に移る女達の逞しさ。
その中にあって、男達に愛され。自らも1対1で彼等と接していた際には“恋人”でいようと努めた女の、時代に取り残された悲しい想い…。
「お腹減っちゃった…」
その一言で全てを観客に伝える名台詞で、夜に生きるの女の悲しく儚い部分が浮き上がります。
山本直純による軽快な音楽が、作品当時の時代色と共に、喜劇性の中に潜む愚かさを際だたせる。
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