劇場公開日 1985年9月14日

「志穂美さんの魅力がほとばしる… はずだったんだけど、なんか、惜しい。」二代目はクリスチャン とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0志穂美さんの魅力がほとばしる… はずだったんだけど、なんか、惜しい。

2021年9月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

笑える

単純

萌える

演劇界で飛ぶ鳥落とす勢いだったつかさんの脚本…。
何がしたかったんだ。
 奇抜な設定と、それを無理やりにでも納得させられてしまいそうな、マシンガンのように次から次に畳みかけるセリフ、大仰な、劇場らしい振りとセリフ回しと立ち回りが持ち味だったと認識していた。
 『蒲田行進曲』の映画化では、そのつかさんの舞台の常連の風間さん、平田さんを中心に据え、銀幕の女優・松坂さんを添えることで、舞台の雰囲気を持ち込みつつ、見事なバランスをとっていた。

だから、「クリスチャンのシスターが、やくざに」という、一見、突飛な設定も、つかさんならと期待を膨らませる要素なのに。
 でも、順番が悪かったよ。
 志穂美さんのファンだから、無茶苦茶身びいきしたとしても、『セーラー服と機関銃』の、柳の下のドジョウを狙ったように見えてしまう。
 かつ、往年の仁侠映画の焼き直し。

 志穂美さんを巡る恋のドタバタ。アクション女優として際立っていらしたから、あんな演技を見られるのも楽しい。岩城さんとのからみは当然として、柄本さんとのからみ・間の微妙な合い方が新鮮。
 けれど、後半、殴り込みにいくまでのプロセスが…。
 シリアスの混ぜ方が…。
 役者さんの演技で見せてくれるが、もう少し何とかならなかったのか。それでも整合性があればいいのだけれども、不発。
 シスターだから、震えながら暴れるというのは理屈が通っているんだけれども、それにしちゃ殺陣が決まりすぎる。
 殺陣が決まる唯一無二のアクション女優・志穂美さんを見せたいのなら、もう少し設定替えてほしかった。それこそ、よくある話だが、昔悪だったけれど、改心していたのが、たまりにたまって…とか。せめて、アクションにコメディを取り入れられる、ジャッキー・チェン氏が行うようなアクション演出できる人がいれば、つかさんの設定を、志穂美さんで活かせたのだろうが、不発。

 映画の脚本として制作されたものは舞台の脚本。しょうがなく、監督たちが手を入れたけれど、それに対してつかさんは怒ったとか(Wikiより)。
 だったら、初めから”映画”の脚本を作ればいいのに。無責任。
 つかさんの良さを全く理解しないで、任侠物っぽくすれば、そこにギャグを入れればとインスタント的な発想なのだろうな。(笑)をとるって、泣かすより難しいって聞いたことがあるけれど、(笑)を簡単に考えていたんだろうな。

志穂美さんのいろいろな表情・演技・アクションを見られる盛りだくさんな映画。でも、詰め込みすぎて、活かす演出でもなくて、残念な映画になってしまっている。

それでも、志穂美さんはじめ、蟹江氏・北大路氏だけでなく、すべての役者さんが、きっちり”らしさ”を決めてくださる。

むしゃくしゃしていて、スカッとしたいとき、ツッコミ入れながら肩の力も抜けてカタルシスを得るというのが正しい鑑賞法だと思っています。

とみいじょん