母波
劇場公開日:1953年4月22日
解説
川口松太郎の『平凡』連載原作を新人田辺朝二(大映助監督)が脚色、「魚河岸の石松」の小石栄一が監督した。撮影、音楽にはそれぞれ「現代処女」の峰重義、「天城の決闘」の安倍盛があたっている。「総理大臣の恋文」の三益愛子、「決闘五分前」の木村三津子、「十代の性典」の千田是也、南田洋子、「女性の声」の三宅邦子などの池箏曲の宮城道雄、テイチク歌手の菅原都々子が特別出演している。
1953年製作/79分/日本
劇場公開日:1953年4月22日
ストーリー
性格のちがいで吉田健造との結婚生活に破れた橋口千賀は、幼い娘玲子をまもって自転車預り業やら鉄くず拾い、女土方やら、恥も外聞もなかった。一方健造は梨枝子という聰明な後添いを得、社会的にもとんとん拍子に開運してゆくが、いつか玲子に一人前の生活をさせて、その健造を見返そうというのが、千賀のねがいである。血の出るような貯金で開業した屋台のそばやが当り、小料理屋、さらに際どい商売を重ねて彼女は今や賀春荘なる大割烹旅館の女主人であった。美しい女学生に成長した玲子のために贅沢な居室を調え、彼女はひとり悦に入るが、玲子はたのしまない。というのも千賀の商売ぶりがあまりにあくどく、旅館内には猥雑な空気がみなぎっているからで--彼女はいつか自宅よりクラスメート植松静子の家で琴の勉強や宿題をするようになった。植松家の隣りに、はからずも健造の邸があった。宮城先生を琴の共通の師とする梨枝子は、折にふれ二人の女学生をまねいたが、やがて玲子は教養ある主人健造を父と見識る。わが家の乱痴気さわぎに引かえ、吉田家の知的なものしずかな雰囲気は、娘ごころにかなった。宮城門下の温習会で梨枝子とたのしげに合奏する玲子の姿に、千賀は母としてたたきのめされた。そのしあわせを念じて玲子にいやがらせをし、彼女が父のもとにはしったのを見とどけて、賀春荘を焼き消息をたった。--が、浮浪中を警察に保護検束され、引取りにあらわれた玲子は、泣きながらやはり彼女を母、と呼ぶのであった。