「髭を剃るのは美術助手のアイデア」夏の庭 The Friends 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
髭を剃るのは美術助手のアイデア
髭を剃るのは、美術助手のアイデアだった記憶。
田中陽造さんのホンに呪縛される相米さん、
一方、シナリオに書かれてなかった上記のシーンや、
ロケセットの飾りは新米の意見を柔軟に採用する監督だった。
いろんな思い出がつまった作品だ。
震災前の神戸、
演出部制作部美術部はマンションで合宿、
相米さんはホテル嫌いなので民家を借りて宿泊。
ロケハンから撮影終了まで、半年弱は滞在しただろうか。
生と死、弔う蘇る、
傷だらけ、ハアハア(成長とか、
レベルアップとか、
上手くこなそうとすると、
キャストもスタッフも相米さんから、
NGをくらう、
なのでここは、かっこわるいハアハア)、
水、祭り、花火、口笛等々、
珍しく本作はわかりやすく各レイヤーが、
前面に押し出されている、
担任の先生が見落としていた事を、
子どもたちが、
目と鼻と手触りで、
誰に言われる事もなく、
気持ちを、身体を、手繰り寄せていく、
そして、
ウォーキングデッドマンを〈復活〉させる、
あろうかことか、まさかの、
世界の仕組み、戦争まで・・・
マジか相米さん、
いろいろと質問して叱られた記憶も、
いい夏のおもいでだ。
4Kリマスター監修はカメラマンのFさん、
当時は撮影助手、
撮影機材を解体、修理、
回転するレインリフレクターを自作、
英語も話すスーパーマンだ、
なので、
淡島、三國、相米、篠田、熊谷、石田の、
現場の息吹が感じられるリマスター版は必見やで~。
【蛇足】
三國さんとも色々と雑談をさせて頂いたのも懐かしい思い出だ。
自分の出身が大阪市住之江区と話すと、
三國さんは戦前の少しの間、住之江区の近くで働いていたそうだ。
驚いた。
子どもの頃、そこの敷地でよく草野球をしていた場所だった。
おっしゃる通り、素晴らしい監督でしたよね。今の時代ならあのような環境で撮影することなど、誰も考えないだろうし考えたとしても誰も受けてくれないでしょうね。
スタッフが宿泊した3DKのマンションは、当時、周辺の住人から新興宗教だと疑われていました笑。
そんな状況で創り上げた映画ですが、あれから何十年経っても忘れられない作品です。あんなに苦労したにもかかわらず、いまだに最高の監督を1人だけ選べと言われたら、間違い無く相米慎二と言ってしまいます。
当時、監督は若くて貧乏だった若手のスタッフ達にも平気で「おごれよ」って言ってきました。そして、貧乏な居酒屋で呑むと本当に奢られていました。しかし呑みながら「東京に戻ったら、三倍返しな」と笑いながら言っていて、実際に東京に戻るとふぐ料理を奢ってくれました。
偉い人に媚びることも、貧乏な若手を無視することも無く、アルバイトであろうが、全員の名前を記憶して現場では名前で呼んでいました。
これぞ、映画監督って方でした。
そんな優しさを持つ監督でしたから、スタッフは監督のために、作品のために精一杯働くことが出来たのだと思います。
相米監督は言うことを聞かせるのではなく、常に様々なアイディアをスタッフに要求していました。取材し考えて監督にプレゼンし、それを喜んでもらえたときは本当に嬉しかったものです。
同じく鬼籍に入られた撮影監督、照明技師のお二方も映画屋の鏡でした。
また、相米組のような映画に参加したいと願っていますが、あのような無茶な働き方は勿論できるはずも無いので、今後映画界に入ってくる新たな人材達があのような経験ができるように影で頑張り続けます。