泥の河のレビュー・感想・評価
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とてもいい映画です
第二次世界大戦が終わり、復興しつつある大阪の片隅に、まだまだ戦後を引きずって、ひっそりと生きている人たちの物語です。
田村高廣の、飯屋の親父が素晴らしい。戦後のドサクサをどうやって生き延びて来たか明確には知らされませんが、子供たちに見せる手品なども、彼が生きるためにどっかでやっていたイカサマ芸のようにも見え、今の家族も、一体どんないきさつで家族になったのかと、いろんなことを考えさせられます。
廓舟で家族を養う加賀まりこの姿も、哀れさと色っぽさが同居します。こんな時代もあって、今の日本があるんだよねと、しみじみ思わせる名作です。今のこのおかしな時代に、この映画をリバイバル上映された方々の見識に、拍手を送りたいです。
悲しい
朝鮮動乱の新特需を足場に高度経済成長へと向かおうとしていた昭和三十一年。河っぷちの食堂に毎日立ち寄っていた荷車のオッチャンが事故で死んだ。ある朝、食堂の息子、信雄は置き去りにされた荷車から鉄屑を盗もうとしていた少年、喜一に出会った。喜一は、対岸に繋がれているみすぼらしい舟に住んでおり、信雄は銀子という優しい姉にも会った。信雄の父、晋平は、夜、あの舟に行ってはいけないという。しかし、父母は姉弟を夕食に呼んで、暖かくもてなした。楽しみにしていた天神祭りがきた。初めてお金を持って祭りに出た信雄は人込みでそれを落としてしまう。しょげた信雄を楽しませようと喜一は強引に船の家に誘った。泥の河に突きさした竹箒に、宝物の蟹の巣があった。喜一はランプの油に蟹をつけ、火をつけた。蟹は舟べりを逃げた。蟹を追った信雄は窓から喜一の母の姿を見た。裸の男の背が暗がりに動いていた。次の日、喜一の舟は岸を離れた。「きっちゃーん!」と呼びながら追い続けた信雄は、悲しみの感情をはじめて自分の人生に結びつけたのである。船は何十年後かの繁栄と絶望とを象徴するように、ビルの暗い谷間に消えていく。
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