「明るいドラえもん映画」映画ドラえもん のび太の南海大冒険 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
明るいドラえもん映画
藤子不二雄没後初の劇場版作品ということであんまり評判は良くないが、個人的にはそんなに悪い作品でもなかったな…という印象。
「宝さがし地図」で偶然にも宝島を発見したのび太たちは、便利な移動用ひみつ道具に頼ることなく海賊船一つで宝島を目指す。
しかし毎度お馴染み時空の歪みが発生し、のび太一行を乗せた海賊船は17世紀へ。そこで展開されるサスペンス的展開も『日本誕生』同様「未来の時空犯罪者が黒幕」というお馴染みの顛末を迎える。
既視感に溢れているといえばそれまでなのだが、従来までのドラえもん映画に類を見ない冒険活劇としての爽快感があった。藤子不二雄が関わった作品は正統派SFとしての側面が強く『魔界大冒険』『雲の王国』のような暗澹たる描写が主旋律を成す作品が多かった。
他方本作の基調を成しているのは活劇それ自体の面白さであり、南海の晴れ渡った青空をバックに繰り広げられる船上戦や南の島でのサバイバル生活にはドラえもん映画には珍しい新鮮な明るさが感じられた。
「夢たしかめ機」という『ドラえもん』きっての無能ひみつ道具が終盤のピンチで思わぬ活躍をするという原始的滑稽さや、ジャイアンの恋というありそうでなかった物語の系列があるのもいい。
藤子不二雄亡き後、どういう形であれ変容を迫られたドラえもん映画がこうしたリセットを試みたという実験性を高く評価したい。とはいえこれらを総括して「ドラえもん映画の幼稚化」と糾弾することもできるわけだから、一長一短といったところか。
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