「「日本のいちばん長い日」の原形は本作において既に芽生えつつあったのだ」どぶ鼠作戦 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
「日本のいちばん長い日」の原形は本作において既に芽生えつつあったのだ
独立愚連隊シリーズは8作あることになっている
1. 1959年10月 独立愚連隊
2. 1960年10月 独立愚連隊西へ
3. 1962年6月 どぶ鼠作戦(本作)
4. 1962.年10月 やま猫作戦
5. 1963年7月 独立機関銃隊未だ射撃中
6. 1963年9月 のら犬作戦
7. 1964年4月 蟻地獄作戦
8. 1965年9月 血と砂
その内、岡本喜八監督作は1、2、3、8の作品
どれも痛快戦争アクションの娯楽作だが、左翼の皆さんには受けが良くない
中国共産党の軍隊八路軍が敵であることが我慢ならないらしい
娯楽作品までイデオロギーを持ち込んで批判するなんてどうかしている
第一作から人気がでて尻上がりにヒット
本作は大ヒットになったという
大衆は圧倒的に支持したのだ
内容は前作よりより見応えがあるように、複雑に込み入って組み上げられているのだが、それが却って前作のような問題無用の痛快さが足らないと思わせてしまうのは確かだ
物語は新任の若手参謀が八路軍に拉致されてしまう
これを佐藤充が演じる特務機関員が、軍法会議に送られる途中の素行不良の兵隊を臨時でリクルートして救出に向かうというもの
そこに身代金目当ての馬賊が絡むというもの
小気味よいカット割でサクサクと進む
土手から飛び降りると、その次には馬に跨がって駆け出しているカット割などは痺れるような映画的快感を味わえる
なんとなくストーリーの骨格は前作と似ているのだが、観ている限りはそう似ているとも感じ無い
佐藤充がリーダーとして縦横無尽に活躍するからで、自由きままな独立愚連隊という性格は本作の方が強い
娯楽作品ではあるが、しっかりと反戦のメッセージは発している
負傷して捕らわれている参謀に、日本に留学して医学を学んだという中国人が、参謀が自殺しようとするのを止めてこんな事をいう
「くどいようですが、あなたは立派に死を選んだとは思いませんよ
生きて帰っても、日本軍軍法会議で銃殺、とまでいかなくても自殺を強要する
貴方は卑怯者と言われるのが怖いんだ!
それよりも敵の真っ只中で潔く死のう
貴方には死に方を綺麗に見せようという虚栄心しかないんだ!」
図星を突かれて参謀は布団を被って顔を隠してしまうのだ
これこそ、「日本のいちばん長い日」で本土決戦を叫ぶ青年将校達の正体だ
「日本のいちばん長い日」の原形は本作において既に芽生えつつあったのだ
これが反戦メッセージが無いと批判されるべき映画といるとは絶対に思えない
それは中国共産党への盲目的な忠誠心でしかない
そんな考えが却って日本を戦争に追いやっていると、それこそが批判されるべき態度だ