「荷台で読む漫画を追う主人公」トキワ荘の青春 K・Mさんの映画レビュー(感想・評価)
荷台で読む漫画を追う主人公
自分は昭和40年代前半生まれで、子どもの頃からマンガを描いていたしトキワ荘の面々も観る前からファンとして存じ上げています。
市川準監督作品はいつも、いい雰囲気だとは思いますが映画的に面白いと思ったことはありません。退屈だからです。
それを踏まえて云えば、予想以上にいい映画でした。
観客を選ぶし、おことわり通りフィクションであります。
ですが、それで良かったのだと思う。
この不親切な切り口と羅列にしか見えない構成が、それら改善すれば面白くなるだろう余地よりも観る人をその場へいざないたい監督の拘りを成功させている。
「勉強しているねえ…描こう描こう!」
編集の丸山氏と赤塚先生のシーンが最高に好きです。
石森先生の後押しといい、誰でも浮上するきっかけが欲しい。そこを素直に顔を上げた者だけが前を歩けるのではないか。
あと、若き藤子先生たちを〈自分よりも手塚先生しか見ていない事〉を解った上で相手をするテラさんのやるせない表情を演じ切った本木氏を評価したい。
テラさんも森安氏も浮上してほしかったなあ。
歳を経ると、しみじみ感じる。
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