劇場公開日 2021年2月12日

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「【”人が人に対して優しい心を持っていた時代” 梁山泊の様なオンボロ”トキワ荘”から昭和の名作漫画の数々は生み出された。そして、皆、夢を持ち、優しき心を持っていた・・。 】」トキワ荘の青春 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”人が人に対して優しい心を持っていた時代” 梁山泊の様なオンボロ”トキワ荘”から昭和の名作漫画の数々は生み出された。そして、皆、夢を持ち、優しき心を持っていた・・。 】

2021年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

ー デジタルリマスター版という事で、冒頭にとても素敵なコメントを本木雅弘さんが観る側に優しい笑顔を浮かべながら、話しかける。
 現況を踏まえた、とても優しい言葉を・・。ー

■感想
・本木雅弘さんが演じたトキワ荘の兄貴的な立ち位置にいた寺田ヒロオの、自分の書く漫画が時流に乗り遅れていく事を自覚しながも、自らの漫画道を究めようとする姿。
そして、大好きな野球を草野球していた子供に土手で投げてあげるラストシーン。
ー 本木さんの演技が、どこまでも抑制した優しさを湛えている。ー

・トキワ荘から売れっ子になった手塚治虫が、引っ越すシーン。そして、その後の日本漫画を牽引する事になる、若き漫画家の卵たちが次々にトキワ荘に引っ越ししてくるシーン。
石ノ森章太郎、藤子不二雄ペア、赤塚不二夫・・。
ー 滔滔たるメンバーであるが、淡々と描かれる。カット割りも短い。当時のノンビリとした雰囲気が漂ってくるようだ。ー

◆沁みたシーン
・行き詰まり、編集者(きたろう)から、”誰かの模倣の漫画だ、才能がない。”と言われてしまった赤塚不二夫。その編集者が、売れっ子になっていた石ノ森章太郎の原画を取りにトキワ荘に来た際に、さりげなく”彼、こういうの、意外と得意なんですよ・・”とアシスタントとしても使っていた赤塚の原画を見せるシーン。
そして、連載が決まった赤塚が石ノ森の部屋の前で、蹲りながら”有難う・・”と小声でお礼を言う姿。
ー 何気なく、お互いの状況をトキワ荘の住人達はみていたのであろう。ー

・皆で、夕食を取っている時に、売れっ子になっていた石ノ森章太郎と藤子不二雄が編集者達に呼び出され、赤塚も手伝いに・・と席を外し、最後、寺田と森安だけが、部屋に残るシーン。
ー 残酷なシーンをさり気なく取る市川準監督の手腕。ー

・鈴木はアニメーションの道を選び、森安は夢半ばにして”誰にも言わずに”トキワ荘を去り、そして寺田も・・。ー

<過酷な生き残り状況なのに、トキワ荘の住人達は、常に他の住人達を見守っている。その心優しき梁山泊のような所から、戦後の数々の漫画が生み出されていったのだ。
 市川準監督が、淡々としたトーンで、熱き漫画を突き進む青年たちの成功と挫折を描いた作品。>

<2021年5月8日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU