「大ヒット作の「新幹線大爆破」との公開の間隔が2ヶ月しか離れていない為による、パクリ疑惑なんてとんでもありません 実は隠れた傑作です」動脈列島 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
大ヒット作の「新幹線大爆破」との公開の間隔が2ヶ月しか離れていない為による、パクリ疑惑なんてとんでもありません 実は隠れた傑作です
動脈列島
1975年9月6日公開
東宝配給、カラー作品
原作は前年1974年刊行の清水一行の小説
新幹線がとりあげられる映画としてほかに有名な「新幹線大爆破」があります
そちらは1975年7月5日公開の東映カラー作品、高倉健主演で、減速禁止爆弾でスピードの元ネタにもなった作品で2025年に樋口真嗣監督がリメイクした方はそちらになります
本作と「新幹線大爆破」は公開が
わずか2ヶ月しかはなれていません
本作の方が後の公開になります
かと言って本作は「新幹線大爆破」のパクリではありません
そもそも「新幹線大爆破」の興行成功を受けてから製作していたのでは2ヶ月遅れで公開なんてできっこありません
東海道新幹線が開通して10年を経て奇しくも同時期に新幹線をモチーフに映画が撮られたということです
新幹線が動脈のように社会インフラとして無くてはならない存在になり、同時に、騒音振動公害という影の部分が見えてきたことによるものでしょう
内容は確かに似てます
新幹線を止めろという脅迫状が発見され、そこに書かれた通り、豊橋駅で新幹線の脱線事故がおきたところから捜査が始まるというものです
新幹線大爆破との違いは、本作では近藤正臣が演じる犯人の動機が新幹線の騒音振動公害対策の不備であると明確にされていることです
「新幹線大爆破」の方では犯人の動機は最後まで明らかにされません
犯人と警察側のそれぞれの動きを描いていますが、本作では「新幹線大爆破」にあった運転指令の苦悩の描写はなく、国鉄首脳陣に纏められています
捜査本部長の田宮二郎の的確な指揮ぶりが中心に描かれます
模倣犯がでたらとの不安から国鉄の協力は得られ無かったのは東映の「新幹線大爆破」と同じですが、減速禁止爆弾では無いため爆弾を仕掛けられた新幹線車中の緊迫感と不安を描く必要がないため、車中セットシーンは殆どありません
つまりハラハラドキドキ感は、明らかに「新幹線大爆破」の方が大きく上回っています
世界各国で公開されたり、元ネタになったり、リメイクされるはずです
とは言え、本作も十分に面白く、観てがっかりするようなことはありません
クライマックスは手に汗を握る展開で見入っていまいます
犯人を助ける関根恵子も良いですが匿う梶芽衣子が素晴らしく印象に残ります
大ヒット作の「新幹線大爆破」との公開の間隔が離れていない為による、パクリ疑惑なんてとんでもありません
実は隠れた傑作です
名古屋新幹線訴訟
本作の前年1974年3月におきています
判決は1980年名古屋地裁、1985年名古屋高裁で原告側の慰謝料一人100万円の請求は認めてられましたが、騒音・振動の差止めは認められませんでした
翌1986年和議となり、国鉄は新幹線の沿線騒音を当面75ホン以下とするなど、騒音・振動の軽減を図ることや、住民への和解金の支払い、住居の移転補償、防音・防振工事の実施、公害を現状以上に悪化させないこととなりました
本作公開から11年後の事でした
上野大宮間の新幹線の低速運転はこの訴訟の影響によるものでしょう