「やっぱり、子どもの方がええのう」東京物語 shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱり、子どもの方がええのう
映画「東京物語」(小津安二郎監督)から。
東京で働いている子どもたちに会いに、20年ぶりに上京した老夫婦。
そこで待っていたのは、自分たちの生活が優先で、
久しぶりに会った両親をゆっくり歓迎する余裕のない子どもたち。
これが1953年、60年近く前に製作された映画と知り驚いた。
現在の私たちに警鐘を鳴らしている、と言っても過言ではない。
日本を代表すると言われている映画監督、小津安二郎さんは、
もしかしたら、予言者ではないだろうか、と思わせるほどだった。
それくらいに「家族、親子、兄弟姉妹、嫁姑」について、
「理想と現実」を組み合わせながら、高度成長期の激動を映し出している。
また、これから日本の問題になるであろう「高齢者の孤独感」も、
ラストシーンの「時計の音」と「一人になると、急に日が長くなりますよ」
の台詞だけで、私には充分に伝わってきた。
そんな多くのメモから、私が選んだのは、やっぱり親だなぁ・・と感じた
老夫婦の会話。
東京での10日間を振り返り「孫もおおきゅうなって」と妻、
「ウム・・よう昔から子どもより孫の方が可愛いと言うけぇど、
お前、どうじゃった?」と夫。
それに続けて「お父さんは?」「やっぱり、子どもの方がええのう」
「そうですなぁ」・・ただ、それだけの会話であった。
自分たちの突然の上京に、子どもたちに迷惑がられていたのも感じ、
なおかつ「大きくなって変わってしまった子どもたち」を実感しながら、
それでも「孫より子ども」と言い切った老夫婦に、拍手を送りたい。
映画「東京家族」(山田洋次監督)に続けて観ることをお薦めする。
小津安二郎監督の偉大さが、よりわかるはずだから。