「変化する其々の内面を描写した映画。」東京物語 コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)
変化する其々の内面を描写した映画。
内容は、上京した老夫婦と家族達の姿を通して、家族の絆、親と子、老いと死、人の一生等々を冷徹な客観的視点で表現した作品。小津安二郎の畳の目が見える様な畳上30cmの煽り撮影は物憂げで生活感のある表現に親近感を覚える。印象に残った言葉は『東京はのう、人が多過ぎるんぢゃ』正直な感想が人が変わってしまう根本的な生活の変化に違和感なく感じてしまう恐ろしさであったり。『親孝行したい時に親は無し、せれとて墓に蒲団も着せられず』分かるけど行動に移さず結果後悔してから気付く人の業みたいなモノが心象のスケッチとして描かれて素晴らしいと思うばかりです。最後の紀子の台詞『私ずるいんです。ずるいんです』は主観的ではなく客観的で観客其々が相剋する矛盾に静かに光を当てられた様でドキッとします。静かな物語の中にも其々のキャラクターの作り込みがしっかりしているので、メリハリがついて共感も誘う様で素晴らしいと感じます。戦後間も無く訪れた変化に翻弄される人々と社会の移り変わりと共に心模様の移り変わりの対比は、全く時代が変わった今でも胸に詰り言葉にならない物語です。正に名作と言われる所以です。
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