「市井の人の中に宿る神性の如きもの」東京物語 eichanさんの映画レビュー(感想・評価)
市井の人の中に宿る神性の如きもの
言わずと知れた世界映画史上屈指の傑作である。その所以は、私の記憶が正しければ、本作監督小津安二郎を敬愛して止まないドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースが評した、本作登場人物の何でもない市井の人々が尊く思われてくるという、秀逸な脚本と演出によるものではないかと思われる。監督の小津安二郎は、観客がこの映画を見て、少しでも親孝行をしようと思ってくれたら嬉しいと語ったそうだが、正に主題はそうなのであろう。しかしこの映画の真価は、観客にそういった感情を起こさせる作品構成そのものにあると言って良い。極めて日本的な作風であるが、世界映画ランキングが更新される度に上位を占め続けるということからしても、世界的普遍性も合わせ持っているのであろう。見終わった後に、人間の心の中の神性の如きものに触れた気がする映画である。
コメントする