「今の日本の原点として」東京裁判 keithKHさんの映画レビュー(感想・評価)
今の日本の原点として
毎年、照りつける夏の陽光が眩く蝉の声が喧しいこの季節になると、あの戦争を見つめ直し、あの戦争の持つ意味とその時代背景、そして戦後日本の社稷と経綸への道筋を、年に一度は確りと思い起こし、心に刻み直すべきではないかと思います。
戦前日本を清算し、戦後日本のパラダイムを決定づけた出発点は、良くも悪くもやはりいわゆる東京裁判、正式には極東国際軍事裁判でしょう。
本作は、内外の膨大な当時のニュースフィルム原本を収集・咀嚼して校正し、緻密に再編集して制作されており、妥協を許さぬ完全主義者にして、戦争の空虚な無意味さを訴え続けた名匠・小林正樹監督の渾身の名作であり、正にあの戦争の歴史を自分なりに検証し総括し再定義するには最適の作品といえます。
4時間半と非常に長いですが、再度全編を観通し、暫し沈思黙考してみました。
なぜ日本はあの戦争に突き進んだのか、一体誰が主導していったのか、そこに至る事情と確執は如何であったのか、一方で抑々”戦争犯罪“というものは何なのか、それを裁いた側の正当性は一体何に基づくのか。再見した今、胸に去来するのは、唯々虚しく愚かな壮大な悲劇と、その一方で組織と個の葛藤が臨界点に達した時の恐ろしくも酷い人間存在です。
憲法九条改正が論議され、集団的自衛権の在り様が話題となっている今、アニメ等のクールジャパンとその反面としての伝統的日本文化・倫理観が世界から称賛され注目されている今日、更にオリンピック開催を控えて一層のグローバルな活動・展開が期待されている昨今、この命題は、改めて一人の日本人として道義的に、常に一種の原罪として心底に意識しておかねばならないのではないかと思うしだいです。
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