東京オリンピックのレビュー・感想・評価
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今はなき、オリンピックに国中が夢中になれた時代の息吹を見事に伝える映像の数々
市川崑 総監督による1965年製作(170分)の日本映画。原題:Tokyo Olympiad、配給:東宝。
50年以上前なのに、超接近して撮った様に見える映像が新鮮でとても驚かされた。これ以降、数多くのスポーツ中継がなされた訳だが、選手と一緒にこれだけカメラが長時間走ってる様に見える映像は、初めて見た気もした。どうやって撮ったのだろうか?
日本人選手がメダルを獲得した競技が中心だろうと予想していたが、良い意味でハズれた。寧ろ、日本人に馴染みがない様な、砲丸投げ、ハンマー投げ、棒高跳び、競歩、近代5種等で闘う人たちの挙動に、大いなる好奇心で注目している様にも見えた。
著名だが、実際の姿は全く知らなかった、柔道無差別級の金メダリストのヘーシンク(オランダ)、マラソンのアベベ(エチオピア)、体操のチャスラフスカ(チェコスロバキア)等が闘う姿をしっかりと見えたのは収穫か。そして、何よりも熱心に夢中になって応援している日本人老若男女の方々の表情や姿が印象に残った。今はかなり薄れてしまったが、大勢の日本人が、海外のスポーツ選手達に対して素直な関心や大いなる好奇心を示した時代であったのだなあとの感慨を覚えた。
総監督市川崑、監修青木半治 、今日出海 、南部圭之助、 田畑政治 、竹田恒徳 、与謝野秀、脚本和田夏十 、白坂依志夫 、谷川俊太郎 、市川崑、企画オリンピック東京大会組織委員会、製作オリンピック東京大会組織委員会、プロデューサー田口助太郎、プロデューサー補佐
清藤純 、熊田朝男 、谷口千吉、撮影林田重男 、宮川一夫 、長野重一 、中村謹司 、田中正、
美術監督亀倉滋作、音楽監督黛敏郎、録音監督井上俊彦、録音アオイスタジオ、編集江原義夫、音楽演奏読売日本交響楽団、制作デスク宮子勝治 、大岡弘光、監督部細江英公 、亀田佐 日下部水棹 、前田博 、中村倍也 、錦織周二 、奥山長春 、柴田伸一 、渋谷昶子 、杉原文治 、富沢幸男 、山岸達児 、安岡章太郎、 吉田功、記録中井妙子、写真国際フォトマン・グループ、技術監督碧川道夫、撮影部伊藤義一 、松井公一 、三輪正 、中村誠二 、小川信一 、斎田昭彦 、瀬川浩 、潮田三代治 、山崎敏正 、山口益夫、照明部村瀬栄一 、中村栄志 、嶋昌彦、録音部加川友男 、水口保美 、田中雄二、編集部林昭則 、石川英夫 、松村清四郎、宣伝担当土屋太郎、協力防衛庁 、警視庁 、東京消防庁ナレーション、三国一朗、現像IMAGICA。
人間の祭典の記録
Amazon Prime Videoで鑑賞。
市川崑総監督の徹底したこだわりが炸裂したことで、「記録か芸術か?」の論争を巻き起こした長編記録映画の金字塔。
躍動する選手たちの肉体だけでなく、その心情をも掬い取ろうとするように迫るカメラ。切り取られていく人間模様…
スポーツそのものよりも、その種目を競技する人間にフォーカスしていて、迫真のドラマを観ているような感覚でした。
エンディングに示された言葉に、深く考えさせられました。
日本映画屈指の傑作
一体何が始まるんだと驚いてしまう冒頭部分の音楽。不安をあおるような・・そして競技が始まるまでに30分もかけている。この部分が重要でこの映画が何を表現したいのかを表明している。
競技が始まると時には超クローズアップで時には引いたカメラで。町や建物を映し、人々を映し、子供を映し、女を写し、天皇を映し。日本人を写し白人を映す。 この時代まだ黒人の観客はいない。時にはコミカルな、そして全体的には緊張感を漂う。まるで戦争映画のような音楽を使って競技を見せていく。この音楽の使い方が緊張感がありオリンピックという平和の祭典の影に戦争という裏テーマがあるのがわかるのである。
監督はあの手この手で映像を繋いで行く。
それぞれの競技の撮影の仕方が芸術的にすごい。スポーツの記録映画としては完全に失格。これは多分、日本国の発注であるからこういうものは作ってほしかっわけがないのだ。監督は大胆にも国の金を使って自分の作品を作ってしまった。映画ファンにとってはそれがそこはかとなく嬉しい。まず最初の 投擲競技なんか、どういうフォームで投げているのか全くわからない。バストアップでしか写してないのだ。しかし美術芸術的にはそれが優れている。映画全体を通してそのような哲学に貫かれており競技の説明をする気など一切感じられない。
途中で休憩をはさみ、少し選手の選手の個人的な話なんかを入れて間を取る。そしてまた競技に戻って延々と映し続ける・・・これでなんで飽きないのが不思議としか言いようがない。
そして3時間近い映画が終わった時には、ああ、この場面もあった、この競技もあった、と長かった映画のいい場面を振り返りながら見終えるのである。
戦争から19年後・・・というと若い人にはとんでもなく長い時間が経ったように思われるかもしれないがおっさんからするとあっという間なのだ。だから完全復活した街並みや元気な人々の笑顔、姿というのはそういうことを重ねて見れるんですね。そして今こういう世の中になって良かったという感動に包まれるのです。
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