劇場公開日 1965年3月20日

「日本映画屈指の傑作」東京オリンピック KIDO LOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日本映画屈指の傑作

2020年7月30日
PCから投稿

一体何が始まるんだと驚いてしまう冒頭部分の音楽。そして競技が始まるまでに30分もかけている。この部分が重要でこの映画が何を表現したいのかを表明している。
競技が始まると時には超クローズアップで時には引いたカメラで。町や建物を映し、人々を映し、子供を映し、女を写し、天皇を映し。日本人を写し白人を映す。 この時代まだ黒人の観客はいない。時にはコミカルな、そして全体的には緊張感を漂うまるで戦争映画のような音楽を使って協議を見せていく。この音楽の使い方が緊張感がありオリンピックという平和の祭典の影に戦争という裏テーマがあるのがわかるのである。
監督はあの手この手で映像を繋いで行く。
それぞれの競技の撮影の仕方が芸術的にすごい。スポーツの記録映画としては完全に失格。これは多分、日本国の発注であるからこういうものは作ってほしかっわけがないのだ。監督は大胆にも国の金を使って自分の作品を作ってしまった。映画ファンにとってはそれがそこはかとなく嬉しい。まず最初の 投擲競技なんか、どういうフォームで投げているのか全くわからない。バストアップでしか写してないのだ。しかし美術芸術的にはそれが優れている。映画全体を通してそのような哲学に貫かれており競技の説明をする気など一切感じられない。
途中で休憩をはさみ、少し選手の選手の個人的な話なんかを入れて間を取る。そしてまた競技に戻って延々と映し続ける・・・これでなんで飽きないのが不思議としか言いようがない。
そして3時間近い映画が終わった時には、ああ、この場面もあった、この競技もあった、と長かった映画のいい場面を振り返りながら見終えるのである。
戦争から19年後・・・というと若い人にはとんでもなく長い時間が経ったように思われるかもしれないがおっさんからするとあっという間なのだ。だから完全復活した街並みや元気な人々の笑顔、姿というのはそういうことを重ねて見れるんですね。そして今こういう世の中になって良かったという感動に包まれるのです。

タンバラライ