劇場公開日 1959年7月1日

「夏は怪談 ジャパニーズホラーの源流 スタンダードを観ておくことは意味も意義もあることだと思います」東海道四谷怪談 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0夏は怪談 ジャパニーズホラーの源流 スタンダードを観ておくことは意味も意義もあることだと思います

2021年7月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

怪談と言えば夏
そして怪談と言えばお岩さん
そう四谷怪談です

江戸時代から、怪談ものの定番として芝居や落語など数多く取り上げられています

無論、映画も無数にあります
映画ならその中でも本作が決定版だと思います
日本映画オールタイムベストの一角にリストアップされる程なのですから

1959年の公開
当然、白黒と思ったらカラーで驚かされます

歌舞伎の筋書きを翻案して要領よくまとまっています
むしろこちらが今ではスタンダードとなっているかも知れません
演出も素晴らしく、カメラ、照明、美術、どれも一級品です

ジャパニーズホラー映画の源流は本作にあると思います

お岩さんの特殊メイクは現代の目からみても十分なクォリティーです

有名な名場面である、顔が腫れ上がって髪を梳くとボソッと抜けてしまう「髪梳き」、戸板の両面で女と男の亡霊が入れ替わる「戸板返し」がしっかりと映像化されています

伊右衛門の按摩男の宅悦を殺害するシーンでは、なんと腕が切断されて宙に舞うほどの強烈さも見せます
その映像クォリティーもなかなかのものでした

貞子も本作から連綿とつながっている伝統の延長線の上にあると納得できると思います

2021年の夏
もう直ぐ本当なら、隅田川花火大会
今年もコロナ禍で中止です

本作では伊右衛門がお岩に毒の入ったお茶を与えます
お茶に毒薬を入れた時、両国の花火が大きな音を響かせます
見事な演出でした

伊右衛門を演じた天知茂は惚れ惚れします
男の愛と欲、酷薄さと弱さ
それらが同時に存在する様を見事に演じています

ラストシーンは成仏していくお岩の美しいシーンです
まるで聖母マリアのピエタのような白い幻が昇天していくのです
呆然とするような美しいラストシーンです
観客の心までが浄化されていくものです
コッポラ監督が、「世界のオカルト映画の中で最高傑作だ」と言ったというのも頷けます
カタルシスがあります

長屋裏手の隠亡堀はいまの江東区の砂町辺りらしいです
オレンジ色のように見える堀の水は、本当は血の色だったそうですがフィルムの発色が上手くいかなかったそうです

夏は怪談
ジャパニーズホラーの源流
スタンダードを観ておくことは意味も意義もあることだと思います

あき240