電送人間のレビュー・感想・評価
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ドラエモンには敵わない
「美女と液体人間」を観たので変身3部作を観ることにしました、本作は第2弾。
ホラー要素は消えて事件もの、軍隊時代の卑劣な仲間への復讐殺人と人間のテレポーテションを組み合わせたSF犯罪映画。伝送後は生身に戻るようだし無敵になる訳でもない、送受信装置が必要だしどこへでも神出鬼没と言う訳でもないので凄さがあまり感じられない、研究室はともかく、電源もない倉庫や貨車で動かすのは無理だろう。相変わらず博士を出してもっともらしい説明をつけているが今の子が観たらドラエモンのどこでもドアの方が凄いと言うだろう。
時代描写は前作の進駐軍クラブ風から一転して軍国キャバレー、唐十郎らがやっていた金粉ショーまで持ち込んで話題作りとお色気サービスは踏襲、白川さんの必然性のないスリップ姿まで入れてるあたりはもうフォーマット。あの時代としては精いっぱいという気もするが今観るとやはりB級企画なのだろう。
マトリックスにつながるサイバーSF映画の始祖だというのは言い過ぎだろうか?
1958年の米国SF映画の名作「蠅男の恐怖」が元ネタ
蠅男のモチーフを省いて、電送人間のアイデアを殺人事件に流用したもの
電送装置のスキャンチェンバーのセットはそれの影響を受けているが、スキャンシーンの映像効果は独創的で素晴らしい出来映え
電送原理をなんとなく映像で納得させてしまう力がある
後年の宇宙大作戦での転送装置での転送シーンよりもクォリティーがある
むしろマトリックスにつながるサイバーSF映画の始祖だというのは言い過ぎだろうか?
前作の美女と液体人間よりは脚本がマシだが、まあ穴だらけ
それでも最後まで面白くみる事ができるのは、主演の当時トップスターの鶴田浩二の力が大きい
もともと本多猪四郎が撮るはずであったが、他の作品の遅延で手が回らず弟子の福田純に監督が回って来たとのこと
トップスターの鶴田浩二が駆け出しの福田純監督のそれも低予算の特撮映画に出演したのは、人間関係に依るものとのこと
公開は1960年だから60年安保で騒然とした世相の中だったわけで、軍国キャバレーを悪役の経営の店に設定して、秘密兵器の電送装置と組み合わせて、戦前の悪夢が蘇ることへの世論の反発という当時の時代性を脚本に反映させているところはなかなかで、脚本も全く駄目という訳ではない
超科学の説明としては戦時中の秘密兵器開発が由来という設定は、当時はナチの秘密兵器とかは洋画でも有りがちのモチーフ
1955年に原作が連載開始された鉄人28号も同じ
金粉ショーは007のゴールドフィンガーが有名だが、それより4年早い
軍国キャバレーって何だ(笑)
金粉塗った女性が出てくるとは思わなかった(笑)
さすが国賊の発想は違う(笑)
あのような国賊に須藤兵長の怒りは当たり前だ。
冒頭に現れた須藤兵長が不気味で無機質なしゃべり方、動かない口元とか面白い。
国を裏切って利益を得ようとした連中に天誅を加えるのだが、この電送人間を離れた土地に送るには送り先に受像機がなければ行き来ができない。
いきなり奇襲を掛ける訳でもないから、復讐のために無理やり使う方が面倒な気がする。
その辺を考えるとちょっと残念感が漂う。
復讐鬼をつくり出した人間の業
変身人間シリーズ第2作。
DVDで2回目の鑑賞。
電送装置を使って連続復讐殺人を犯す須藤元兵長と、主人公の新聞記者と刑事たちの攻防を描いた特撮スリラー。
主人公の鶴田浩二の存在感が渋い…。元々福田純監督が助監督時代から付き合いがあったそうで、それを知った田中友幸プロデューサーが本作が監督デビューとなった福田監督への餞のつもりで鶴田へ主演オファーした、と云う経緯のようです。
鶴田浩二は大スターでありながら、非常に面倒見の良い人物だったそうで、親交のある人や後輩の晴れ舞台となると、端役でもなんでも出演したそうです。スターならば毛嫌いしそうな特撮作品に出演したのも、そう云う事情があったみたいですねぇ…。いやはやありがたいことです(笑)
電送装置でのテレポーテーションの後遺症なのか、須藤の顔が爛れているのがめちゃくちゃ怖くて不気味でした…。
犯行時に須藤の体にテレビの走査線のようなノイズが走る、と云う細かい描写に、“特撮の神様”円谷英二特技監督の並々ならぬこだわりを感じました。
電送装置のつくり込みも大したものだなぁ、と…。ディテールの随所に“それっぽさ”が満載で、本当にテレポーテーションできそうなクォリティーだなと思いました。
光学合成を多用した特撮が堪能でき、技術の粋を結集してつくり上げたのであろう渾身の映像に息を呑むばかりでした。
だんだんと怪人じみて来る須藤ですが、内容を深読みするとすれば、そんな復讐鬼をつくり出した人間の業の深さを見詰めるべき作品となっているのではないかな、と…。
実際はどうかは分かりませんが、戦後の混乱のどさくさに紛れて、理不尽を被った人は数知れずいそうです…。須藤もそんな中のひとりではないでしょうか?
※鑑賞記録
2020/10/11:Amazonプライム・ビデオ(3回目)
復讐人間
東宝特撮1960年の作品。
「美女と液体人間」に続く、“変身人間シリーズ”の第2弾。
遊園地のお化け屋敷で白昼堂々、殺人事件が発生。犯人は、突然現れ忽然と姿を消したという…。
捜査を進める内、明らかになった犯人とは…
電送機を使ってテレポーテーションのように現れる“電送人間”。
電送される際は頭から徐々に消え、妖しい光を発し、身体にはノイズが走る。
CGも無い時代、光学撮影や合成など工夫を凝らした円谷特撮演出のユニークな映像表現や芸の細かさ!
設定や題材はSFだが、話自体は捜査モノもしくは復讐モノとなっている。
新聞記者と刑事が事件と犯人に迫っていく、優れたストーリー展開とは言い難いが、B級グルメ的な程好さ。
殺された人物たちには共通点があり。
犯行の動機は、終戦のどさくさの中で起きたある事件。
電送人間と言っても化け物のような怪人ではない。
電送機を出れば、生身の人間。
目的の為ならば関係ない他者をも殺める、心と身体に深い傷を負った哀しき復讐鬼…。
劇中に登場する旧日本軍モチーフのキャバレー。
実際にあったら、頭おかしそうだけど、何か面白そう。
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