転校生のレビュー・感想・評価
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転校生と転向性。転じて、生の好転
一夫が一美に、一美が一夫に入れ替わってしまい、しかしそれをきっかけに他者とその人生を知ることで成長していく青春物語。
身体が入れ替わってしまうきっかけが寺の階段からの転落であり、尾道の高低差のある街のよさを巧みに利用している。
本作は一夫と一美の二人が主人公ではあるが、一夫の成長ぶりが凄い。一夫は最初、悪ガキでしかなく、一美の勉強がとてもできるような大人ぶりに全く対抗できない。しかし身体が入れ替わることで、彼はこのおかしさな事態にも毅然と対応するー一美が引っ込み思案になるのとは反対だー。そして一夫は女性の身体性を茶化す対象ではなく理解することに努める。これにより一夫は大人へと成長し、一夫と一美は対等な人間になり、恋愛の成就へと発展するのである。だから彼らが島への逃避旅行で宿を共にしてもセックスには至らない。それはまだ彼らの身体が子どもだからでもあるが、精神は大人になったからでもある。
大人になった彼らは独り立ちするから別れる。別れに帰結するのが尾道三部作の特徴ではあるが、その別れが悲しみではなく晴れ晴れしさに感じれるのは、彼らが独りでも大丈夫だと確信できるからだろう。一夫と一美に幸あれ。そして再会してくれ。きっとできる。
古き良き映画
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尾美の火曜高校に小林が転校して来る。2人は幼馴染だった。
そしてちょっとした事故で階段から共に転落、体が入れ替わってしまう。
男は女の体での生活にもすぐに慣れ、それなりに振舞えるようになるが、
女はメソメソしまくりで男友達からもいじめられ始める。
そんな中、2人で逃避行で住之江まで行ったりする。
そしたらその後、また階段から転落して元に戻った。
共に行動するうちに、2人はお互いを好きになっていた。
そりゃなるわいな(場)
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徘徊型の映画なんやが、それなりに面白かった。
小林の演技が生きていて、女優魂の原点を見た気がした。
超久方ぶりに観て恐るべき先進性に驚嘆しました 単なるリリシズムの映画ではなかったのです
1982年公開
1981年「ねらわれた学園」の次の作品
本作の次が1983年の「時をかける少女」という順番です
大林宣彦監督が本格的にブレイクしたヒット作といえます
本作の「転校生」、「時をかける少女」、1985年の「さびしんぼう」と併せて、これら三作が「尾道三部作」と言われて有名です
因みに「新・尾道三部作」もあります
こちらは以下の作品です
1991年「ふたり」
1995年「あした」
1999年「あの、夏の日 - とんでろ じいちゃん」
大林宣彦監督のファンならもちろん全部観ているはずですね
ところがどっこい、本作と「あした」は視聴困難で、中古DVDが高値で売られています
何が問題なのかサッパリ分かりません
今日の目で観るとコンプライアンス的にマズいことがあるのでしょうか?
それでかどうか分かりませんが、本作は、大林宣彦監督のセルフリメイクで2007年に「転校生 -さよなら あなた-」が公開されています
但し舞台は尾道から長野市に変更されています
大林宣彦監督ならではのリリシズムが全編に溢れています
この作風が今では当然のように思い浮かべられるのですが、それまではどちらかというとキッチュでコミカルな映像作家というイメージでしたから、ずいぶんと作風が変わったと思ったものでした
本作を観ると自分自身の青春の思い出までが一気にフラッシュバックしてしまいます
白黒映像がリアルの記録
カラー映像が思い出の中
思い出こそ写真より何十倍も情報量が多いのです
尾道の光景は本作から話題になっていったのです
本作は作品のヒットと共に、尾道をまるでスターのように有名にした最初の作品なのです
そして超久方ぶりに観て恐るべき先進性に驚嘆しました
単なるリリシズムの映画ではなかったのです
それはLGBTについての問題提起です
本作はそれを40年も前に真っ正面から扱っていたのです
男の人格なのに、肉体は女
女の人格なのに、肉体は男
しかもそれがトランスしているのです
主人公達はそのことを周囲に気付かれないように苦労して生活することで強烈なストレスを毎日味わって生きていかねばならない人間なのです
本作とは、そういう映画であったのです
今こそ本作を観るべきです
LGBTを考える良い手始めだと思いました
さようなら、オレ。
真剣に見れば、男と女の性差を描いたファンタジーだろうが、古い価値観での男と女の違いを描いていると思う。
10回以上見て、ロケ地の尾道にも4回行った位好きな映画だったが、年老いた今この映画を見ても、心に訴えるものは余り無かった。 兎に角、
観光映画だ。二人の演技が古い価値観での男と女を良く描いていると思うが。
広島尾道なのに、東京訛での会話が違和感を覚えた。しかし、
(ここから、ネタバレ)
エンドロール前、別れを告げた後の一美の演技が心に訴える。
大林監督の少女に対する思いかなぁ。
さようなら、大林監督。
名作中の名作
山中恒さんの「おれがあいつであいつがおれで」が原作。
私にとっては男女入れ替わりものの元祖。
小林聡美さんも尾美としのりさんもこの映画が主演としての初めての作品かな。
トロイメライのメロディが心に残る。
【”お前は俺で、俺はお前なんだよ!” 第二次性徴期の男女が入れ替わりにより困惑する姿を小林聡美の女優根性と、尾美としのりのなよなよ演技が見事に表現した作品。近代邦画のジュブナイル映画の秀作。】
ー 或る年代以上の映画好きには、忘れ難き作品ではないだろうか・・。ー
■感想
1.作品構成の妙
・転校してきた斎藤一美と斎藤一夫が、神社の階段から転げ落ちるシーンまではモノクロで、階段下の前の踏切を電車が取り過ぎるシーンから、カラーに切り替わり、ラスト、再び二人が同じ階段で転げ落ちるシーンから、再びモノクロに変わる、印象的な色彩の使い方。
2.若き小林聡美さんと、尾美としのりさんの、振り切った演技及び異性を演じる表現力。
1)特に小林さん。年頃の女性で、頑張ったなあ‥。実際には、大変みたいだったけれど、あの頑張りが今の小林さんの女優としての確固たる地位を築いたのだ!と勝手に思っている。
そして、お二人とも現在でも、ドラマ、映画の第一線で活躍されている。稀有なことであろう。
2)入れ替わった二人の台詞
・一夫と入れ替わった一美:”あれって、時々、形が変わるのね・・。”
”生理って知っているよね・・”
ー 女性の身体は男の子には魔訶不思議なモノ。それを、作品の面白さに昇華させる大林監督の、技量。ー
3.故、大林宜彦監督ならではの、どこか懐かしさを感じる画。
背景に映る穏やかな瀬戸内海の風景が作品の風合に優しさを加味している。
<元に戻った二人が、お互いに距離を縮め、相手への素直な想いを口にし・・、そして一夫の父の栄転により二人が別れる、切ないバスのシーン。子供の頃にTVで今作を観た男には、沁みます・・。>
素晴らしい
かつてパロディ漫画を見たり、リメイク作でトークイベントに出たりした際に見返して以来10年以上ぶりだったためとても新鮮で面白い。冷静に見ると、尾見としのりがなよなよし過ぎで、冒頭の入れ替わる前の小林聡美と食い違う感じがする。小林聡美の暴れっぷりが痛快でかっこいい。太った子を蹴り倒してパンツを脱がせたり、黒板で数式をぐちゃぐちゃにしたり、一度やってみたい。
特に素晴らしかったのは尾見としのりと小林聡美が家出してフェリーに乗り込んでからのゆったりとした流れで、宴会の場面も最高なのだけど、これまで『ねらわれた学園』までの全部の場面を濃いインクで塗りつぶすような作風から、余白を活かすような、大林監督のステージが上がった感じがする。画面合成など特撮場面も、神社の階段くらいにとどめてぐっと地に足のついた演出で、ここからいよいよ快進撃が始まる。
大好きなオレ、大好きなアタシ、大好きな尾道、大好きな大林映画
大林宣彦監督1982年の作品。
言わずと知れた監督の代名詞、“尾道3部作”の第1作目。
今では“尾道3部作”と言われているが、当初はそんな予定は全く無く、たまたま故郷・尾道を舞台にし、たまたま『時をかける少女』『さびしんぼう』も同舞台となり、後にファンがそう呼んだもの。
それが大林監督の名高い代表作になるのだから面白い。
話は今更語る必要も無いが、
斉藤一夫と斉藤一美。
一字違いの幼稚園の幼馴染みが、一美の転校で中学で再会する。
親しげに接してくる一美に一夫はうんざり。
ある時、2人一緒に石段を転げ落ち、気付いたら、
俺(私)たち、入れ替わってるゥ~!?
原作(山中亘『おれがあいつであいつがおれで』)はあれど、邦画に於ける“男女入れ替わり映画”の原点。
言うまでもなく、かのメガヒット・アニメ映画にも多大な影響を。
「ある!」「ない!」、モミモミ、アレどうやって使うの!?…子供の下ネタみたいだが、この手の作品のあるある定番。
やはり面白いのは、入れ替わった後。
一夫は活発でクラスの人気者だったのに、急にオカマみたいにナヨナヨに。
一美はおしとやかだったのに、急に「オレ」「テメェ」口調のガサツな性格に。
周囲の怪訝な目は元より、問題は当人たち。
困惑、トラブル…あ~もうヤだヤだ!イヤよイヤよ!
尾身としのりの女の子演技。
でもやはりMVPは、本作で映画デビュー&初主演の小林聡美だろう。
今やベテランの彼女だが、何とチャーミング。時に16歳。
入れ替わる前の女の子演技、入れ替わってからの男の子演技。
当時まだまだ新人ながら、女の子と男の子の魅力を見事演じ分け、天晴れ!
勿論、尾身としのりのナヨナヨ演技も(笑)
でも本作、少々苦言もある。
入れ替わってから、そんなに目立つ振る舞いしたら周囲に過剰に怪しまれるやろ! ちょっとはそれらしく振る舞おうよ…。
その後一夫は一応それらしく振る舞ったりするが、一美はいつまでもメソメソメソメソ…。見てて少しイライラ。
だけど、これがもし入れ替わったらのリアル…なのかも。
そしてこれがまた映画の面白味なのでもある。
ただのファンタジー青春ドタバタコメディに非ず。
入れ替わって初めて気付く、異性の事。
それぞれ報告・相談していく内に、お互いの事を思いやるようになる。
異性への理解と、もう一つ…。
大林監督作品としてはどちらかと言うとおとなしめで、ヘンな色は出してないが、遊び心やユニークな演出も。
まず冒頭、入れ替わる前は白黒、入れ替わってからはカラー、ネタバレだが最後元に戻ったら再び白黒。何だかこれが非常に情緒さを感じさせる。と同時に、2人にとって忘れられない青春の色…。
入れ替わる石段落ちは“らしい”表現。
8ミリカメラ映像、クラシック音楽、名作映画ポスター…。
そして、わが故郷の尾道。
あの黄金色の海。
誰もが思い浮かべる坂道。
その美しさ!
名所巡りではなく、どれも素朴な風景。それがまた魅力。
もし自分も映画を撮る立場に居たら、我が故郷・福島県郡山市を舞台に魅力を捉えたいものだ。
ユニークな設定を、青春の悲喜こもごもと共に、ノスタルジックに。
尾道への愛を込めて。
大林監督心の映画。
最後にこう付け加えたい。
故郷を離れた少年は映画監督となり、故郷を舞台にあの不思議な体験を基にした映画を作った…。
「君の名は。」を観て以来、男女人格入れ替えがどこかで気になっている
「転校生」を30年前くらいに観たとき、あのシーンが妙に印象に残った。なにせ、思春期で成長期の肉体を持つ若い男女が〇〇してしまうのだ。そんな災難のような幸運のようなことつまり若い男女にとっては一大事!が起きてしまうためには、それなりにふたりの肉体に同時に大変なことが降りかからなければ成立しない。納得できない。説得力を持たせるために、映画としてどんなシーン絵が必要なのだろうか、と監督は思案したはずなのだ。(つづきはnote)https://note.com/daika/n/nf75acff62ba9?magazine_key=m8000cfeda611
野ばらに寄せて。
就職して広島に来た時に、最初に思ったのは「尾道に行かなくちゃ」。MTノンパワステの3HBを中古で買って千光寺に行きました。駐車場に車を置いてから、歩いた、歩いた。階段を下って登って、また下り。でも、あの石段らしき場所を見つける事は出来なくて、ロープーウェイ乗り場でお姉さんに尋ねたら、「斜面が違う」って言われました。きゃわいらしい丸字の案内付きの地図を書いてくれて「歩きんさい、すぐじゃけぇ」。これが結構、直ぐじゃ無い。しかも迷った。地図になっとらんやん、これ、何の落書き?なんて文句言っても始まらない。それでも、なんとかM天満宮に辿り着き。薄曇りの休日の夕方は、やや強めの雨に煙り始めてて。傘持って来て良かったよ、と思いながら、「入れ替わり」が起きたと思しき場所に立つと、思わず顔がにやけて来た。キモいよ、俺。
あれから、尾道には何度も行ったけど、雨ばかりに出くわす。駅南から東側や海岸沿いの道路なんかは、きれいに整備され、ラーメンが名物になってたりして人通りも増えた様な気がするけれど、千光寺に登って行く階段や、頭を擦りそうになる高架や渡り廊下は古びるばかりで、逆にほっとする。一昔前は、「大林宜彦が好きで尾道までやって来て、ここを歩いてる人もいるよね」、なんて考えながらアーケードを歩いたりしたけど、今はどうなんだろう。この街の風景と人が好きで、この街の物語を映画にして、日本中の人を笑かして泣かしてシンミリさせた、大林宣彦さんの事も、彼の作った映画も、いつか忘れ去られてしまうんでしょうけど。
俺は忘れません。本当に好きでした。
額縁に入れて飾っておかなければ腐ってしまうような、お芸術でも無く。普遍性のあるメッセージで人々に高説を垂れるでも無く。非日常であっても身の丈である事を忘れず。歩いて行ける野原に咲いた、目を引く原色のバラの花を見つけた様な気持ちになる、大林宣彦の映画を忘れません。でも、痴呆になったらゴメンなさい。
色んな人の作品の中に、大林宣彦を感じることは、今でもある。
きっとこれからも、フェイクを感じさせるチャンガラでポップなスタジオ取りの画だったり、あざといくらいに「何か」デフォルメした「人物を中心にした風景」だったり、そんなんを見ると、「大林的やなぁ」なんて事、言うんだと思う。
合掌
訃報・・・真っ先に思い出したのがこの転校生
公開当時は、股をさぐって「ない!」と叫ぶ女の子の予告編を見たものだから、てっきりオバカ青春コメディだとばかり思っていた。心の入れ替わりというファンタジー映画を土台とした、ノスタルジック映像満載の青春映画だったわけです。確かにエッチなシーン・・・上記の小林聡美の行動や尾美としのりが彼女にブラジャーをつけるシーンなど・・・も多かった。
モノクロフィルム映像から、カラーへと変わり、ラストもモノクロへと変化する構成。一夫が8mmカメラを持っていたりと、映画への愛情も現れている。一夫の家の壁には名画座のポスターもあり、『駅馬車』、『アパッチ砦』、『ラスト・シューティスト』と変わっていくほど西部劇好きだったことがわかる・・・本当?
最初に見たのはTVでしたが、その後にリバイバル上映を観た気がします(記憶はあやふや)。素敵な作品たちを残してくれた大林監督。ご冥福をお祈りします。
女の子の最後の姿が残す郷愁感
総合:90点
ストーリー: 80
キャスト: 95
演出: 90
ビジュアル: 75
音楽: 70
特別美男美女とかおしゃれなわけでもなく、変に洗練されていないどこにでもいそうな中学生だが、それなのに登場人物の魅力がとびきり高い。男女が入れ替わって違う性別になったのに、元の性別としての習慣が抜けない演技が素晴らしかった。特に小林聡美は上出来で、乱暴な言葉づかいが出たりスカートはいていても平気で足を開いたり、あるいは歩き方一つも男っぽくしたりと努力の跡が窺える。胸を出したりして本人は相当恥ずかしかったと後に語っているが、恥ずかしさを感じさせない自然な少年らしさを押し出している。最初は一夫をからかっていた強気な一美なのに、体が入れ替わった途端に弱気で女々しくなって、何とか立場を受け入れてしたたかに生きる一夫と立場が逆転しているのも面白い。特殊な状況に置かれた二人だけの悩みを通じて、純粋な気持ちでいつしか共感を育んでかけがえのない存在になっていく姿に引き込まれる。学校や家庭でのどこにでもある場面の一つ一つが感情いっぱいに描かれ、平凡になることなく充実している。本来有り得ない特異な話なはずなのに、今の若さを駆け抜けている新鮮な二人のせいで、この状況に違和感を感じることもなく楽しめた。
それは出演者に加えて、大林監督の手腕が見事に発揮されている部分もまた大きいだろう。大林宣彦監督はたいしたセットを作るわけでもないし素晴らしい活劇があるわけでもないが、ありふれた人物の微妙な心の動きや何気ない町の雰囲気を魅力的にする手腕に優れている。白黒映像に残る、精一杯追いかけてきてから振り返り、まるでそのまま何事もなかったかのごとくスキップしていく女の子の最後の姿の醸し出す郷愁感が何とも心に残る。
尾道という地方都市の使い方も素晴らしい。東京一極集中の時代に、広島の地方の小規模の港町のありふれた風景を効果的に使って、そこに魅力を発見して視聴者に伝えている。灯台下暗し、である。ありふれた田舎町の風景が、この映画のせいで特別な思い入れのある町に写り、監督の故郷への愛着が感じられる。
黒澤映画やアニメといった一部の例外を除いて、基本的に邦画の質は洋画に比べて低いと感じていた。しかしこの映画を見てから、邦画も捨てたもんじゃないと思い直した。この後続く彼の他の尾道シリーズも良作が揃っている。
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