天河伝説殺人事件のレビュー・感想・評価
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脚本と撮影とキャスティング、結果面白かったか
私はただの量産型・低価格タイプの日本のおっさんなので、映画作りに批評を加えるような資格も知識もありませんが、劇場に入って観てただ圧倒・満足して出てくる(良い)洋画体験と比べるとどうしても邦画はタイトルの4点がよく気になって観てしまいます。
本作は、
脚本:◯ 凄いとか緻密な展開では全くなく、観ていてアラや抜けも定常的に表れていますが、ストーリーに意外な(若干飛ばしに近いが)速さと推進力があり、私が邦画にブツブツ言いたくなる時のグダグタ感やナンジャコレ展開は感じませんでした。
撮影:△ まあ偉そうに言えば巨匠・市川監督作でありながら後期に典型的な”抑えた”カット割の画で、映像刺激少なめながら観やすい感じです。私は「幸福」(1981年)が大好きなので同じ事件ものとしてあれくらいでも良かったですが(でも本作でそうしたらまんま”金田一映画様式美”に昔がえりしまいますのでやめたのでしょうか)。
ただ、さすが本作は通常シーンの暗部もそれなり奥行きが見える上手い撮影をしていて、私がまたよく文句を言いたくなる「いつも暗くて細部よく分からんくて出演者も不健康そうか脂っぽい顔かのどちらか」ではありませんでしたが、それでも進行や心象に関係ない事務所や喫茶店まで暗いのにはやはり閉口です。私が昔(洋画エコ贔屓の偏見で)あまり邦画を優先して観てこなかった理由の一つです。
キャスティング:× 重厚な俳優陣を、それまでの各位のイメージを保ちつつちょっとずつ役柄上の立場や性格を変えて配していたので、全体としては結構楽しめました。大滝秀治の神主さんの立場が金田一映画完全そのままでしたが、物語の下支え役なのでまあ良し。
ただ財前直見は、本人は美しく演技も頑張っていたようでしたが、能の宗家の跡取りにはどうしても見えないし演出的にも何が本当にしたいのか、させたいのか最終画面まで宙ぶらりんな感じでした。取ってつけたように俄かに主人公を好きになってその後もなくまま終わるし。
そして最大の難点は、最重要である犯人役が初見から「まさかこの人じゃないよな、あまりにそれっぽいし歴代の犯人だし」と思わざるを得ないところ結局極めてありがちな理由でそのまま犯人だったこと。正直お歳的にもあの役は厳しく見えたが、主人公はほぼ一目惚れしてたとのこと。主演初めこれら女優お二人や脇役女優の方々も演技が良かったように思えただけに、却ってこの若ヒロイン・熟ヒロインのキャスティングには残念感を覚えました。
そして、
面白かったか:△ 上述の2キャスティングにもっと自然さや斬新さの起用があったら、◯だったと思います。
名探偵・浅見光彦、妖気の地を駆ける!
角川映画15周年記念作品第2弾。
DVDで鑑賞。
原作は既読です。
予告編やポスターのキャッチコピーにも書いてあった通り、金田一耕助シリーズの再来を目指したのでしょうが、非常にテンポが悪く、非常に退屈な物語になってしまっていました。油断すると寝てしまいそうになりました。
露骨に金田一耕助シリーズを意識し過ぎたせいもあるんじゃないでしょうか? 加藤武の役柄なんか、そのまんまですもんねぇ…。「第2弾製作決定!」のアナウンスが流れたものの、角川春樹の逮捕や配給収入の不良が重なって、立ち消えになってしまうと云う不運にも見舞われました。
しかし、天川村に漂う妖気と云うか、空気感や雰囲気を収めることには成功しているなと感じました。吉野地方のどことなく神秘的な部分と、日本の伝統芸能である能の持つ独特な存在感が、まさに"ディスカバリー・ジャパン"にぴったりの題材だな、と…。市川崑監督の卓越した映像センスが充分に楽しめたので、そこは大変観応えがありました。
東京と云う大都会と世間から隔絶されている秘境とを結ぶ、悲しき連続殺人を解き明かす浅見光彦の推理はとてもドラマティックで、金田一にも負けていないなと思いました。
しかし、榎木孝明のメイクが白過ぎて、めちゃくちゃ不気味なのがいただけませんでした。市川監督が得意とする、光と影の演出の一環だと云うことはなんとなく分かるのですが、あまりにも白いので、まるで死人みたいでした。
「悪魔の手毬唄」でも強烈な印象を残した岸恵子が本作にも出演していました。コケティッシュな魅力は相変わらずで、穏やかさの中から溢れ出す情念を表現するのが本当に上手い女優さんだなと、改めて思いました。
※鑑賞記録
2019/? ?/? ?:DVD
2021/09/21:Amazonプライム・ビデオ
※修正(2021/09/12)
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