劇場公開日 1964年4月12日

帝銀事件 死刑囚のレビュー・感想・評価

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5.0ラストの言葉

2023年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

知的

戦後の混沌のなかで起きた事件。
その結末も混沌のなかにのみこまれてしまったようです。

あくまで淡々と、時にはこんな重い内容であるのに飄々とした人物像を浮かびあがらせて、より一般の、私たちの隣にいそうな感覚をもたせます。
これが監督デビュー作とは知りませんでした。
今まで知らずにいたなんて。

最後の独白には肝をえぐられるような気さえします。
当然、戦中の人たちにとってはより違う意味と重みをもつセリフでしょう。

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こまめぞう

5.0熊井啓監督のデビュー作にして傑作!

2022年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

熊井啓監督の監督昇進第一作(監督デビュー作)である本作は、真実を追求しようとする後年の熊井啓監督作品に通じる映画であり、傑作!
初見は、学生時代のACTミニシアターだったが、久しぶりに観た。

帝銀事件とは、1948年1月(日本がマッカーサーをはじめとするGHQ占領下)に、豊島区の帝国銀行椎名町支店に現れた男が行員らを騙して12名毒殺し、現金と小切手を奪った銀行強盗殺人という凶悪事件である。
捜査の過程で事件に悪用された名刺を追及した検察が、100枚の名刺のうち不明な名刺を追い求め、その名刺交換をしていた町の画家=平沢貞通が逮捕され、容赦ない取り調べを受けた後の裁判で死刑判決を受けたのだが……という戦後日本最大の事件。

本作を見応えある映画にせしめたのは、やはり(熊井啓が執筆した)脚本の上手さ、平沢を演じた信欣三の力演、そして重い内容を和らげるような新聞記者(内藤武敏)と被害者の生き残り女性(笹森礼子)のロマンス、これらが見事なまでの完成度。
そして、冤罪に見える犯罪者家族たちの悲痛な思いも描き切った語り口絶妙な映画である。

そして心震えるような場面としては、「平沢死刑囚と娘が監獄の金網越しに手を合わせる場面」で感動きわまる素晴らしい映画である。

<映倫No.13509>

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たいちぃ

5.0これもまた映画の力だ さすがは熊井啓監督だ

2021年10月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

巨匠熊井啓監督の初監督作品
1948年に実際にあった銀行員12名を毒殺した事件から16年後の1964年公開

犯人は事件発生から7ヶ月後に逮捕され、1955年最高裁で死刑が確定する
しかし1959年、松本清張が「小説 帝銀事件」を出版して、真犯人は旧軍関係者とGHQの仕業であるとの推理を展開する
このように逮捕当時から冤罪ではないのかという疑惑がつきまとっていた

本作もその冤罪であるとの見方の上で構成されている

監督自ら丹念な資料調査や、平沢貞通死刑囚との面会、現場の実地の調査や関係者への取材の上で製作され、恐ろしいばかりのリアリズムが徹底されている
まるで映画を観ている者が、自分も本当に事件現場にいたかのように感じるほどだ

公開当時、国会でも取り上げられたり、最高裁長官が不快感のコメントを出すなど大きな話題となった

本作が寄与したのかどうかは分からないが、死刑は執行されず、平沢死刑囚は1987年95歳で獄中死した

映画では捜査の状況を分かり易く、新聞記者を主人公として事件後は展開される

本作では平沢死刑囚は無罪、真犯人は別にいてGHQの陰謀の立場で、捜査に圧力がかかり、別人に自白を強要した冤罪事件であるとほぼ断定している

劇中で新聞記者達が、捜査にGHQの圧力が有ろうが無かろうが日本の司法がこう裁いたのだから、受け入れるしかないのだというシーンには監督の良心を感じた

冤罪なのかどうなのか?
それは自分には分からない
平沢死刑囚では腑に落ちないところは確かにある
しかし日本の司法が、膨大な資料、反証を子細に検討して、そのように裁いたのだ

これを受け入れないのは司法を認めないという立場だ

しかし法務大臣が死刑を執行しなかった
できなかったことには本作は一定の力を発揮したのかも知れない

これもまた映画の力だ
さすがは熊井啓監督だ

最後に長年なかなか観ることのできなかった本作が配信で手軽に観れるようになったのは大きな驚きでした
関係者の皆様のご尽力に感謝致します

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あき240

4.0徹底したリアリズム

2015年3月29日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

信欣三ファンとしては数少ない主演作品のこの作品は実に貴重と言えます。しかし実際の主演となると新聞記者役の内藤武敏かな。

日本の犯罪史上に残る出来事を、当時のニュースフィルムを交えて丁寧に描写していますが、何よりも戦後の東京の焼け跡からの復興期の混乱と熱気がフイルムから沸き立つ様に漂っています。

映画の中では真犯人は他に居て、関東軍731部隊の存在と、当時の米ソ対立の図式の為の犠牲になった描かれ方ですが、それを暴き切れないもどかしさが、内藤・鈴木を始めとする出演者の演技から伝わって来ますね。

熊井啓監督の徹底したリアリズムに基づく演出にグイグイと引っ張られて行くのですが、撮影当時はまだ平沢容疑者が収監中の身であった為か、新聞記者側の視点で展開されて行った真実の追究が、後半の裁判からは平沢容疑者に移り、いつしかエンディングに至るのは、現実の事件同様に映画も混迷している感じではありますね。

それにしても加藤嘉は此処に居たのか〜

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松井の天井直撃ホームラン