「成瀬監督の的確な演出、長谷川一夫、山田五十鈴の名演、大満足の作品です」鶴八鶴次郎(1938) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
成瀬監督の的確な演出、長谷川一夫、山田五十鈴の名演、大満足の作品です
成瀬巳喜男監督作品
1938年公開、白黒映画トーキーです
日本映画のオールタイムベストにリストアップされているのは1956年の大曾根辰保監督のリメイク版の方で、本作では有りません
ところがこの作品、なぜかDVD も配信もなく今では鑑賞困難なのです
本作も同様です
どうしたことなのでしょう?
とは言え、本作も流石は成瀬監督という作品です
川口松太郎が1934年に発表した短編小説で第1回直木賞の作品ですから、お話自体が面白いのです
大衆演劇でも人気の演目だそうですから、お話の面白さは折り紙つきです
物語は大正時代、鶴賀鶴八、鶴次郎という新内節の名コンビの物語です
新内節というのは、調べてみるともともとは浄瑠璃の一派なのだそうです
ただし浄瑠璃のように人形は登場せず、その演目の内容を太夫が朗々と歌い、相方が呼吸を合わせて三味線を弾くというスタイルで、文化文政の頃の江戸で生まれ大流行したものとありました
鶴賀新内という人がその始祖だそうですから、鶴賀鶴八鶴次郎というその名前は名流であるいうことでしょう
鶴八が女性の三味線弾きで山田五十鈴が演じます
鶴次郎は太夫で新内節を唄い長谷川一夫が演じます
郊外の大きなお寺に二人でお詣りに行っているシーンが冒頭です
帰りの電車は右手に進行して東京に戻っていますから、川崎大師に行っていたように思えます
この二人、恋仲のようにも、夫婦のようでもあり、妙によそよそしくもみえます
でも帰りの電車の中での会話やほくろのやりとりでふたりは仕事仲間でありつつ、やっぱり本当は互いに気がある二人なのだと監督がスマートにかつ簡潔に説明します
芸の世界で仕事は至って真面目にビジネスライクに取り組んでいる二人なのですが、実はそうした恋愛感情を秘めているのです
それゆえなのか、ついつい仕事の事で意見が食い違うと売り言葉に買い言葉となる二人なのです
ラストシーンは鶴八の幸せこそを思い、心にもない嘘をいう鶴次郎
なぜそのような嘘を言ったのかの真相を語る長谷川一夫の見事な表情です
成瀬監督の的確な演出、長谷川一夫、山田五十鈴の名演、大満足の作品です
山田五十鈴は21歳
なのにやっぱりもう山田五十鈴なのです!
蛇足
映画関係者様
なにとぞ鶴八鶴次郎
本作と1956年版両方のDVD化、配信をお願い致します
できれば4K リマスターで!
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